オスプレイのハワイ墜落はやはり構造上の欠陥
military.comが2015年5月17日にハワイで起きたオスプレイの墜落原因について報じました。やはり、事故はオスプレイの構造的欠陥を示しています。
震える手持ちビデオに捉えられ、MV-22B「オスプレイ」2機が丘の稜線の上に現れます。最初のオスプレイが金網のフェンスの近くの小さい着陸地点へ向けて旋回し、そのローターは垂直降下のために空を向きます。着陸から数メートルに来た時、茶色の埃の窒息させそうな雲が地面から湧き上がり、航空機から視界を完全に奪います。埃の雲はさらに大きく、より拡大し、オスプレイが再び現れ、少しの間、上昇します。機体は視界不良の中で数秒間ホバリングし、舌みたいな炎が左のナセルから発せられるのが見えます。
それから、ローターは依然として回転しながら、航空機は空から自然落下し、右ローターが引きちぎれ、埃をかき回して墜落でグチャグチャになりました。
ハワイのベローズ海兵隊訓練場(Marine Corps Training Area Bellows・kmzファイルはこちら)で海兵隊員2名の命を奪い、他20名を負傷させた2015年5月17日の墜落の状況は、Military.comが入手した2,200ページの指令調査の中で、目撃者の説明を通じて説明されました。
調査は懲戒と管理上の行動を航空機のパイロットとクルーに、第161中型ティルトローター飛行隊指揮官、アンドレアス・ラバト中佐(Lt. Col. Andreas Lavato)、飛行隊が所属する第15海兵遠征部隊の指揮官、ヴァンス・クライヤー大佐(Col. Vance Cryer)に勧告します。
海兵隊太平洋司令官、ジョン・トーラン中将(Lt. Gen. John Toolan)が承認した調査結果の中で、調査はオスプレイのエンジンが砂と埃を極度に吸引したために故障したが、パイロットは視界不良の条件下での着陸に基づいて機体を調整すべきであり、飛行隊と海兵遠征部隊の指揮官は悲劇が起きる前に着陸地点の選定と調査、より強力な犠牲者の救助計画の開発にもっと関与することだとしました。
墜落当日
コールサイン「メイヘム11(Mayhem 11)」の最後の飛行は約300マイル沖合の強襲揚陸艦エセックス(USS Essex)に乗船して始まりました。機は長距離襲撃を模した、オアフ島南東沿岸のベローズ訓練場の着陸地点ガル(Zone Gull)へ89人の海兵隊員を移送するよう配置された5機の1機でした。演習は西海岸が拠点の第15海兵遠征部隊の太平洋と中東への7ヶ月の派遣となるものに数日間のみ予定されました。多くの海兵隊員にとって、ハワイへの最初の旅でした。
その日は何事もなく始まりました。飛行前のブリーフィングは着陸地点ガルに言及し、154×506フィート(約47×154m)の小さな着陸地点は適度な低視界着陸(reduced-visibility landing: RVL)で、状態は5段階の1〜2程度としました。海岸への飛行は何事もなく、メイヘム11は着陸地点に接近を開始し、機前方の2人の男はコースを僅かに調整する必要を認識しました。
ほとんど同一の着陸地点2ヶ所は金網のフェンスの両側にあり、着陸の飛行パターンにいたもう一機のオスプレイはメイヘム11が間違った側に向かっていると無線を流しました。メイヘム11の副操縦士は最初の着陸を中止することを選択し、コースを調整した後で旋回してやってきました。機に搭乗していた先任のクルーチーフによれば、事は高度85フィート(約30m)で、埃が地面から押し寄せた時におかしくなりました。機は右へ流れはじめ、副操縦士は流れを修正しましたが、適正な位置を取り戻すために苦闘しました。この時点で、機の指揮官、機長が操縦を引き継ぎました。視界は予想したよりも悪く、RVLの状態は3から4でしたが、先任クルーチーフは地面が見えて、機が着陸するのは明らかだったと言いました。
パイロットは低視界での着陸をしやすくするデジタル・ホーバー・アシスト・スクリーン(digital hover assist screen)の助けなしに着陸を続けました。「私は(機の指揮官)から、彼がその時点で機のバランスをとり、降下させ始めようという反応を得ました。そして、その時に我々は空から落下したと感じました」とクルーチーフは調査官に話しました。
