ダンフォード参謀長がトランプの「拷問は機能する」を否定

2016.2.27


 military.comによれば、統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード海兵大将(Marine Gen. Joseph Dunford)は木曜日、共和党大統領候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)の「拷問は機能する」との発言を間接的ながらも強く否定しました。

 トランプに関する民主党のベティ・マッカラム下院議員(Rep. Betty McCollum)の発言に当惑し、ダンフォード大将は直接的には答えなかったものの、拷問はアメリカ人の価値観を体現する軍の範囲外であることを明確にしました。

 「この制服を代表するために私に誇りを持たせることの一つは、我々がアメリカ人の価値観を代表することです」と大将は下院歳出国防小委員会で言いました。

 彼はトランプの名前は言わなかったものの、彼は「我々の若い男女が戦争に行く時、彼らは我々の価値観と共に行きます」と言いました。

 ダンフォードは「我々が例外を見いだす時、米兵が捕虜を虐待する時、いかに我々がこうした例外に厳しく対処するかを見られます。我々はアメリカ人の価値観と共に戦争に行ったことで決して謝罪してはなりません。これは我々が歴史的に行ってきたことで、将来にも行うと予測することです。繰り返しますが、これがこの制服を着ることで、私に誇りを持たせることなのです」と言いました。

 マッカラム議員は、アシュトン・カーター国防長官(Defense Secretary Ashton Carter)とダンフォード大将から、大統領として捕虜とテロ容疑者に、オバマ大統領が禁止した水責めを遙かに超える尋問方法を承認するトランプの発言に関してコメントを強く出させようとして、委員会と長官を唖然とさせたようでした。

 先週、南カルフォルニアでの選挙運動において、トランプはテロリストに対する尋問で拷問は機能するのだから、水責めと同類の尋問技術を支持すると言いました。「私に機能しないと言うな。拷問は機能する。みんな、オーケーか?。拷問、知ってるだろうが、こういう連中の半分は拷問は機能しないって(言う)。私を信じろ。機能するんだ。オーケーか?」。

 マッカラム議員は質問の中で、委員会はアメリカ人と世界に拷問が機能すると言っている次期大統領と主要な大統領候補者が活用できる軍隊に資金提供を躊躇すると言いました。

 彼はイスラム国を倒すために拷問を使うつもりだと言うと、彼女は言いました。「私はこういう叫び声が我が国を怖がらせ、危険なことに気付きます」。

 彼女はカーターとダンフォード(※)に「米兵や諜報界が拷問を使うことを認めるのに賛成ですか?」と問いました。(※ 原文では「トランプ」ですが、文脈からして誤記と思われます)

 カーター長官は質問を避けようとしました。「正当な質問です」と彼は言いましたが、「私は我が省は選挙のシーズンから離れている必要があると強く思いますので、慎んで進行中の政治的議論を引き起こす質問に答えるのを辞退します」。

 カーター長官はダンフォードは制服を着た将校としてより多くの制約の下にいると言いましたが、将軍は答えたがっているようでした。

 カーターは妥協し、ダンフォードが我々がどのように軍隊として振る舞おうとするかについての一般的質問についてコメントするならばいいと言いました。

 ダンフォードが彼の意見を述べ終えると、マッカラムは「議長、私はアメリカ人の価値観には拷問は含まれないと思います」と言いました。

 議長の共和党ロドニー・フリーリングハイゼン下院議員(Rep. Rodney Frelinghuysen)は「賛成します」と言い、素早く質問を別の議員へ渡しました。

 トランプが大統領になり、尋問に拷問を使うことを承認すれば、米兵を拷問と捕虜虐待を禁止する統一軍紀法典に違反する危険にさらすかもしれません。

 デビッド・ペトラエス大将(Gen. David Petraeus・階級は当時)が共同執筆した対武装勢力に関する陸軍と海兵隊のフィールドマニュアルFM 3-24も「倫理」の節で、捕虜虐待と厳しい尋問について警告します。

 「米国憲法第VI条と陸軍の価値観である兵士の信条(Soldier's Creed)、海兵隊の基本的価値観はすべて武力紛争法の遵守を必要とします。それらは陸軍兵士と海兵隊員を士気と倫理的な行いにおいて最高の基準に保ちます」。

 「拘留下や国防総省の支配下にある者は誰も、国籍や物理的な所在地に関係なく、米国法に従い、定義されるとおり、拷問や残酷で、非人間的、侮辱的な扱いや処罰を受けてはなりません」とマニュアルは記します。


 昨日書こうとしながら、疲労のために掲載できなかった記事です。

 トランプはとんでもない人物です。彼がやりたがっても、米軍は決して賛成しません。

 いま、全国で映画『不屈の男 アンブロークン』を上映中です。太平洋戦争中に日本軍の捕虜になり、激しい虐待を受けた米兵の物語です。

 劇中では日本兵の虐待は原作よりも大幅に控えめに描かれたにも関わらず、反日映画とのレッテルを貼る者たちがいて、それは逆に作品の正当性を高める結果になりました。

 劇中には登場しませんが、映画の主人公ザンペリーニが実際に送られた大船にあった施設は捕虜収容所ですらなく、尋問のための秘密施設でした。そこでは拷問を用い、捕虜から機密を聞き出す活動が行われました。重要とみなされた捕虜はそこで拷問を受け、情報を聞き出したと日本軍が
みなすまで留め置かれました。捕虜収容所に移されたのは、その後です。

 余談ですが、ザンペリーニは大船では拷問を受けませんでした。彼が大学生だった時に友人だった日本人が実は日本軍のスパイで、彼が尋問を担当したために、何もしなかったのです。

 同じような尋問施設をアメリカもアルカイダとの戦いで造りました。グアンタナモベイ収容所では拷問が行われ、他にも外国に複数のCIAの尋問施設があったとされます。こういう秘密施設が造られるには理由があります。

 捕虜取り扱いを定めたジュネーブ条約は軍人のみを拘束します。現在のところ、情報機関を拘束する条項はありません。条約加盟国は軍人に条約を守らせなければなりませんが、情報機関には制約がありません。そこで、CIAはアルカイダ要員を拷問し、情報を引き出そうとしたのです。

 そこには同時多発テロという事件の余波があります。アメリカ本土が攻撃されたのです。「非常時には非常時の手段がある」という考え方がCIAを支配しました。こういう危機意識が抑えがたいことは説明を要しません。

 大船の施設は日本軍のものでした。これは完全にジュネーブ条約違反です。グアンタナモベイの施設は海軍が運営し、拷問はCIAがやっていました。明らかに違法であり、オバマ政権は閉鎖に向けて努力しています。

 イラクのアブグレイブ刑務所で起きた捕虜虐待事件は、CIAが指揮系統に入り込み、陸軍兵士に本格的な拷問の前に予備的な拷問を行わせた事件でした。発覚後、兵士だけが逮捕され、CIAは無傷でした。

 「いじめ」が頻繁に新聞の記事になる日本で、外国人の捕虜をとることになった場合、適切に対処できるかは分かりません。政治家は無知から現場任せにして、問題が起きたら関係者を処分して終わりということになりかねません。私は本気で心配しています。

 


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