安倍総理が、南スーダンに新たな紛争はないと明言
9月30日の衆議院予算委員会において、民進党の辻本清美議員の質問において、南スーダンの紛争に関して、日本政府が新しい紛争は起きていないと認識していることが安倍晋三総理大臣と稲田朋美防衛大臣両方の答弁で確認されました。
南スーダンに関する質疑は19分頃から始まります。
9月30日の衆議院予算委員会において、民進党の辻本清美議員の質問において、南スーダンの紛争に関して、日本政府が新しい紛争は起きていないと認識していることが安倍晋三総理大臣の答弁で確認されました。
映像の中で南スーダンに関する質疑は19分頃から始まります。辻本議員は7月8日から首都で起きた戦闘をあげて、PKO五原則が崩れていないと判断しているかと質問しました。
安倍総理(21分頃から)
南スーダンにおいてはですね、本年7月に首都ジュバ市内において、キール大統領派と当時のマシャール第一副大統領派の衝突が発生し、治安が悪化したことから、政府としては引き続き緊張感を持って現地情勢を注視しているところであります。他方、衝突発生後、双方が敵対行為の停止を表明して以降、これは衝突発生後、直ちにですね、双方が敵対行為の停止を表明した訳でございまして、大統領も第一副大統領もその指示を出した訳でございますが、現地の情勢は比較的落ち着いているというふうに承知しております。当該衝突については、現地に派遣されている要員からの報告や、我が方大使館、そして国連からの情報等を総合的に勘案すると、PKO法上のですね、武力紛争が新たに発生したとは考えておりません。また、当時の第一副大統領派等が紛争当事者に該当するとは考えていない訳でありまして、従って、PKO参加五原則は維持されていると考えております。
これで、日本政府の南スーダンに関する見解が明確になりました。かねてから当サイトで指摘してきたとおり、派遣時の国連決議、つまりスーダンと南スーダン両政府が交わした合意に基づいて採択された国連決議から認識が変わっていないと総理大臣が明言したことになります。
スーダンと南スーダンの間で合意がなされた後、6年間自治が行われ、その後に正式に独立するというのが国連が設定した和平プロセスです。自治期間の間にキール大統領とマシャル第一副大統領の間で2度の衝突が起こり、現在の内戦が起きたというのが、誰もが認める経過です。
ところが、日本政府はこの当たり前の解釈をとらないというのです。スーダンと南スーダンの間で和平が成立しているのだから、その後、南スーダンで内戦が起きても、スーダンと南スーダンの間で紛争が再発したのではないから関係ないという訳です。
この解釈をアメリカあたりの軍事専門家に聞かせたら、目を白黒させるかも知れません。状況が変わり、現地で戦闘が起きているのだから、そこは紛争地だと考えるのが当たり前だからです。
このほかに、辻本議員はなかなかよい質問をしました。避難民の収容所を政府軍が攻撃するため、PKO部隊が駆けつけ警護を行うと政府軍と戦うことになる。PKO部隊の派遣は当事者の合意がなければ行えないのだから、PKO五原則は崩れているのではないかと各国が懸念していることを知っているかと稲田防衛相へ質問しました。
あろうことか、稲田大臣はこの質問にまともに答えようとせず、はぐらかして済ませてしまいました。しかし、これは重要な問題です。駆けつけ警護は現地武装勢力が国連やNGOを攻撃した場合に守るという任務です。現地の政府軍が相手になることは想定していません。現地情勢からすると、それが起こり得るところまで来ています。問題の根幹でもあるのですが、辻本議員は他の質問を時間内に済ませるために、ここは繰り返して質問しませんでした。
もちろん、私は民進党には南スーダンからの撤退を主張して欲しかったと思っています。そこは残念ですが、重要な答弁を引き出した点では評価します。
内戦の状況について、大統領が副大統領を殺そうとして戦闘が起きた可能性や副大統領が徒歩でコンゴまで逃げたこと、スーダンで副大統領派が武力紛争を続けることを決議したことなどを含め、短期的、中期的、長期的な情勢予測から、撤退すべきと主張して欲しかったと思っています。
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