Military.comのトランプ論
ドナルド・トランプ(Donald Trump)が当選するという番狂わせについて、military.comが冷静な分析をしているので、まずは読んでみることにしました。
トランプが次期最高司令官へ
衝撃的な同様の中、共和党のドナルド・トランプは火曜日に民主党の政敵、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)を越えて次の最高司令官となるよう選ばれました。
投票日まで世論調査では劣勢だった70歳のトランプは、オハイオ州からペンシルバニア州、フロリダ州までの主要な激戦の州を制圧しああと、勝利を宣言し、水曜日朝早くAP通信によって次期大統領と宣言されました。
クリントンは最初、敗北を認めるのを拒否しました。彼女の選挙参謀、ジョン・ポデスタ(John Podesta)は支持者たちに「我々は明日もっと言わずにいられないでしょう」と言いました。
しかし、支持者へのスピーチでトランプは、クリントンから勝利を祝う電話を受けたと言いました。「片方が人々を結びつけたのだから、我々は手を取るときです」と彼は言いました。
トランプは国際的なオブザーバーへ向けたメッセージも持っていました。「我々は我々と共にいる意志があるすべての国とうまくやっていきます」と彼は言いました。「我々は敵意ではなく、共通基盤を、対立ではなく協力を模索します」。
1月20日、彼はバラク・オバマ大統領(President Barack Obama)の後継者となり、過去に男性が占めていた戦闘の仕事をさらに女性が満たそうとする文化的シフトの中、アフガニスタンからイラク、シリアまで、世界中のホットスポットで戦う年月の後、即応体制の隙間がある軍の指揮を担います。
望ましいボス
多くの将校と下士卒の隊員はクリントンよりもトランプを望みました。Military.comが10月に行ったオンライン世論調査によれば、キャリア志向の隊員は3対1でクリントンよりもトランプを望みました。もう一つのニュース組織による世論調査も、2対1の差ながらも、共和党候補者を好んだことを見出しました。
自身をヒスパニックでラテン系、政治的に無党派とする陸軍少佐は「彼は我々を気にかけ、アメリカを気にかけると心から思います」といいました。
「その上、ヒラリーにはたくさんの欠点がありました」。
軍の所属、給与、性別までの統計データのグループのほとんど全部で、トランプは世論調査で明白な勝者でした。(共和党の候補者はアンケートに答えた退役軍人と軍人の配偶者多数に特に支持されました)
しかし、回答した黒人兵士の大半はクリントンを支持しました。
軍隊の増強
9月にトランプは軍隊の規模を増やす、ほぼレーガン風の計画を提案しました。
彼は、陸軍を現役兵54万人、海兵隊36ヶ大隊、海軍艦350隻、空軍機1,200機へ規模拡大を提案しました。
比較して、10月1日に始まった2017会計年度の国防総省の予算は、現役陸軍兵士46万人、海兵隊24個大隊、海軍艦287隻、戦闘機約1,170機をすべて現役部隊として要求します。(この数字は追加の兵士、州兵、予備役の装備を含みません)
トランプは少なくとも数百億ドルかかる計画について、議会とどう活動するかを示しませんでした。
Military.comの調査に答えた兵士の多くは、戦闘活動を含めて、軍事問題集の決定は「将軍たちに聞く」との発言を歓迎しました。
同時に候補者は、当選したら指導層を入れ替えるだろうと提言し、「率直にいって、彼らは別の将官になるだろう」と討論会でいいました。
NATO
討論会と遊説の間にトランプは、オバマ政権の軍高官とイラク政策を批判し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(President Vladimir Putin)を賞賛し、軍隊の性別分離に関するコメントは擁護し、軍務につく不法移民を支持しました。
特に、NATO諸国の自動的防衛について尋ねられると、彼は警告を発しました。
トランプは、アメリカは防衛と安全に対してNATO諸国よりも多くを支出するといいました。
7月以降のNATO報告によると、アメリカ、ギリシャ、イギリス、エストニア、ポーランドの5ヶ国だけが、防衛に対して国民総生産の少なくとも2パーセントを支出するガイドラインを満たします。
「我々は日本を守ります。我々はドイツを守ります。我々は韓国を守ります。我々はサウジアラビアを守ります」とトランプは討論会でいいました。「彼らは我々に払うべきものを払いません」。
イラク、シリア、アフガニスタン
NATOへの彼の冷たいスタンスは、海外に対するより孤立主義者の姿勢を好む実例と見られるかもしれませんが、彼の声明は様々です。
彼はメキシコ政府がアメリカとの国境沿いに壁を造る費用を出すよう提案する一方で、イスラム国に属する民兵を追い出すといいました。
さらにトランプは、イスラム国はイラクに1万人以上の兵士を残せば形成されなかったといい、海外への干渉主義の姿勢への支持を示します。
現在、イラクに5千人以上の兵士がいます。
トランプは、アメリカはイラクの石油資産を押収しなければならない、それはテロリストの主要な収入源になったとも繰り返しいいました。
