「The Sentry」報告書の概説部を邦訳
南スーダン政府の汚職について調査した「The Sentry」(訳文中ではセントリー)の報告書の概説部分(5〜9ページ)を全訳しました。引用してもらいやすくするために、完全な日本語になるようできる限り逐語的に翻訳しています。(報告書の原文はこちら)
概説
世界で最も新しい国、南スーダンは恐ろしい内戦で混乱を続けています。数万人の人々が命を失い、その大半は子供です。大規模な強姦が戦争の兵器として使われています。子供たちは繰り返し兵士として徴用され、戦闘の中に使い捨て同然に送られています。2016年7月の時点で、約2300万人の人々が紛争のために家を失いました。この国の人口のほぼ半分にあたる5100万人もの人々が食糧支援を必要としています。街全体が破壊されました。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は南スーダンを「世界の最も恐ろしい人権状況のひとつ」とよんでいます。
この残忍な内戦の直接原因はこの国の最高位の政治家の仲違いでした。サルバ・キール・マヤディット大統領と追放された副大統領レイク・マシャル・テニーです。しかし、南スーダンの内戦は、従来の説明に関わらず、二人の男の間の流血の復讐の結果ではありません。南スーダン内戦の主要な促進剤はグランプリ賞を、キール大統領とマシャル副大統領が率いる対立する泥棒政治のネットワークが、国家資産とこの国の豊富な天然資源を獲得するための競争でした。南スーダンのいがみ合う党派の指導者たちは、二つの泥棒政治のネットワークの最高指導者、そして最終的には、ネットワークがサービスを活用し、依存する国際的な支援者の利益のためにしかならない紛争への支援を呼び集めるために民族の分断を操り、利用します。
2015年、「セントリー」はこれらのネットワークが蓄積して、し続けている金を追いかけはじめました。この報告書は内戦の間に行われた大規模な残虐行為を含めて、組織的な汚職と暴力的な紛争の間のつながりをハイライトします。「セントリー」の調査は、2013年12月以降、広範な人権犯罪となった軍事作戦に関わる指揮権を持つと国連とアフリカ連合が確認した二つの当局に焦点をあてました。キール大統領、マシャル副大統領、南スーダン武装軍のスーダン人民解放軍(SPLA)参謀長のポール・マロン・アワン将軍、軍の調達に責任を負う補給担当SPLA副参謀長のマレク・ルベン・リアク将軍、そして国連安全保障理事会の制裁の下にある野戦指揮官ガブリエル・ジョク・リアク将軍です。以下は、「セントリー」の調査の結論です。
利益の飽食
「セントリー」は南スーダンで大量な残虐行為に責任がある最高当局者が、国の他の部分がその結果に苦しみ、一部の場所はほとんど飢餓状態を経験する中で、なんとか財産を蓄えたことを見出しました。これらの南スーダン当局者たちは、相次ぐ戦争から財政的に利益を得て、彼らの人権侵害と金融犯罪への説明責任がないことを効果的に確実にしました。
南スーダンの最も有力な政治家と将軍数名は、北・南戦争(訳註 スーダンと南スーダン間の紛争)を終わらせ、2011年の南スーダン独立の結果となった独立のための住民投票の基盤を導いた包括的和平合意に署名した2005年以降の十年間で莫大な富を蓄積してきました。これら最高指導者たちが蓄積してきた富の多くは、国外の富裕層向けの不動産と南スーダンで契約される公共部門と石油サービス両方の広範な営利企業の形をとります。「セントリー」はキール大統領とマシャル副大統領両方の家族が南スーダン国外の、ケニヤのナイロビ近郊のとりわけ高所得者層の家を含めた豪華な家に住んでいることを見出しました。「セントリー」の調査は、政府の給与で年俸約45,000ドルを得るマロン将軍が、ウガンダに少なくとも豪華な別荘二軒を持ち、さらにナイロビのゲーティッド・コミュニティーに200万ドルのマンションを持つことを示します。調査はさらに、ウガンダ、カンパラのマロン将軍の家の一つは、資産凍結と旅行禁止(効果的に彼の資産すべてを凍結し、国外への旅行を禁止する手立て)を国連から科された南スーダンの将軍、ガブリエル・ジョク・リアク将軍が維持する家の隣に位置することを示します。マレク・ルベン・リアク将軍はほんの数マイル離れた壁に囲まれた屋敷の中に家を持っています。このような説明がつかない富は、当局に富の源泉といかなる不正が起きたのかどうかを調査するための合理的基礎を提供するに十分です。
