キール大統領が外国部隊への攻撃を禁止

2016.12.12


 10日付けのsudantribune.comによれば、南スーダン軍のボール・マロン・アワン参謀長(Paul Malong Awan)は政府軍兵士に、国連南スーダン平和維持軍(UNMISS)の委任の下で、部隊の防御・戦闘能力を強化した外国部隊に対して攻撃的にならないように警告しました。

 金曜日、陸軍総司令部でのパレードの間に話したアワン参謀長は、最高指揮官でもある大統領から命令を受け取ったと言い、国内で武装反対勢力と交戦する時に、外国部隊を尊重し、民間人を守るよう指示しました。

 「民間人は我々の攻撃目標ではありません。我々は政府です。我々の委任事項は、外国軍から憲法と領域の主権を守ることで、これをしようとする者が国内や国外かは関係ありません」。

 軍最高レベルの将校は、司令部と軍将校に外国部隊と協力するよう求め、彼らは目の前の敵ではなく、安定を確実にするために補完的な活動をするために来ると言いました。

 アワンの表明は、日本の稲田朋美防衛大臣が出した声明のすぐあとにありました。声明の中で大臣は、日本軍は自衛隊の下で同国に派遣され、治安状況が悪化したら撤退すると言いました。

 「状況が急変したら、我々は安全を確保するために、継続して必要な情報を集めるでしょう」と、稲田大臣は最近の様々なインタビューで言いました。

 大臣のコメントは、自衛隊の隊員が、国連などが攻撃を受けた場合などで支援が必要な場合、要請に応じる新しいガイドラインの下で南スーダンで活動を開始し、配置された月曜日に先立って行われました。

 稲田大臣は、新しい任務について、懸念しておらず。それは自衛隊隊員にずっと大きな作戦の余裕を与える新しい安保法に合致していると言いました。

 自衛官はよく訓練されており、南スーダンにいる部隊指揮官は状況を冷静に評価できる者だと大臣は付け加えました。

 7月、ジュバ(Juba)で政府軍と反対勢力軍が大規模な衝突をした時、270人以上が死にました。

 南スーダンの全般的治安状況が厳しい中、日本政府はジュバは比較的平穏だと言いました。

 「銃撃戦が(7月の)戦闘より長く続けば、自衛隊は自身の安全を確保できず、我々が撤退を検討する可能性があります」と稲田は言いました。

 新しい役割は外国軍の隊員を救出する作戦を法的に含みますが、稲田大臣はそういうシナリオが起こると予測しない、外国軍は自身を守ることができると言いました。

 救出任務は母国で論争中です。一部の評論家は、新しい役割が第二次世界大戦後はじめて、海外での軍事活動に自衛隊隊員を巻き込ませるかもしれず、日本の戦争を放棄する憲法に違反する可能性があると警告します。


 ほぼ直訳しただけで、話題になった7月の戦闘が「衝突(clash)」か「戦闘(fighting)」か、「自衛隊(SFD)」か「軍隊(force)」かといったことにはこだわらず、そのまま訳しています。稲田大臣の発言の内容は一度英訳されたのを日本語に直したので、完全に一致していない可能性があります。

 珍しくグッドニュースが出ました。キール大統領が外国部隊を尊重するよう命令したのです。つまり、外国部隊を攻撃するなということです。命令が守られれば、自衛隊の派遣隊の安全は確保されます。

 参謀長は明言していないものの、記事の書き方は明らかに自衛隊を指しており、地元でそのように認識されていることを暗示します。

 しかし、キール大統領にしろ、アワン参謀長にしろ、名うての悪党で、南スーダン軍がならず者の集団である点に注意が必要です。

 まともな軍隊なら、あえて「我々は政府」と宣言する必要はありません。もともとがゲリラ部隊だから、いわないと忘れるので再認識させる必要があるのです。そういう相手の言葉だと理解しておきましょう。

 7月の戦闘では選択的に略奪、強姦が行われました。それは一部兵士の暴走ではなく、上層部からの命令だったといわれます。それを命令した者が、いまは逆のことを命令しているのです。単純には頷けません。

 また、発言のタイミングから、日本政府がキール大統領に、自衛隊を攻撃しなければ、何らかの経済的な見返りを密かに約束した可能性もあります。それで、キール大統領が慌てて命令したのかもしれません。稲田大臣の発言が伝わっただけで、こういう具体的な動きは出てきません。

 キール大統領は国際社会からの支援が舞い込むようになってからは金の亡者です。最近、南スーダン政府が国際社会に向けて出すメッセージは、支援の要求ばかりです。「国際支援バブル」が生んだ弊害です。そんな金への執着を利用した日本政府の外交は、ありそうなことです。

 しかし、7月の戦闘でジュバが平穏だとした日本政府の見解が、何の説明もなく報じられたのは問題です。

 PKO法上の派遣条件を満たすための方便だったのに、日本政府は7月の戦闘を軽視してみせたことになります。死者が実際は270人を遥かに上回ったとみられる戦闘を、比較的穏やかという日本人はいったいどういう連中かという話になるかもしれません。それが派遣部隊にどう影響するかが心配です。

 こういう風に、世界には言った通りの言葉が伝わっていきます。政治家、官僚はこのことを理解しなければなりません。

 



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