安倍政権が南スーダンからの撤退を発表
10日の夕方、突然、政府が南スーダンに派遣している部隊を引き揚げると発表しました。
防衛省のホームページには直接の発表事項はなく、内閣官房と官邸のホームページへ声明文へのリンクがあるだけです。どうやら、完全に政治側で決定されたようで、防衛省は寝耳に水だったようです。
菅義偉官房長官の発表は以下のとおりです。
先ほど国家安全保障会議を開催をし、南スーダンPKO派遣中の自衛隊の施設部隊については、現在従事している道路整備が終わる5月末を目途に活動を終了することを決定いたしました。南スーダンへの派遣は平成24年1月の開始以来5年を超え、施設部隊の派遣としては過去最長となりました。この間、首都ジュバから各地へ通じる幹線道路の整備など大きな貢献を行ってまいりました。南スーダンの国創りが新たな段階に入ろうとしている中、自衛隊が担当するジュバでの施設整備については一定の区切りをつけることができたと判断いたしました。こうした我が国の方針については南スーダン政府や国連に事前に伝え、キール大統領からは、自衛隊のこれまでの活動を高く評価し感謝するという発言がありました。今後とも南スーダンPKO司令部への自衛隊要員の派遣は継続し、人道支援を充実するなど南スーダンの平和と発展のためにできる限りの貢献を行っていく決意であります。
国家安全保障会議というと、アメリカのそれを想像するかも知れませんが、日本のは総理大臣が議長で、官房長官、外務大臣、防衛大臣で構成されるので、要するに、政治家だけの会議です。実質的に総理がボスなので、ボスの意向に法的な裏付けを与えるための会議です。10日の会議については、まだホームページが更新されていませんが、過去の会議では四大臣がメンバーの場合がほとんどなので、10日も同じでしょう(関連ホームページはこちら)
毎日新聞によると「安倍晋三首相は『南スーダンの国造りが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当している施設整備は一定の区切りを付けることができると判断した』と記者団に説明。」 とのこと。菅官房長官は「5年という節目を見据えて昨年9月ごろから検討してきた」とのこと。しかし、これは信じられません。
自衛隊から撤退について驚きの声があがっていることがその理由です。自衛隊の活動に一定の区切りがつけられるというのなら、事前に撤退について自衛隊に知らせ、その準備が進められていたはずだからです。ところが、自衛隊は突然の決定に驚いています。
11月に派遣された第11次隊の任期を延長し、第12次隊の訓練を打ち切るという、通常にないやり方での撤退であることは、これが政治家の都合による撤退であることが透けて見えます。戦時中で戦況の変化により計画が急に変更されたというのならともかくも、平時の国際平和協力活動で、こういうやり方は不自然です。昨年9月から検討してきたのなら、もっと計画的な撤退があったはずです。
要するに、安倍総理の神経が、森友学園の問題も相まって、耐えきれなくなったのが理由と考えられます。ただでさえ、国民に納得がいく説明ができない森友学園の問題があり、このために安倍政権の支持率は急落しました。この上、万一、南スーダンで自衛隊に死傷者が出たことを考えると、政権維持が危ないと考えたのでしょう。この問題を引きずったまま、週末を過ごすことができないという気持ちになったのでしょう。金曜日の18時という、官庁の業務が終わった異例の時刻に発表し、重荷を下ろすことにしたのです。
つまり、主体的で客観的な軍事的考察の結果ではなく、政権の人気を考えてのことでしかありません。
「南スーダンの国創りが新たな段階に入ろうとしている中」という言葉は、現地の情勢を知る者には失笑ものです。つい最近、反対勢力は国家的対話に参加しないと発表したばかりです。反対勢力はあくまで南スーダン政府と武力闘争を続けると言っています。それが本当の「新たな段階」です。官房長官の言葉は、南スーダンが国創りが順調に進んでいるかのような錯覚を起こさせます。要するに、政府にとって、南スーダンの復興などどうでもよく、眼中にないのです。
これが日本の国際支援の実態です。支援する国のことも、派遣する自衛隊部隊のことも、政府にとってはどうでもよいのです。
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