テポドン2号打ち上げは2月8日以降

2016.2.3


 毎日新聞によれば、国際電気通信連合(ITU、本部・ジュネーブ)は2日、北朝鮮が同日朝、「地球観測衛星『光明星』を打ち上げる計画がある」と通告してきたことを明らかにしました。

 国際海事機関(IMO)や国際民間航空機関(ICAO)によると、2月8〜25日の午前7時(日本時間同7時半)〜正午(同午後0時半)の間に打ち上げると通知があったといいます。

 北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射は2012年12月以来。IMOは北朝鮮の通告を受け、周辺国に予想落下地域の情報について通報する予定です。

 北朝鮮はITUに加盟しており、衛星の周波数などを明記した計画書をITUに提出する必要があります。衛星の運用期間は4年だといいます。ただ、ITU報道官によると、必要な情報が不足しており提供を求めているといいます。


 記事は一部を紹介しました。

 これでテポドン2号の打ち上げは来週行われる公算が高まりました。可能なら8日も打ち上げ、あとは天候調整のための日程ですので、チャンスがあれば直ちに打ち上げるはずです。

 現地の天候を見ると8日(月曜日)は部分的に晴れ、9〜11日までは晴れです。風速は9日が時速19マイル(秒速約8.5m)ながら、打ち上げに支障はありません(world weather onlineによる)。13〜14日は再び風が強まります。8日や12〜13日は雲が濃密で、これが雷雲になると危険です。考えやすいのは10〜11日ですが、8〜9日にも不可能ではなさそうです。8日は雲がどうなるかには注意が必要ですが、打ち上げにそう大きな支障はなさそうだといえます。

 防衛省は北朝鮮がITUやIMOに通告してから、最終的な部隊配置を決めるようです。敵の情報に依存する癖は止めた方がよいでしょう。当サイトでは最初から北朝鮮がテポドン2号を真南へ向けて打ち上げると主張してきました。特別な情報があったわけではなく、ロケット開発の常識から推測したのです。

 北朝鮮は打ち上げる人工衛星を「地球観測衛星」といいました。この種の衛星は北極と南極の間を通過する南北に地球を周回します。東西に回る衛星を東倉里から打ち上げると、北朝鮮の領土の中を横断して上昇することになります。実験中であるテポドン2号を東へ向けて打ち上げて、低高度で墜落した場合の被害は甚大です。つまり、テポドン2号が東京方向へ向かうことなど最初から選択肢に入らないのです。下は東倉里から東京を狙った場合の軌道です。

 防衛省はどの方向に打ち上げるか分からないとして、とりあえずイージス艦を出港させ、非公表の場所へ向けて移動を開始しました。迎撃ミサイルPAC-3を防衛省敷地内へ展開し、テポドン2号が東京に向かった場合に備えています。

 そして、ITUやIMOから公式な通告があり、南方へ向かうと分かってから沖縄に迎撃ミサイルを展開するつもりかもしれません。それでも東京の迎撃ミサイルは展開したままとなるでしょう。

 敵の情報を待って行動する自衛隊の動きは軍事的に合理的とはいえず、不安を引き起こします。敵の動きを待って動くのではなく、相手の先を行き、実質的な成果を得るべきです。

 イージス艦を出してテポドン2号を追尾し、その性能を解析することは重要です。打ち上げの度に、性能が相手に伝わるという圧力は加えておくべきです。しかし、それをもって、空襲警報ごっこをやり、国民に威圧感を与えることは止めるべきです。いまは政府が警報を鳴して、国民を狙い通りに動かす時とは思えません。第一、いまにも空襲があると大騒ぎすれば、北朝鮮は金正恩の腕力に日本国民が脅えていると、彼らを喜ばせるだけでです。

 まして、テポドン2号が東京に向かった場合に備えて、貴重なイージス艦を日本海に無駄に展開すべきではありません。2012年4月には、これをやってテポドン2号の軌道を完全に探知できなかったのですから。PAC-3の展開もまったく必要がありません。

 そもそも、この迎撃態勢はかつてアメリカがテポドン2号を迎撃すると宣言したので、日本もやると言い出したことに起因します。アメリカが使うと言ったTHAADミサイルは当時は実験段階で、命中しないと世界的に大恥をかくような代物でした。だから、私はアメリカは必ず迎撃するとの主張を撤回する、これは言葉による威圧に過ぎないと予測し、実際、その通りになったのです。ハシゴを外された日本は虚しく迎撃態勢を続けるしかありませんでした。防衛省はその程度の話を、その後も延々と続けて、神話を国民に信じ込ませるつもりなのでしょうか。

 外交的には、北朝鮮が人工衛星を打ち上げようとしているとの認識を示すだけで十分でしょう。宇宙ロケットを開発すれば弾道ミサイルも開発することになるのは常識であり、「事実上の弾道ミサイル」なんていわなくても、それは米中露が過去にやってきたことです。軍事転用もできるからイージス艦で調査するといえばこと足ります。現段階で日本の安全保障を脅かすものとは認識していないということも大事です。しかし、いまの日本政府はそれと真逆のことをやっています。

 ロケットが打ち上げられたから敵地をミサイル攻撃できるのではありません。弾頭部分を格納する再突入体を管制させ、実際に、海面に狙い通りに落下する実験をやって、はじめて核攻撃能力を持ったと世界に宣言できるのです。北朝鮮はそもそも、その実験を一度もやっていません。やっていないのに、アメリカを攻撃できる武器を持ったと騒いでいるのだから、本当の実力を疑って当然なのです。

 シリアで和平交渉がはじまり、そちらの情報を追いたいと思っています。今のところ進展は報じられていないようですが、各代表が会合を持ったことは報じられています。こちらの情報に比べて、日本のミサイル騒動は取り上げる価値が格段に落ちます。その落差に焦燥を感じてしまいます。


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