厄介な選択
調査官は、墜落そのものは着陸地点ガルの視界不良の状況の中で、エンジンが大量の砂と埃を吸い込んだ後で、エンジン圧縮失速が引き起こしたことを見出しました。この吸入量はタービンブレードのガラス固化をもたらしました。報告書はそれはエンジン後部で高温において反応しやすい砂が溶けることとしています。そうした反応は空気の流れを変え、エンジンを低効率にすると、元MV-22テストパイロットはMilitary.comに言いました。機の副操縦士への聴取は、コックピットの中では急速な降下が始まるまで、すべてが平常だったらしいことを示します。「振り返れば、私に本当に衝撃的だったのは、すべてが非常に平常だったことです」と彼は証言しました。「警告はありませんでした。何も……私は沈降を憶えているだけです。私は温度の徴候は何も見ませんでしたし、適切なエンジンの熱表示を見ました」。
命令による調査はオスプレイが視界不良の状況で2度ホバリングしたことを見出しました。最初の着陸の試みの間に35秒間。墜落に至った着陸の間に45秒間。海軍と海兵隊の航空士が使う海軍航空訓練・作戦手順標準マニュアルは視界不良の状況で60秒以上ホバリングすることはエンジン停止を招き、ホバリングの時間は累積しないと警告しており、メイヘム11のパイロットはガイドラインの範囲内でうまく操作していました。2015年9月9日、Military.comが入手した海軍航空司令部の報告書「V-22 RVL環境におけるエンジン急変」はオスプレイのパイロットに任務毎のRVLにさらされる総時間を60秒に制限するよう勧告しており、現在、海軍航空訓練・作戦手順標準マニュアルは視界不良状況で35秒以上ホバリングしないよう勧告します。この報告は一部はベローズの悲劇に応じて生じました。
ヘリコプターのようにホバリングし、それから飛行機のように水平に飛ぶティルトローターを持つオスプレイの比類ない構造は、視界不良状態でエンジン故障の影響を比類なく受けやすくもすると、元テストパイロットは言いました。航空界での地位のために匿名を希望するパイロットは、オスプレイはローターがより小さいため、空中にいるために大量の空気をより高い速度で流さなければいけないことを意味し、他のヘリコプターよりも円板荷重がより高いと言いました。
「オスプレイのローターから出る速度はそこにある何物よりも早いと考えられます」とパイロットは言いました。「砂の上でホバリングすれば、とんでもない混乱を作ります」。
オスプレイのエンジン吸気口は降下において、CH-53とその他のヘリコプターと同じ水平ではなく垂直なので、オスプレイは比較できる航空機よりもかなり多くの砂を吸い込むことができると、彼は付け加えました。
パイロットは規則やガイドラインに何も違反していませんが、調査は着陸地点ガルでひどい視界不良の中、2度目のホバリングを行い、着陸を試みるという、まずい判断を示したことを見出しました。パイロットは着陸地点で視界が限られていたことを考えると、デジタル・ホバリング支援の「ホバー・ページ(hover page)」を使うべきだったことも見出しました。
誤りは着陸に先立って施設をより調査することを命じなかったことで、海兵遠征部隊指揮官クライヤー大佐と飛行隊長ラバト中佐にも及びました。第161飛行隊のメンバーは2014年にリムパック演習の間に着陸地点ガルに着陸しました。調査官は施設の状態報告は大半がその時の過去の経験に基づくことを見出しました。近くの着陸地点タイガーシャーク(Tigershark)を選択すれば、結果はよりよい着陸状態になったことを彼らは見出しました。
最終的に、調査官は低視界の状況で飛行の安全を向上させるため、多くの勧告をしました。
- 砂と汚染物質がV-22のエンジンタービンに吸い込まれるのを防ぐためのよりよい濾過システム
- リアルタイムでエンジン性能と失速を示すエンジン性能の監視
- センサーと自動着陸システムを用いた先進的な視界不良技術
- エンジンパワーが95パーセント低下した時にパイロットに注意喚起する警告
- V-22パイロットが着陸支援「ホバー・ページ」を使うためさらに準備を行う
- タービンブレードをガラス固化するより大きな可能性を持つと分かる砂の分析
