海兵隊の乾燥機事件で最終弁論

2017.11.11


 military.comによれば、ジョセフ・フェリクス2等曹長(Gunnery Sgt. Joseph Felix)はいつも権力に、さらにしばしば彼のトレードマークのファイヤーボール・ウィスキー(Fireball Whisky)に酔っていたと軍検察官は水曜日に訴えました。

 8日間の審理と数ダースの目撃者の証言の後、被告側と検察当局は、サウスカロライナ州、パリスアイランド(Parris Island)の元訓練教官、フェリクスの注目を集める事件で最終弁論を行いました。彼は訓練兵多数への嫌がらせと暴行で起訴されていますが、イスラム教徒と特定される数人に最悪で最も独創的な拷問は取り置きされています。

 木曜日の朝にはじまり、8人の軍陪審員はその他の起訴の中で、フェリクスが訓練兵にお互いの首を絞めさせた、吐くまでチョコレートミルクを飲むよう命令した、また2つの出来事において尋問型のいじめの儀式で、イスラム教徒の訓練兵を工業用乾燥機に投入したかどうかを評議します。

 しかし、最も注意をひいた嫌疑は、2016年3月のミシガン州出身のパキスタン系アメリカ人訓練兵ラヒール・シディクイ(Raheel Siddiqui)自殺を包含します。軍調査官によれば、彼はパリスアイランドの分隊棟の3階から飛び降りて死にました。

 当時、すでに乾燥機事件の疑いをかけられていたフェリクスは、彼が死ぬ数分前にシディクィをテロリストと呼び、彼を叩き、分隊棟の中を前後に走らせたと訴えられています。

 フェリクスはいつもイスラム教徒の訓練兵をテロリストと呼び、クルド人訓練兵リカン・ハウズ(Rekan Hawez)をISISと呼び、他のイスラム教徒訓練兵を、小隊の仲間が「アラー・アクバル」と叫ぶ中、偽物の斬首を行わせたと訴えられています。

 しかし、海兵隊の軍弁護士は、これらの説明は大袈裟で、矛盾し、信じがたいと主張します。

 さらに、彼らは政府の主要な目撃者マイケル・エルドリッジ軍曹(Sgt. Michael Eldridge)が、実はフェリクスが起訴された不正行為の一部に責任があると主張します。

 元訓練教官のエルドリッジ軍曹は、制限された最大の処罰で彼への低レベルの管理上の手続きとなる司法取引の一環として証言しました。

 2002年に志願した、表彰された海兵隊員のフェリクスは3件の不正行為で起訴されます。飲酒、風紀紊乱行為、職務怠慢それぞれ1件の3件、いじめの告発に関連する一般命令違反8件に直面します。

 彼の起訴状は3個小隊の異なる訓練生14人の身体への暴行と虐待の事例を列挙します。より重大な起訴で有罪判決を下されるならば、フェリクスは何年もの拘禁と軍隊からの懲罰的な除隊に直面するかもしれません。

 裁判の進行の中、起訴側はフェリクスの嫌疑がかかるいじめ活動の目撃報告をした元海兵隊訓練兵、訓練教官を含む約70人の目撃者を召喚しました。

 彼らは工業用乾燥機の専門家も召喚しました。彼はパリスアイランドの乾燥機「スピード・クィーン(Speed Queen)」は168ポンド(76.2kg)の海兵隊訓練兵を支え、回すことができると証言しました。

 政府の目撃者約7人も弁護側に召喚されたと情報筋は言いました。

 その上、弁護側は水曜日に鑑定人、イースト・カロライナ大学(East Carolina University)の火傷病理学者、カレン・ケリー博士(Dr. Karen Kelly)を一人だけ召喚しました。

 ケリー博士は、フェリクスがファイヤーボールを仲間の訓練教官と共に飲んだ後、シャワー室で身体的な「刺激的な訓練」をやらせたと主張する、元訓練兵のアミーア・ボーマシュ伍長勤務上等兵(Lance Cpl. Ameer Bourmeche)の主張について述べるよう求められました。

 ボーマシュは、それからフェリクスが彼にびしょ濡れで乾燥機に入るよう命じたと主張しました。

 フェリクスは乾燥機を3回動かし、間を置いて彼がまだイスラム教かを尋ねるために止めました。

 ケリー博士は、あるところで、30秒間乾燥機の中で回されたと主張したボーマシュの説明に一つ疑いを投げかけました。

 30秒間で乾燥機は、1秒未満で3度か4度の火傷を与えるに十分な華氏300度(摂氏148.9度)を超えて温度が上がると、彼女は言いました。

 ボーマシュは火傷の身体的な証拠がないことが明らかでした。

 しかし、乾燥機の中のより短い時間はより低温で、小さな身体的損傷となると彼女は認めました。

 「もし私が乾燥機の中にいたら、3秒間は永遠のようでしょう」と彼女は言いました。

 政府側で最終弁論を行ったジョン・ノーマン中佐(Lt. Col. John Norman)は、フェリクスを彼の指揮下にあった者たちに生き地獄を作るために権威を濫用した連続的な弱い者いじめと表現しました。

 「彼は彼らを殴り、彼らの上を歩き、首を絞め、蹴りました。彼は彼らの宗教を傷つけ、彼らを産業機械に入れました」とノーマン中佐は言いました。

 「彼はイスラム教徒を狙い、虐待するために彼らを選び出しました」。

 ノーマン中佐は、フェリクスが訓練兵の首を絞めたり、行動の失敗への処罰で小隊の仲間の首を絞めさせたりした複数の出来事を含めて、証言をした元訓練兵は互いの説明を補強したと言いました。

