自衛隊派遣は南スーダン紛争を解決しない
「The Sentry」の報告書を訳していて気がついたことがあるので、先にまとめました。
「いま自衛隊を南スーダンから引き揚げることは南スーダンの人々を見捨てることである」という意見があります。
ある種の人たちには支持されやすい意見です。湾岸戦争の際、日本が戦費を負担することしかしなかったから、クウェートが感謝広告を新聞に掲載した時、日本を感謝する国に含めなかったと主張されたことが、自衛隊に海外派遣をさせるきっかけになりました。
真相は単にうっかりミスで掲載されなかっただけですが、神経が細い日本人はこれを自分たちの行動への批判と受け止めたか、自衛隊派遣を望む者たちが意図的に流布したに過ぎません。
いま、南スーダンから自衛隊を撤退させれば、海外から同じ批判を招く、あの恥を繰り返したいのかといった意見は当然出てくるでしょう。
また、「保護する責任」の概念や、平和維持軍の任務がより積極的に紛争介入するように変わったことを論拠とする人もいます。
しかし、これらは南スーダンを救うという観点からすると、優先順位が低い問題に過ぎません。
「The Sentry 」の報告書は多様な方法で、南スーダン政府の中の巨大な汚職を防げと主張します。汚職こそが、南スーダンで内戦が継続する理由であり、それを防ぐことが南スーダンをよりよくする方法だと説きます。
いま、自衛隊が南スーダンで行っているのは、国連施設の建設や保守です。莫大な民間人を保護する施設を維持するために、建設活動を行っています。早い話、重機で排水路や簡易トイレなど、施設を運営するために必要な事をやっているのです。これらは活動の一つといえても、それがもたらす成果はあまりにも小さく、日本にはもっと大きなことができるのです。それは「The Sentry 」がいうとおり、紛争の原因を絶つための活動です。
現在の任務は別の国の軍隊か民間企業に任せ、日本はそれに尽力する方がよほど意味があります。
現在の活動を続けるだけで、紛争が終わるとは到底期待できません。サルバ・キール大統領とその一派を放置すれば、彼らはますます増長して、南スーダン国民は貧しいままに置かれます。
なぜ、そこへ目が向かないかというと、それは感謝広告事件が示すように、日本人の発想が貧困すぎて、本当の支援に思いが至っていないからです。日本がやっているのは、湾岸戦争で感じた自分の痛手を埋め合わせするための手段に過ぎず、南スーダンを助けたいという動機ではないのです。
やるべきことは分かり切っています。偽物の支援を止め、本物の支援へ切り替えることです。 自衛隊は撤退させ、マネーロンダリング禁止など、汚職にまみれた南スーダンの政治家を追放するための手段を検討して実行することです。
こうした構想を描く人が官界や政界にいないことが、実は自衛隊を派遣しようと考える原因となっているのです。
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