それでも一部の者たちは海兵隊が政策が十分に対処しない明らかな機械的な問題でパイロットを部分的に非難することに幻滅を表明しました。「いつもパイロットエラーです」と元オスプレイのテストパイロットは言いました。「それは凄く簡単です。このために彼らがパイロットを非難するのはお粗末です……彼らがパイロットエラーを見つける時の99パーセントは、それは航空機の設計と状況が負荷をかけられたパイロットの上にたっぷりと堆積することを意味します」。
長文の記事なので、機体の墜落に関連した部品だけを紹介します。 救助に関することも多く書かれていて、それも重要ですが、日本人にとって興味があるのは、オスプレイの安全性です。
墜落の瞬間を捉えたビデオ映像はリンクが張れないので、元記事を開いてご覧下さい。この映像を見れば、事故原因は一目瞭然です。
この墜落事故は当サイトで何度も取り上げました。代表的な記事へのリンクを張っておきます(1・2・3)。
墜落原因がエンジントラブルだということは、事故直後からいわれていましたし、私も多分そうだろうとコメントしていました。やはり公式の報告書も同じ結論です。しかし、この事故はオスプレイの欠陥を如実に表しています。この機体を採用すると決めてしまった日本に住む我々は、この報告書をじっくりと読む必要があります。
飛行機のエンジンは砂塵を吸い込むと砂がガラス化してタービンブレードに張り付き、エンジントラブルを起こすことが知られています。過去にも火山の噴煙の中を飛んだ旅客機で同種のトラブルが起こりました。
しかし、これは特殊な場合での事故です。
オスプレイは着陸しようとした時にこれが起きるのです。上にあげた過去記事の最初の記事を見てもらえれば分かりますが、現場は砂地ではないのです。衛星写真は2013年1月30日に撮影されたものですから、事故当時の2015年5月17日には砂地がもっと見えていたかもしれません。この場所でこのように砂塵が立ち上るということは、やはりティルトローターの構造的欠陥を見るほかありません。アフガニスタンでオスプレイの稼働率が極端に低いのは、アフガニスタンに砂漠が多いことと無縁とは思えません。
何度でも繰り返して言うべきでしょうが、オスプレイは改善しがたい欠陥を持っています。
オスプレイはヘリコプターと固定翼機を合体したような形をしており、エンジンはそれぞれのモードで垂直と水平の二方向を向きます。
このため、固定翼機モードで飛ぶときはエンジンが水平になり、ローターは垂直になります。このため、ローターの直径をあまり大きくすると、ローターが地面と接触してしまいます。必然的にローターはヘリコプターとしては短くなるのです。このため、ローターが生み出す気流は一般的なヘリコプターよりも早く、ローターそのものも短いためにより多くの砂塵を巻き起こすことがあります。さらに、ヘリモードになった時はエンジンは垂直方向を向くので、より多くの砂塵をエンジンに吸い込みます。
悲劇的にも革新的な構造そのものがトラブルを発生しかねない形になっているのです。
海兵隊の処置もオスプレイに対する批判を退けるために、パイロットに責任を負わせる内容になっています。この事故はパイロットには避けられないものでしたし、海兵隊が事故後にマニュアルを変更し、視界不良の中でのホバリング時間をさらに短縮したのは、機体に欠陥がある証拠です。状況によっては35秒以内でもトラブルが起きる可能性はあると思われます。おまけに報告書の勧告はオスプレイの大改造を必要とするような内容です。これはオスプレイが欠陥機であることを示しています。
これまで指摘され続けてきたことですが、またもや裏打ちする情報が出てきたということです。
こんな航空機に自衛官を乗せることになるのです。米軍で起きたことと同じことが自衛隊でも起こります。大抵は普通に飛んでくれるオスプレイですが、ある時、突然墜落します。パイロットに責任が転嫁されます。高額で購入した武器を損失させた訳ですから。救難任務になんか使えません。雪山で遭難者を助けようとすれば、雪煙が立ち、何も見えなくなります。
こんなことを分かった上で政治家たちは導入を決めたのでしょうか?。
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