それでも、トランプはシリアに安全地帯と飛行禁止区域を作るというクリントンの要求には至りませんでした。シリアではアメリカとロシアが、血なまぐさい、5年目の内戦を戦う対立する軍隊を支援し、米軍は約300人を置いています。
米軍の多くはシリアに飛行禁止区域を作るアイデアに反対し、アメリカの実力でロシアの挑発に応じるという副大統領候補、マイク・ペンス(Mike Pence)の要求に同意しませんでした。
インディアナ州知事のペンスは「ロシアがアレッポ(Aleppo)で民間人に対する野蛮な攻撃への関与を続けるなら、アメリカはアサド政権の軍事目標を攻撃するために米軍を使う準備をすべきです」といいました。
コメントについて尋ねられると、トランプは「彼と私は話していませんし、私は同意しません」と簡単に答えました。
トランプは来年8,400人が残ると予測されるアフガニスタンの計画は詳述しませんでした。
彼は世界的な核拡散がアメリカの安全保障への唯一最大の脅威だといいました。
退役軍人医療
トランプは退役軍人により多くの民間医療へのアクセスを与える計画(Military.comの調査で退役軍人の回答者の4人中3人が支持)は率直にいいました。
彼の選挙用ウェブサイトによれば、彼は退役軍人すべてが自分の選択で復員軍人援護局や民間のサービス提供者で医療を求めるのを確実にすることで、部分的に同局を改良することを望みます。「トランプ政権では、治療を待って死ぬ退役軍人はいません」。
クリントンとの討論会で、トランプは退役軍人に、復員軍人援護局が運営する病院や診療所で数日間待たされるなら、民間の医療へのアクセスをずっと多くを与えることを求めました。彼は同局をほとんど堕落した事業と表現しました。
トランプは憲法修正第2条(民間人が武装する権利)を守るべきと信じると言った一方で、テロリストの監視リストに載る者が銃を入手するのを防ぐ法律を支持するとも言いました。
軍人がトランプを支持していたとは驚きでした。Military.comの世論調査に目を通しておくべきでした。
オバマ政権は実際にはかなりの成果をあげました。アルカイダの指導者オサマ・ビン・ラディンを殺しました。これにはヒラリーが重要な役割を果たしました。CIAがビン・ラディンが隠れ家にいる確率を6割といい、オバマ大統領もさらに調査しようと言ったのに、ヒラリーはビン・ラディンはそこにいるといい、大統領は攻撃を決意しました。結果は大当たりでした。
ブッシュ時代に拘束したテロリストはまだ拘束している者もいますが、二度とテロ組織に戻らないと確認でき、受け入れ国が決まった者は解放し、ブッシュ時代の悪しき遺産を解決しつつあります。
イラクとアフガニスタンからは可能な限り撤退し、米軍が無用にテロリストの攻撃対象となることを防ぎました。イラクに部隊を残せば、イスラム国は誕生しなかったというトランプの主張はそもそも間違っています。
私にいわせれば、もっと早くにシリアに介入していれば、イスラム国は形成されませんでした。それを妨げたのは、ブッシュ政権が嘘の証拠でイラクに侵攻したことからくる軍事介入への懐疑心であり、トランプが主張するような孤立主義でした。
イスラム国はイラクではなく、シリアで形成されました。イスラム国を誕生させたくないなら、シリアに早期介入した方がよかったのですが、トランプみたいな孤立主義者は決して賛成しなかったでしょう。
国防長官2人が批判した指揮系統への介入も、難しい対テロ戦では必要だったかもしれません。もっともこれが軍人には悪いイメージとなった可能性はあります。
なにより、今後も難しい舵取りが必要なアフガニスタン戦について、トランプな何も言及していないとは信じられないことです。一番国民に理解させるのが難しい長期戦を語らないことで、トランプは国民にアフガニスタン戦を忘れさせたのです。彼はアフガニスタン戦の展望を何一つ持っていないに違いありません。
日本に対する米軍費用負担増額も、トランプはいくら増やしたいのかすら述べていません。日本と韓国、ドイツでは日本の負担が傑出していて、同列に論じてほしくないほどですが、それをトランプが理解しているとは思えません。
退役軍人医療に問題があるのはオバマ政権固有の問題ではなく、どの政権でも抱えていました。事務手続きが不正確で遅いとか、医療サービスの不良など、話題に事欠きません。トランプに問題が解決できるとは思えません。オバマ大統領は、ラムズフェルド国防長官と対立して辞職したエリック・シンセキ大将を復員軍人援護局長官に任命するなど、改善を試み、大将の就任は退役軍人会からも歓迎されました。
忘れっぽい国民、いまなんとかしてほしい国民がトランプを選んだのです。俳優のロバート・デ・ニーロはビデオメッセージで「未来のために投票してくれ」と、トランプ以外の候補者への投票を呼びかけたけど、かなりの国民は未来ではなく、いますぐなんとかしろと思っていた訳です(総得票数ではクリントンが上)。
しかし、トランプに国民が期待する結果を出せっこないのは明らかで、早々に国民から見切られる可能性の方が高いでしょう。
安全保障面で、彼が致命的な間違いをしないことを祈るしかありません。
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