16年前のオスプレイ事故でパイロットミスを撤回

2016.3.13


 military.comによれば、米海兵隊がパイロットの行動が16年前にアリゾナ州で訓練中に横転・墜落して、死者2人、負傷者17人を出した事故の主原因だというのは誤りだと、国防当局者は言います。

 ロバート・O・ウォーク国防副長官(Deputy Secretary of Defense Robert O. Work)は先週、事故原因すべを取り上げ、最終的に死亡したブロックス・ガーバー少佐(Maj. Brooks Gruber)とジョン・ブロウ中佐(Lt. Col. John Brow)の名前を削除した書簡を公開しました。

 キャンプ・ルジューヌ(Camp Lejeune)を含む地域のウォルター・ジョーンズ下院議員(Rep. Walter Jones)は海兵隊が、事故当時生産の初期段階にあり試験中だった、型破りで高額な飛行機とヘリコプターのハイブリッドであるオスプレイそのものを守るために墜落をパイロットのせいにするのを急いだことを確信していました。

 「彼らはディック・チェイニー(Dick Cheney)がオスプレイ計画の資金を断つことを恐れ、パイロットに責任を負わせました」と彼は言い、オスプレイ批判者だった元国防長官に言及しました。「彼らはスケープゴートを必要とし、最高のスケープゴートとは話ができず、弁明ができない男です」。

 ジョーンズは調査報告を集め、専門家に意見を聞き、数え切れない書簡を書き、軍と議会の調査を求めました。

 パイロットの知人、この墜落と調査に詳しい者も支援しました。

 事故は2000年4月8日に、パイロットが人質のグループを救出して、アリゾナ州マラナ(Marana)にある空港に連れ戻すことになっていたオスプレイ数機が参加する訓練の間に起こりました。

 任務は夜間飛行、高重量の海兵隊と装備を含めたいくつかの変化と、キャンプ・ルジューヌ周辺とオスプレイを飛ばしたノースカロライナ東部の訓練場の異なる環境が持ち込まれました。

 調査はアリゾナの演習でいくつかのことがうまく行かなかったことを見出しました。

 コンピュータは航空機を誘導するのに失敗し、パイロットはおそらく混乱して、アプローチ時に指示された高度へ降下するのに失敗しました。

 彼らは高すぎる高度でやって来て、急降下を始めました。それは通常のヘリコプターには対処可能なことでした。

 しかし、ヘリコプターや飛行機のように飛べるオスプレイにはさらに前進速度が必要でした。

 ローターは失速をはじめました。

 上空200フィートで、航空機は右報告へ傾き、横転し、地面に叩きつけられました。

 事故から3ヶ月後の2000年7月、海兵隊はいくつかの問題に触れながらも、「残念ながら、その任務を達成するためのパイロットの操縦が(事故の)主要な要因と思われます」と述べたプレスリリースを発行しました。

 海兵隊に27年間在籍し、2014年に国防副長官になったウォークは昨年、ジョーンズの要請で問題を調査することに同意しました。

 書簡の中で、ウォークはパイロットは航空機の予備のマニュアルで指定された警告限度に違反したものの、その他の要因が致命的な結果に大きく寄与したと宣言しました。

 それらには、オスプレイが低い前進速度で移動している時の降下率についての不十分なガイドライン、不十分な機速表示システム、特定の着陸状態での横転のリスクについてさらに情報を明らかにするテストの不十分さ、パイロットが夜間に遭遇する問題に対するオスプレイのマニュアルにおける貧弱な取り扱い範囲と配置を含みました。

 その後、一連の修正が航空機とマニュアルになされました。

 オスプレイを製造するベル・ボーイング社は墜落の死者の家族と非公開の和解に応じました。


 記事は一部を紹介しました。被害者の家族のコメントは省略しました。

 海兵隊のオスプレイの事故隠しは当サイトで何度も取り上げてきました。しかし、2000年の段階から行われてきたとは驚きです。

 そして、このオスプレイが自衛隊に導入されると、自衛隊が米軍以上に事故隠しをするのではないかと危惧します。

 自衛隊は米軍万歳の組織で、イラクに関する派遣中に交通事故で負傷した自衛官の怪我を米軍が異常なしと診断すると、当人が痛みを訴えても無視したくらいです。自衛隊が公にベル・ボーイング社にクレームを入れるとは思えませんし、今からオスプレイの事故の情報を集めているとも思えません。

 米海兵隊が問題なしとするオスプレイを自衛隊のパイロットが墜落させたら、自衛隊はパイロットの操作を問題にするはずです。

 前に指摘しましたが、元海兵隊の軍事評論家、カールトン・メイヤー氏によると、オスプレイの訓練シミュレータやマニュアルは、実際の性能データではなく、開発時の目標値で作られており、そのために墜落事故が起きています(過去の記事はこちら)。シミュレータではオスプレイにできないことをやっても墜落はせず、そのためにパイロットは本当の飛行でやってはいけない操作を意図せずにするのです。

 それに他のヘリコプターでできることをオスプレイでやったら横転するなんて、いかにオスプレイの性能が悪いかを表しています。

 「間違ってもオスプレイのパイロットに志願しないように」と、これから入隊する人たちに言っておきます。自衛隊には「自分たちのオスプレイ・パイロットを守る準備はできていますか?」と問うておきたい。

 ジョーンズ下院議員みたいに、日本にも自衛官の訴えを引き受け、請願活動する国会議員が必要ですね。反自衛隊や自衛隊の利益代表みたいな人はいますが、万一、自衛官の名誉に関わる問題が起きた時に対処する人はいません。

 


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