 ある例で、フェリクスは訓練兵約30~40人を分隊棟の小さな洗濯室に入るよう命じ、それから彼らの体の上を歩いたと、彼は言いました。

 特に心配なのは、フェリクスが訓練兵にもう一人の首を絞めさせたという説明だったと、ノーマン中佐は言いました。

 彼は他の訓練生が訓練教官の命令に十分に強く従わなかったため、側にいた三番目の訓練兵は首を絞めるのを引き継ぐために移動したことになっています。

 「このように、順序に関係なく、もう一人の訓練兵が小隊の仲間の一人の首を絞めるのに介入する文化が、この小隊で作られていました」とノーマン中佐は言いました。

 シディクィの事件では、裁判は訓練兵の死を避けました。

 シディクィが自殺しなかったと主張するシディクィの両親は海兵隊に対して、不公正な死に1億ドルの訴訟を起こしました。

 しかし、ノーマン中佐は、訓練兵が喉の痛みを訴えて起き上がり、血を吐き出していたと言ったとき、シディクィが死んだ日のフェリクスの行動は訓練兵への手当の欠如を示したと言いました。

 フェリクスはシディクィに、彼が大きな声で言えなかったとき、分隊棟の中で後ろ向きに走らせたとされます。

 シディクィが喉を押さえて床に倒れたとき、フェリクスは分隊棟の中で音が反響するほど彼の顔を叩いたと訴えられます。

 「シディクィがそれから背を向けるために反応すると、すぐに手をあげます。シディクィは叫んでいます」とノーマン中佐は言いました。

 「なぜ意識がある人物を叩くでしょうか?。フェリクスは本当に狂っていたに違いありません。シディクィは起き上がって逃げます」。

 命じられた調査によれば、彼は建物から飛び出すまで走るのを止めませんでした。

 被告のために最終弁論をした弁護士、クレイ・ブリッジス海軍中佐(Lt. Cmdr. Clay Bridges)は、フェリクスに対する訴えは頻繁に矛盾し、しばしば不合理なまでに舞い上がったと言いました。

 陪審員は、フェリクスが訓練兵にチョコレートミルクを叩き込み、それから将校が周りに立つ食堂の真ん中で履くまでエクセサイズをさせたと、どうやって信じなければいけませんか、と彼は言いました。

 フェリクスが訓練兵のライフル銃を彼の顔に叩きつけ、出血させたとされる2つの事例で、嫌疑がかかる暴行の一部は合理的な罰として説明できます。

 「予想外の身体の障害が起きたなら、訴えは刑法上の責任がありません」と彼は言いました。

 ブリッジス中佐はフェリクスがイスラム教徒を狙ったという話に賛成しなかったと言いました。

 クルド人訓練兵、ハウズはフェリクスがイスラム教徒だと気がついた後で分隊長に選ばれたと、彼は言いました。

 さらに、ボーマシュは彼の信仰について好奇心を示されただけだったと、彼は言いました。

 政府側と被告側双方は、フェリクスが不適切にほかの訓練教官と共にファイヤーボールウィスキーを飲んだことに同意しました。

 しかし、ブリッジス中佐はこの行為は判断の誤りを示すだけで、職務怠慢ではないと言い、フェリクスがシナモンの香りがする蒸留酒を嗅いだことを除いて、酔っ払った証拠はないと付け加えました。

 ブリッジス中佐は、エルドリッジは事件で弁護側で証言したにも関わらず、嫌疑がかかるボーマシュの乾燥機事件で証拠はエルドリッジが扇動者だったことを示したと言いました。

 「エルドリッジ軍曹は政府を欺きました」と彼は言いました。

 陪審団は明日、フェリクスの事件で評決を伝えることになっています。


 この裁判は過去に紹介しています(過去の記事はこちら)。また、記事を掲載する前に有罪判決が下りました。その記事も紹介する予定です。

 今年一番の注目の裁判が終了しました。

 記事から想像されるのは海兵隊の訓練も旧日本軍みたいなものに劣化しているということです。

 ブリッジス中佐はフェリクスの飲酒は大したことがないと言いますが、記者はそう感じていないようです。冒頭にウィスキーの銘柄を書いたことには意味があります。ファイヤーボールウィスキーはシナモンで味付した、普通のウィスキーよりも刺激が強い飲み物です。それを愛飲していたということは、フェリクスが深酒をするタイプだったことを連想させます。裁判にたまたま証拠が出なかったからといって、酒の事件への影響を軽視することはできません。

 エルドリッジが扇動したからフェリクスに責任がないとはいえません。いじめを止める義務があったはずです。彼らは管理者なのですから、基地内での不正行為に対する責任があります。

 宗教上の差別も問題です。日系アメリカ人が太平洋戦争中に軍務についたように、低下した自分たちの身分を向上させるために軍に入る者がいるのに、それを否定する行動は卑劣です。

 乾燥機に入れられた時間が正確なわけはありません。死ぬかもしれない状況で、時間を正確に記憶できるわけがないからです。 ケリー博士が3秒間でも永遠と同じだという証言をしていますが、それがすべてです。これは証言の不備とはいえません。乾燥機に人を入れること自体が異常な行動です。

 要するに、フェリクスは自分が置かれた立場が不満で、それを訓練兵をいじめることで解消していただけです。

 

 


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