ムスダン打ち上げ成功の衝撃

2016.6.26


 中央日報日本語版によれば、北朝鮮が22日に発射したムスダンミサイル(火星10号)の平均速度はマッハ11.3(音速の11.3倍)だったと、軍の当局者が伝えた。

 匿名を求めた軍当局者は24日、「朝鮮中央テレビが23日夜に公開した写真を分析した結果、ミサイルの軌跡を表示したモニターに『12:32』という数字がある。発射から海上に落ちるまで12分32秒かかったという表示」と述べた。

 この当局者は「高度1413.6キロまで上昇したことを根拠に計算すれば1秒あたりの移動距離は3759.6メートルで、音速(秒速333メートル)の11.3倍に相当する」と説明した。軍当局はムスダンが最高速度マッハ17を記録したと判断した。この説明通りなら、高度40キロで音速の5倍で飛行するミサイルを迎撃するパトリオットミサイルでは防ぐことができないということだ。

 しかし別の軍当局者は「高高度ミサイル防衛(THAAD)体系はマッハ7の速度で飛行し、迎撃はマッハ14程度まで可能」とし「今回のムスダンの速度はマッハ14以内であり、迎撃できる」と主張した。

 韓民求国防部長官もこの日の記者懇談会で、THAADで迎撃が可能かどうかについて「確認する事項」としながらも「概してTHAADで(迎撃が)可能だと評価するものと把握している」と述べた。韓長官は「現在、終末下層段階で迎撃をするパトリオットミサイルがあるが、THAAD体系が配備されれば役立つという判断」とも語った。国防部長官がTHAADでムスダンを迎撃できるという発言をしたのは初めて。国防部内では軍当局がTHAAD配備の議論に弾みをつけようとしているという分析が多い。

 一方、科学技術政策研究院の李春根(イ・チュングン)研究員は「一般的に弾道ミサイルが大気圏を抜けて真空状態で飛行する場合、最高速度はマッハ20を超える」とし、迎撃は容易でないと分析した。

 軍事専門家の正義党のキム・ジョンデ議員も「ムスダンを迎撃できるという主張は証明されたものではない」とし「国防部がTHAADを配備するために雰囲気を作っている」と批判した。

 この日、韓長官は「北はムスダンを1990年代半ばに旧ソ連のSS-N-6ミサイルを模倣して研究開発を始め、2007年に実戦配備した」とし「22日の北のミサイル発射は性能試験ではなく誇示のため」と主張した。続いて「実戦配備から9年過ぎたミサイルを取り出して発射したのは性能試験でない」とし「ムスダンの最初の発射(4月15日)に成功していれば、追加の発射はなかったはず」と強調した。ただ、「5回の失敗の末に打ち上げたミサイルであるため、技術的に進展があったとみる」と話した。

 軍当局は北朝鮮がエンジンと最大飛行能力を検証するために試験発射をしたと判断している。匿名を求めた軍関係者は「エンジン性能の側面で安定性を確保したとみている」とし「シミュレーションをした結果、正常に発射する場合は3500キロの飛行が可能だと判断する」と説明した。北朝鮮が公開した写真を分析した軍当局は、エンジンの側面にグリッドフィン(grid fin=格子型の翼)を装着して安定性を確保したとみている。


 記事は一部を紹介しました。

 マッハ11.3は平均速度で、最も速度が高いときマッハ17だったという分析結果です。迎撃高度40〜150kmのTHAADは速度が高い時に迎撃するので、マッハ14までとする性能はギリギリのところだといえます。李春根研究員がいうように、ムスダンの速度がマッハ20を超えていたら迎撃は無理です。現在日本が保有するSM-3でもマッハ17までの目標しか迎撃できないとされていて、その限界へ北朝鮮がムスダンを仕掛けてきたということです。

 北朝鮮による日本人拉致問題が公に認識された時、私は拉致問題を解決するには北朝鮮を崩壊させるしか方法がないと考えました。外交交渉で解決する問題ではないからです。これは弾道ミサイル問題を解決することにも使えます。北朝鮮が崩壊すれば、弾道ミサイルを打ち上げることはできなくなります。

 ところが、日本政府は拉致問題を解決するために、世論に迎合して圧力を加えてみたり、支援を与えてみたり、一貫していない対応をしてきました。

 それももう終わりかも知れません。一回だけとはいえ、ムスダンが飛ぶことが証明されたのですから、これからは甘い手は打てないでしょう。

 決まった場所からしか打ち上げられないテポドン2号で大騒ぎして、移動式のノドンやムスダンには無頓着だった日本。政府筋は迎撃ミサイルを買うためにテポドン2号の脅威を利用したといえます。その一方で本当の脅威に対しては手を打とうとしてきませんでした。たとえば、偵察衛星で北朝鮮が弾道ミサイルを打ち上げる地下サイロを造っていないかを監視しているのかなど、必要な地道な手を打っているのかは疑問です。日本政府が好むのは、大衆受けし、目に見えるものの効果が疑問な対策です。過去、左派政党だけでなく自民党も北朝鮮と太いパイプを持っていました。

 期待できるのは、北朝鮮が「攻撃された場合の保険」としてのみミサイルを保有している場合、北朝鮮が今回の打ち上げで性能を確認したという再突入体の製造に実は成功していない場合です。まだ、まともに飛んだのは1回だけです。韓民求国防部長官は、ムスダンが2007年に実戦配備されているといいますが、まだ実験中のミサイルが実戦配備されているとは言い難いはずです。

 もっとも、韓国と武力紛争になれば、やけくそで在日米軍基地へ向けてムスダンを撃つ可能性はあります。その場合、周辺に住んでいる人は素早く遠くへ逃げるしか選択肢がありません。この場合の避難計画も日本政府は考えていません。自己責任で逃げろということなのでしょう。

 


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