米軍が新型の多目的手榴弾を開発中

2016.9.24


 military.comによれば、米軍武器技術者たちは、兵士がスイッチを動かすだけで、破片や激しい振動を起こす超過気圧を浴びせる新しい手榴弾に取り組んでいます。

 過去5年間にわたり、ピカティーニ兵器廠(Picatinny Arsenal・kmzファイルはこちら)の技術者たちは、歩兵学校の代表、手榴弾の専門家、陸軍と海兵の現役兵士と、手榴弾に関する戦闘員のニーズを見極めるために協力していました。

 「兵士たちは沢山の種類の手榴弾を携帯する必要はありません」と米陸軍武器研究開発技術センター(the U.S. Army Armament Research, Development and Engineering Center: ARDEC)で拡張型戦術多目的手榴弾プロジェクト担当将校、ジェシカ・パーシバリ(Jessica Perciballi)は最近のプレスリリースで述べました。

 「彼らは現在、致命的な破片効果を出すためにM67手榴弾を1個携帯します」多目的手榴弾なら、彼らはET-MP手榴弾1個を持ち、状況により破片や振動効果を選ぶ能力を持てます」。

 この努力は40年間で陸軍が兵士に新しい致死手榴弾を与える最初の機会となります。

 戦闘員はMK3A2衝撃手榴弾がアスベストの危険から1975年に使用中止になり、M67破片手榴弾が残った時、致死性手榴弾の代替品を使う能力を失いました。

 もう一つの特徴は、手榴弾が両手利きの使用のために設計され、彼らが両方の手で投げられることを意味することです。

 現在の手榴弾は左利きユーザーのために異なる手順を必要とします。

 手榴弾基礎技術開発(Grenades Tech Base Development)主査のマシュー・ホール(Matthew Hall)によると、多目的手榴弾の要望は2010年に戦闘員から来ました。

 研究はほとんどすぐに始まりました。

 プロジェクトを先へ進める科学技術基金は2013年会計年度に到来しました。

 「我々は早いうちに陸軍と海兵隊から直接の資金を受けました。それは新しい武装と起爆の設計を簡単にするのを確実にする上で重要でした」とハルは言いました。

 「これらのET-MPにおけるアップグレードは、起爆タイミングが完全に電子的になるだけでなく、投擲訓練も枠をはみ出ます」とハルは付け加えました。

 「起爆時間はいまやミリ秒にまで狭められ、起爆可能にするまでは手榴弾は起爆できないのです」

 しかし、兵士がこの新しい手榴弾を受け取るまで、しばらくかかるかも知れません。

  ET-MPの現在の計画は、ピカティーニで、2020年会計年度に新しい手榴弾が近接戦闘プロジェクトマネージャーへ(Project Manager Close Combat Systems)移行するところにあるとハルは言いました。


 どんな仕組みかは書かれていませんが、これまでの手榴弾のイメージを一新する兵器のようです。

 破片手榴弾は厚い金属ケースに収められた爆薬がケースを破砕してまき散らすことで破片となって、敵に危害を与えます。衝撃手榴弾はもっと柔らかい素材のケースで、そのために破片は少なくなります。

 どういう仕組みかは分かりませんが、これが切り替えられるのでしょう。しかし、安全ピンや雷管が収まっている部分の金属ブロックはさほど変わらないでしょうから、それが運悪く当たる可能性までは否定できません。

 手榴弾は安全ピンを抜くとバネの力で撃鉄が回転し、雷管を打って、真っ直ぐに伸びた導火線に点火し、4秒弱で爆薬中心部にある雷管を場発させて火薬が爆発する仕組みです。

 ダイナマイトの導火線に火をつけて投げる場合、意図せずに火が導火線の根元に移り、まだ手に持っているうちに爆発するという悲劇がありますが、手榴弾ではその危険がほぼありません。

 この起爆も時間を設定できるということです。どういう仕組みか分かりませんが、もしかすると破片と衝撃を選ぶために先端部分を回したときに必要な電気を発電するのかも知れません。

 これにより、近くの敵に投げる場合、爆発ギリギリまで我慢してサッと投げるという必要がなくなる訳です。

 手榴弾を投げるとバネで安全ピンで押さえていた安全レバーが弾け飛び、それによって安全レバーが固定していた撃針がバネで回転し、雷管を爆発させます。手榴弾を投げ、導火線が燃えて次の雷管を爆発させると、手榴弾が爆発します。

 元記事に掲載されている完成予想図には安全レバーがありません。

 投げてすぐに爆発させたい場合、安全ピンを抜くときに安全レバーを握らないで手榴弾を持ち、安全ピンが抜けたら安全レバーが弾けるようにします。そして手榴弾を握り直して投げるのです。この手間がいらなくなります。投げる前に起爆タイミングをセットすればよいのです。

 この改良の結果、手榴弾は両手利き対応となりました。両手利きに対応するのは、さほど優先順位が高いとは思えないことです。歩兵は訓練で体を鍛えており、安全ピンを抜く時にさほど困らないからです。それでも機会が得られれば直してしまうのです。

 米軍はこうした新兵器の開発に熱心で、日本はまるで追いついていません。既存の兵器を使いこなすことばかり考えているようです。さらには、その範疇では職人技が磨かれ、自衛官がそこで満足している印象もあります。

 米軍は使いやすい兵器の開発とマニュアルの充実により、簡単に能力の高い兵士を養成しようとします。日本人は技術を磨くことには熱心ですが、より効果的な兵器の開発には不熱心です。多分、これは戦争をする上では欠点になります。安全のための装置を含めた武器開発で、日本は数十年遅れていると感じています。

 


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