南スーダンの最高当局者の近親者は国の最も実入りが多いビジネス部門で商業的企業を持ちました。南スーダンの法律によれば、憲法上の公務員である者が在任中に政府の外でビジネス活動に従事することは違法です。2009年のSPLA法は、すべてのSPLA隊員の犯罪による縁故採用と腐敗した慣行を禁止し、そうした活動を禁固1年に処します。それにも関わらず、奇妙なことに、「セントリー」が入手した書類はキール大統領の12歳の息子が2016年2月に設立された持ち株会社の株式25%を所有していることを示します。「セントリー」は書類が、キール大統領の妻、ファーストレディのメアリー・エヤン・マヤディットと子供少なくとも7人が広範なビジネス・ベンチャーの株式を保有することを示すと評価しました。加えて、これらの書類はキール大統領の切りの兄弟、グレゴリー・バシリが南スーダンで営業する多数の企業の株式を保有していることを示すことを明らかにします。これらの書類によると、キール家とバシリ家は共に、石油、鉱山、建設、ギャンブル、銀行、テレコミュニケーション、航空、政府、軍隊の調達で営業活動をするほぼ二ダースの企業の株を持っていました。「セントリー」が入手したその他の書類は、マロン将軍とルベン・リアク将軍の子供たちも、石油、鉱山、テレコミュニケーション会社の株を持っていることを示します。
キール大統領の家族は明らかに政府の調達取引と外国の石油会社との関係を含む一連の商取引にも関与していました。「セントリー」が入手した書類によると、バシリ将軍の家族が管理する一つの会社、「ティー・アルファ・インベストメンツ」はいくつかの注目すべき取引に関与していました。「セントリー」が入手した書類は、「ティー・アルファ」がバシリ将軍が軍高官として勤めた間に主要な燃料供給者として南スーダン軍とのビジネスをしていたことを示します。これらの書類によると、2012年に「ティー・アルファ」はマレーシアの国営企業で南スーダンの石油分野での主要プレイヤー「ペトロナス」の子会社と主要合弁事業を組織しました。さらにこれらの書類は「ティー・アルファ・インベストメンツ」が後に同じ「ペトロナス」の子会社のすべての株をたった25,000ユーロ(27,500ドル)で購入したことを示します。
泥棒政治の助長
「セントリー」は南スーダンのこれらの最高当局者たちが国際的な銀行、ビジネス、武器商人、不動産会社、弁護士のシステムなしにこれらの行為を続けられず、知ってか知らずか、南スーダンがなった凶暴な泥棒政治を助長したことも見出しました。
外国企業は高位の南スーダンの将軍たちの個人銀行口座に直接支払いをしていました。「セントリー」が評価した書類は、303万ドルが2012年から2016年の間に「ケニヤ商業銀行」のルベン・リアク将軍の個人銀行口座へ動いたことを示します。これらの書類はさらに、ジョク・リアク大将も2014年2月から12月までの間に「ケニヤ銀行」の個人銀行口座に少なくとも総計367,000ドルの巨額の資金転送を受けたことを示します。これらの資金転送は、南スーダンで営業しているケニヤの多国籍企業「ダルビット・インターナショナル」からの308,524.10ドルを明白に含みます。「ダルビット」は「セントリー」に、この支払いは頓挫したSPLAとの燃料供給取引の費用返済であり、ジョク・リアク将軍が持つ一つを含めた三つの口座へ支払うよう指示されたと言いました。「これは商取引でも『ダルビット』と将軍の間の関係でもありませんでした」と同社は言いました。
南スーダンの凶暴な泥棒政治家たちは容易に金を動かしました。高位の政府当局者、裁判官、軍将校、国営企業の重役、彼らの家族と定義される、政治的に露出した人々が関与する巨額の資金転送は、これらの転送や彼らが導いた行為が非合法である可能性があったり、さもなくば不適切とレッドフラッグをあげるべきです。そうした商取引を丁寧に精査することは銀行が汚職の利益を含めた違法な金の資金浄化を妨げるのを可能にします。
それでも、ほんの一つの実例を引用することで、「セントリー」が評価した書類は「ケニヤ商業銀行」が南スーダンで営業する多国籍企業から数年間の間にわたり政治的に露出した南スーダンの高官二人の口座へ巨額の支払いを処理したことを示します。ジョク・リアク将軍のための銀行業務は明らかに、2015年3月に彼が国連が科した資産凍結を受けるようになった後ですら明白に処理されました。「セントリー」が入手した情報を示した時、「ケニヤ銀行」はコメントの要請に応えませんでした。
弁護士は南スーダンの凶暴な泥棒政治システムを助長する上で重要な役割を演じます。2016年の初期の時点で大統領の12歳の息子が株式の25%を保有するとされる会社、「コンバインド・ホールディング・リミテッド」設立のための書類仕事は、顧問弁護士の手とジュバの会社の株式登録機関を通す必要がありました。弁護士は南スーダン当局者の不動産取得を容易にすることにも関与していました。ジョク・リアク将軍がカンパラに維持する家は彼の名前では登録されません。もっと正確には、家の譲渡証書は家がアドリアン・ムビルというウガンダ国籍の者に所有されることを示します。特にセントリーが評価した銀行記録は、2014年11月から2015年2月の間に、ジョク・リアク大将が総額で210,000ドルを転送したことを示します。
