南スーダン・ハイブリッド法廷設置の遅れに批判
sudantribune.comによれば、14日、2015年8月の和平合意とアフリカ連合の決議のとおりに、アムネスティ・インターナショナルは南スーダンにハイブリッド法廷の設立を要求し、新しい国での進行中の戦闘は、戦争犯罪と人道に対する犯罪を行った者たちの遅れている裁判の言い訳になるべきでないと言いました。
アムネスティ・インターナショナルと国際人権連盟(FIDH)は木曜日、合同記者会見で、7月8日に勃発した南スーダンの継続する戦闘は2013年12月に始まった致命的紛争の間に犯された犯罪への正義を狂わせてはならないと言いました。
二団体はアフリカ連合委員会と南スーダン政府に緊急に南スーダン・ハイブリッド法廷(HCSS)を設立するよう要請しています。
「数千人が殺され、女性が強姦され、すべての村が破壊され、人道支援要員が攻撃されました。しかし、世界の注目が戦闘の終わりに集中したため、戦争犯罪と人道に対する犯罪になり得る違反行為の責任は棚上げにされています」とアムネスティのアフリカ部長(研究・弁護)、ネトサネット・ビレー(Netsanet Belay)は言いました。
「正義はそれ以上遅れてはなりません。新しい違反行為はハイブリッド法廷を設立する努力に、さらなる刺激を与えなければなりません」と声明は言いました。
2015年8月に両者が署名した和平合意は、残虐行為に刑事責任を負う者たちを捜査し、起訴するための法廷設立を規定しますが、その設立に向けて僅かな進展しかありません。
国内法と国際法の両方の要素を結合し、南スーダン国内と国外の要員で構成されるハイブリッド法廷は、紛争の間に行われた犯罪の説明責任を果たし、さらなる虐待を防止するために、現在最も現実的なオプションです。
記者会見で、二団体は法廷が国際公正裁判基準に従って効果的に成し遂げるのを確実にするために17項目の勧告を出しました。勧告された優先事項には「証拠を収集し、適切な方法で保存されることを確実にするために調査部門を確立すること。独立した犠牲者と目撃者の保護部隊を確立すること。訴訟に参加する犠牲者の権利が保障され、南スーダン人の裁判官と裁判所職員が含まれ、可能性がある判決で死刑の排除をるのを確実にすること」を含みます。
人権団体は、南スーダンに設置された治安の懸念が裁判を妨げるなら、少なくともこの地域内に配置されるようにも勧告しました。
彼らは犯罪は処罰を逃れてはならないと言い、犯罪者を裁判にかけることが南スーダンの持続可能な和平を確実にするのを助けるといいました。
記事の後半は省略しました。
共同声明の中の「2013年12月に始まった致命的紛争の間」との記述は重要です。日本政府は7月の戦闘は小競り合いの衝突だったとしていますが、国際支援団体は2013年12月から紛争が継続していると認識しています。その直前では「7月8日に勃発した南スーダンの継続する戦闘」と述べています。「致命的紛争」は「the deadly conflict」、「戦闘」は「fighting」と表記されています。どうみても内戦が行われているのであり、「国際的武力紛争」にあたります。これを日本政府は起きていないと否定しているのです。
国際的な人権団体と主張が合わないことについて、日本政府関係者はどう考えているのでしょう。ガラパゴス島に独りぼっちみたいな感覚は持っていないのでしょう。これは自衛隊の南スーダン派遣が南スーダン国民のための支援活動ではなく、実は日本人のための活動であることを示しています。多分、外務省は「個別の団体の見解には関知しない」というでしょう。しかし、国際社会への貢献が目的なら、こうした団体の意見は注視しなければいけないはずです。この調子だと、支援活動をしているのに、また国際社会から批判されることになりかねません。
南スーダン・ハイブリッド法廷について、日本政府も承知しているのです。内閣府のホームページに記事があるくらいですから(該当ページはこちら)。このハイブリッド法廷は「2013年12月15日から、暫定国民統一政府期間完了までの間に発生した国際法及び関連する南スーダン国内法の違反行為に関与した個人を調査及び訴追する」とちゃんと書いてあります。
ところが、これが安倍首相の答弁と食い違うのです。この法廷は、2013年12月15日に首都で大統領派と副大統領派が銃撃戦を行い、以後、戦闘が継続的に起きているとの事実認定の上に成り立ちます。7月の戦闘では副大統領派に対する武力行使だけでなく、支援団体職員に対する殺人、強姦も確認されています。ハイブリッド法廷が、2013年12月15日以降、南スーダンが武力紛争状態にあると認めるのに、日本政府はそれを認めないのです。
もっとも、ハイブリッド法廷が動き出すと、現政権の高官たちが逮捕されることになります。キール大統領、アワン参謀長らが拘束されることになります。そんなことを南スーダン政府が認めるはずはなく、あらゆる方法で妨害を行おうとするでしょう。これは南スーダン平和維持活動の崩壊を意味するかも知れません。PKO法上も、矛盾が大きくなりすぎて、撤退を余儀なくされる可能性もあります。もちろん、それでも政府が撤退を認めない可能性もあり、それはPKO法上で裏打ちされています。
保守系の人たちは、自衛隊のPKO派遣で、ようやく日本も世界から認められる支援活動ができるようになったと満足しています。でも、実体はこんなものです。日本の支援活動は世界の潮流から外れた、的外れの、非効率的なものなのです。この歪な国際支援活動は恥ずべきものですが、恥を恥と思わない人たちが多いために放置されているのです。
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