テポドン2号の打ち上げ準備は順調の模様

2016.2.7


 38north.orgが北朝鮮の東倉里で進むテポドン2号の打ち上げ準備について、燃料貯蔵庫への充填が始まったと報じました。

 2月3日〜4日までの西海衛星打ち上げ場の新しい商用衛星写真は打ち上げ台への、特に燃料・酸化剤貯蔵庫へのタンクローリーの到着を示しました。最近の報道に反し、これらのタンクローリーの存在は宇宙ロケットよりも燃料・酸化剤のタンクへの充填を一層示唆します。過去には、こうした活動は打ち上げの1〜2週間前に起こり、北朝鮮が発表した2月8日から24日までの打ち上げ期間に合致します(訳註 その後、北朝鮮は7日〜14日に打ち上げ期間を変更)。

 さらに、活動は水平処理棟周辺で継続しています。これは過去にはロケットの機体を受け取るのに用いられ、全ての接続をテストするためにそれらを水平位置で組み立て、サブシステムの最終テストを行い、発射台に据え付けるために機体を準備するのに使われました。具体的には、写真は2月2日、3日、4日にそれぞれ車両10台、16台、6台(バス1〜2台とクレーン車1台を含む)があることを示します。この活動レベルは先の2012年の打ち上げに見られたのと遜色がなく、現在の打ち上げ期間をさらに支持します。

発射台、燃料・酸化剤貯蔵庫での新しい活動

 2月3日の写真はタンクローリー2台が燃料・酸化剤貯蔵庫に到着したことを示します。翌日、写真はタンクローリー1台だけを示します。報道に反して、これらの車両の存在は宇宙ロケットへの充填が始まったというよりも燃料・酸化剤のタンクへの充填を示すとみられます(この活動は現在建設中の新しい貯蔵庫がまだ稼働していないことを意味します)。過去には、こうした燃料の活動は打ち上げの1〜2週間前に起こりました。

 2月3日と4日の写真は発射台そのものには大きな変化がないことを示します。ガントレータワーの作業足場は覆われたままで、取り巻いたカバーが設置され、中で行われているかも知れない活動と宇宙ロケットが存在するかどうかをすべて隠しています。人員や車両は発射台のどこにもないものの、一部の人員が施設へ続く道路を歩いている(あるいは自転車に乗っている)のが見えます。様々なロケットの機体を地下の施設から発射台へ移すレール搭載の移送構造は、固定処理棟に隣接して発射台の南端にあるままです。差し迫った打ち上げを示す活動はないものの、ガントリータワーと発射台施設は発表した打ち上げ期間内に打ち上げを行う能力を示します。

その他の主要打ち上げ関連施設での低調な活動

 最近の写真は打ち上げに関係しそうなその他の主要施設で低レベルの活動を示し続けています。

  • 2月2日〜3日の打ち上げ管制棟と考えられる物の写真は大きな変化がありません。この施設の活動は打ち上げ日が近づくと増加しなければなりません。
  • 2月3日に衛星管制棟の写真に車両1台が観測されますが、翌日にはなくなっています。2月3日の写真では、VIP用住居地区に車両はありませんが、2月4日に車両1台があります。この地区での車両の活動が増えることは、2012年の打ち上げで先に見られたように、科学者とエンジニアがいることを示します。
  • 2月2日に少なくとも車両1台(車かバス)が国家航空宇宙開発部(NADA)の講堂と考えられるものにあります。最近の写真に隣接するヘリポートには大きな変化は認められません。来賓、高官と作業員がこの位置から打ち上げを見るかも知れません。
  • 2月1日以降、施設の入口付近にある管理・保安本部の施設に車両4〜5台が観測されます。

垂直エンジン試験台は準備完了か

 先月を通して垂直エンジン試験台で行われた活動は、エンジン試験がいつでも、ほとんど予告なく行えることを示します。2月1日以降の写真すべてで垂直エンジン試験台で大きな変化はありません。レール搭載のシェルターは試験台に隣接したままです。人員は見えず、エンジン試験が最近行われた徴候はありません。


 記事はほぼ全体を訳しました。

 テレビニュースでは燃料・酸化剤貯蔵庫の話だけをしていましたが、水平処理棟で活動があることが気になります。ロケットの機体をすべて発射台に移したのなら、ここは不要になるはずです。2月4日まではロケットの発射台への据え付けが行われていたと考えるべきです。6日に打ち上げ期間の前倒しを通告したということは、こうした据え付けの活動が5〜6日に終わったことを意味します。6日までにテポドン2号は完全に発射台の上に乗り、準備を整えたということでしょう。

 以前と違って、タンクローリーからロケットに充填するのではなく、貯蔵庫から一気に充填するので、時間は大してかからないはずです。7日午前中に打ち上げる可能性は十分にあります。

 7〜8日の天候は打ち上げに適しています。準備に問題がなければ打ち上げが行われると考えられます。11日〜12日、14日は雲が多く出るので、北朝鮮が打ち上げの映像を綺麗に撮影し、世界に宣伝するためにも、打ち上げには支障がなくても、これらの日は避けると考えられます。 そう考えると晴れ間をぬって打ち上げるよりは7〜8日に打ち上げる方が楽なので、最も可能性が高いといえます。

7日日曜日の天候

8日月曜日の天候

10日水曜日〜15日月曜日の天候

 北朝鮮が打ち上げを前倒ししたのは、日本が北朝鮮の発表に沿って動いているので、わざと番狂わせをして嫌がらせをしているように見えます。石垣島へのPAC-3は昨日夕刻に到着し、展開する準備を開始しましたが、宮古島へは7日の7時半にならないと到着しません。それから準備をするわけですから、準備が整う前にテポドン2号は飛んで行ってしまうかもしれません。もちろん、北朝鮮には日本を攻撃する意図はないものの、日本政府に迎撃の準備が終わらなかったという恥をかかせることができます。そうだとすれば、7日の打ち上げはより可能性が高いように見えます。

 相手の出方を見てから動こうという考え方が、そもそもの間違いです。それが万全の対策だと考えるのが現在の日本ですが、それは「戦い」の視点からはずれているのです。

 北朝鮮は日本の動きを観察しています。PAC-3を展開するのなら、北朝鮮が落下地点を発表する前、打ち上げ準備を確認した時点で展開すればよかったのです。当サイトでは北朝鮮はテポドン2号を真南へ打ち上げると言い続けてきました。日本政府はこの程度のことが分からないのです。日本政府は「人工衛星の打ち上げと承知しているが、安全のために周辺地位へ迎撃部隊を配置する」と言えば済んだ話なのです。それが「事実上の弾道ミサイル」と言い、「国民の安全に万全を尽くす」という物々しい文言を並べ、 結果、こういう恥をかかされるとすれば、ミサイル防衛に対する疑問が湧いて当然です。敵の意表を突くということが、日本政府には分かっていません。

 どうせ、日本政府は「今回のテポドン対策に瑕疵はなかった」というに決まっています。ユルユルの身内大事の政権ですから、厳しく反省するなんてことはやらないでしょう。

 


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