国際主体は不安定で継続的な暴力から利益を得ます。セントリーが入手した書類は、2014年中期に、マーク・ゴールドマンと名乗るロシア人ブローカーがマシャル副大統領とキエフに拠点を置く「ネボ・ウクライニー」という名称の防衛企業との間の仲介として活動したことを示します。書類はゴールドマン氏が(明らかにマゴメッド・エルザヌキフという偽名で)南スーダンの原油と引き替えに軍の防衛の改善のために軍用装備を輸入することに関与したことを示します。その他の書類はマシャルとネボ・ウクライニー両方の代理権をゴールドマンに与えることを意味します。ゴールドマン氏はコメントの要請に応えませんでした。
残虐行為を防止する新しいアプローチ
この報告書は残虐行為に反撃するための新しい戦略を提案します。それは2つの目的のために、テロリズム、組織犯罪、核不拡散に対処するために通常予定される財政的な圧力を用いるでしょう。第一は、これまで世界が彼らの行為に当然の帰結を強いないのでほぼ処罰されずに活動してこられた、これら政府の当事者に釈明を求めること。第二は、これらの指導者の費用対効果分析を変えることで、大きく、現在まで不足している国際的なテコ入れを行い、彼らの動機を暴力、残虐行為、汚職から離して、和平、人権、透明性へと向かわせることです。説明責任とテコ入れをするために、国際社会は以下の処置をとらなければなりません。
南スーダンの汚職の収益の資金浄化を抑制するために先回りの手順をふみ、こうした転送を止めることができない銀行すべてを取り締まること。米政府とその他の政府は、南スーダンからはじまる汚職の収益の資金浄化に対する予防手段のために金融機関に追加の手順を踏ませることを促進できます。愛国者法第311条の下で、財務省金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)は、露見した南スーダンの政治的に高位の者たちによる不動産の購入は、取引の種類として、最初のマネーロンダリングの疑いを示すと宣言できるでしょう。FinCENはそうした転送を処理する金融機関に、追加調査と記録保持請求を強いるためにその権限を使うことを検討しなければなりません。これは、こうした商取引を厳しく監視し、汚職の収益で不動産を購入することを防ぐために、世界的な金融業界に通知されるでしょう。
幅広い影響の大きい目標に対して、より賢明な制裁を科し、これらの制裁が確かに実施されることを確実にすること。現在南スーダンで活用される目標を絞った制裁での、その場しのぎの方法は成功を保証しません。現在の制裁は意志決定チェーンの上部を対象としません。それらは意志決定者のネットワークに集中しません。それらは意図的にせよ無意識にせよ、上部の意志決定者を支援する国際的な支援者を対象としません。そして、それらは実施されません。しかし、適切に活用されれば、目標を絞った制裁は、財政的な不正行為と人権犯罪の加害者や支援者のどちらでもある個人、企業、ネットワークの打算を変えられる財政的なテコ入れを生む潜在的なツールになります。ホワイトハウスは現在の権限に加えて、国家資産を横領し、国の汚職に関与し、市民社会を妨害するこれらの個人に制裁を科すための権限を与える新しい大統領命令を出すべきです。この大統領命令には、この報告書の中で描かれた高官と彼らのネットワークを含めた、いくつかの強い影響力を持つ目標の指定が付随しなければなりません。制裁の調査は、戦争の継続に責任がある泥棒政治のネットワーク全体に集中しなければなりません。これらの目標を絞った制裁は、それから活発に実施されなければなりません。対マネー・ロンダリングと資産回復に集中した目標を絞った制裁を科し、その他の政治ツールを採用することは、財政的なテコ入れをさらに最大にします。
南スーダンから略奪された資産の浄化と戦うよう導くために南スーダンの隣国を奨励、支援し、人権侵害と財政的な不正行為に最も責任がある者たちに資産凍結を科すこと。地域の政府と金融機関は南スーダンで略奪された資産のロンダリングと戦うことで主役を演じなければなりません。この報告書で特定された南スーダン高官当局者により蓄積された資産の多くは、セントリーが入手した書類によると、南スーダンに接する国々、すなわち、ケニヤ、ウガンダ、エチオピアにあります。さらに、センタリーが得た書類は、疑問のある支払い数百万ドルがケニヤの銀行を通じて転送されたことを示します。これらの国々の政府はおそらく、世界中の他の政府よりも南スーダンでより多くの影響力を持ちます。これらの政府はそれゆえに、継続する暴力、財政的腐敗、大量の残虐行為、2015年8月に調印された和平合意への違反すべてに共同で責任がある南スーダン高官が持つ資産の凍結と押収を始めなければなりません。
リスク回避を妨げるために先回りの試みを行うこと。南スーダンで政治的に露見している人々に対する対マネー・ロンダリング圧力を向けることは、この国の中でビジネスを維持するための動機と比較したとき、銀行に南スーダンの口座保持者とのビジネスを行うことの危険が率直に高すぎると判断させるかも知れません。この課題を調査してきた国際機関と観測者は二つの重要な構成要素に集中します。1)特定の法的権限の管轄や商取引の種類におけるリスクの性質に関する政府の特異性。2)顧客、特に関係者に関する銀行システムの中の情報の有効性。南スーダン国外の汚職の収益の浄化を妨げる努力の中で、銀行がすべてのビジネスを取り止めないことを確実にするために、FinCENは銀行界にすべての南スーダン人の顧客がハイリスクではないことを強調するガイダンスを出さなければなりません。
公的な資産の略奪を容易にしようとして、凶暴な泥棒政治家が国家資産を奪うのを防ぐ財政的管理システムを導入すること。南スーダンの資源、経済、財政管理に必要な体系的変化に関する2015年8月の和平合意の一節で参照されるように、南スーダンの指導者は歳入徴収、予算、歳入配分の管理メカニズムを確立しなければならず、政府は地域・国際社会から技術的、顧問の支援を受けなければなりません。和平合意の中にこれが存在することと南スーダン人指導者が口にしたこれらのコンセプトに対する一般的なリップサービスにも関わらず、政府派良好な財政管理の慣習を実行することができませんでした。南スーダンの経済危機のひどさと指導者たちが外部の収入源のために表明した要求を考えると、国際的な援助資金提供者は、いかなる寄付金の資金も活用する上で、より大きな管理と説明責任を強く求めるために、いま絶好の機会と影響力を持っているかも知れません。追加の資金が提供されるために、特定の外部管理メカニズムが、特に主権侵害に関する懸念の可能性を踏まえて、譲歩と十分な外交的な誓約を必要とするでしょう。しかし、当報告書はそうした譲歩が要求されなければならないことを繰り返して明言します。
前述した影響力の構築と説明責任メカニズムを超えて、長期的には南スーダンと関わる国際的な援助資金提供者・機構は強力な公共部門の機関を優先し、政府と企業の透明性を促進するために活動し、泥棒政治家が開拓した隙間を埋め、重要な監視機能を実行するために市民社会と報道記者のための領域を守らなければなりません。
これを読んで、なぜ日本の外務省が南スーダン政府を支援しようなどと考えたのかと思ってしまいました。早い話、アメリカのNGO団体よりも日本の外務省はレベルが低く、国際的活動を企画する能力が劣っていると考えざるを得ません。
この先、日本の外務省が考えそうなのは、金で動かしやすいキール大統領派をうまいこと操っていくということです。
この概説をぜひとも皆さんの近くにいる政治家に送り、注意を喚起してください。国会議員の中でも、南スーダン情勢はほとんど理解されていないようです。国民が政治家に働きかけていく必要があります。地球の反対側にいる人たちのことなんか知らないといわないでください。アフリカに腐敗した巨大な国ができれば、それは将来かならず我々にも影響を及ぼします。
私はとりえあず、民進党、共産党、社民党、生活の党に、ここに日本語訳があることを連絡しました。その内容は以下のとおりです。
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私は平和と軍事の問題を扱うホームページ「スパイク通信員の軍事評論」を運営する者です。
御存知の通り、アメリカの監視団体「The Sentry」が南スーダン政府の腐敗を暴いた報告書を公表しました。日本は南スーダン政府を支援するために自衛隊を派遣しており、直接的間接的に南スーダン政府を支援しています。当サイトで繰り返して警告してきたとおり、南スーダンは全面的な内戦に突入しており、施設部隊による建設支援を中心としたPKO活動は頓挫しているも同然です。私は直ちに撤退し、別の方法で南スーダンが国家として正常化するよう支援すべきだと考えています。
そうした主張の一環として「The Sentry」の報告書の概説部分を邦訳し、当サイトに掲載しました。ぜひとも貴党の皆様に閲覧戴き、後学にして戴きたいと考えます。
アドレスは以下のとおりです。
http://spikemilrev.com/news/2016/9/17-1.html
このメールに返信は不要です。私は皆様の行動を必要としています。
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