カール・ビンソンは朝鮮水域になし

2017.4.19


 military.comによれば、北朝鮮は先週、空母カール・ビンソン(the Carl Vinson)による半島沖の力の誇示を非難して、沢山の辛らつな言葉を浪費しました。空母はインド洋で数千マイル離れていました。

 トランプ政権と米太平洋司令部指揮官のハリー・ハリス提督(Adm. Harry Harris)は先週、空母とその支援艦のオーストラリアでの寄港キャンセルして、戦闘群は北朝鮮のミサイルと核実験に対して警戒するために日本海に向かっていると主張しました。

 空母の居場所に関する極東とアメリカの報道記事の見出しは早計だったことが証明されました。

 火曜日、「DefenseNews」は土曜日に撮影された、日本海から3,500マイル離れたインドネシア沖の原子力空母を示す海軍の写真に気がつきました。

 4日前、ホワイトハウスのショーン・スペイサー報道官(Sean Spicer)は、日本海でカール・ビンソンが導くアメリカの大艦隊の抑止任務を説明していました。

 ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)は「我々は(朝鮮半島地域に)大艦隊を送っているところだ」といいました。

 海軍が確認した写真は、カール・ビンソンが朝鮮半島の水域へ北上するのではなく、ジャワ島とスマトラ島の間にあるスンダ海峡(the Sunda Strait)を通過して南へ向かうのを示しました。

 先週の声明で、北朝鮮はカール・ビンソンについて、「これは朝鮮人民共和国を侵略しようとするアメリカの無謀な動きを証明します」といいました。「もし、アメリカがあえて先制攻撃と司令部の排除を求めて軍事行動を選ぶなら、人民共和国はアメリカが求める戦争のいかなる方法にも対応する準備があります」と声明はいいました。

 しかし、カール・ビンソンとその戦闘群は本当はいま、日本海へ向かっていると国防総省当局者はいいました。

 ジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Mattis)はサウジアラビアに向かう飛行機の中で記者に対して、カール・ビンソンは来週のいつか到着するだろうといいました。

 先週火曜日の国防総省での記者会見で、マティス長官は、それが我々がこの時に空母を持つことが最も賢明であると思ったところなので、カール・ビンソンがすでにその途上にあるといいました。

 マティス長官は記者に北朝鮮からのもう一つの挑発の兆しが残っているといいました。

 彼は平壌での大規模な軍事パレードの翌日、日曜日の北朝鮮の失敗したミサイル発射は北朝鮮の指導者、金正恩の意図の明白な合図だといいました。

 「(米韓同盟と国際社会の決意を試して)北朝鮮の指導者は再び、ミサイルを発射することで無謀にも何かを引き起こそうとしました」と長官は言いました。


 常識的に考えると、2個空母打撃群を朝鮮半島に派遣するのなら、半島の西側と東側にそれぞれ1個空母打撃群を配置すると考えるものです。そうしていると思っていましたが、まったく違う展開になっているようです。

 まず、スンダ海峡がどこにあるのかを確認しましょう。赤い矢印がカール・ビンソンが土曜日にいた位置です。

図は右クリックで拡大できます。

 カール・ビンソンはこのあと、フィリピン東岸沖を通過すると思われます。南シナ海を通るのは中国を刺激します。ここでは中国の協力も欲しいので、そこは気を遣うでしょう。だから、空母が現地に入るのには普通よりももっと時間がかかります。

 派遣されるもう一隻の空母、ロナルド・レーガンは未だに横須賀港にいます。これ、なぜマスコミが報じないのか分かりませんが、この空母には来日したマイケル・ペンス副大統領が訪問したばかりです。神奈川県のホームページを見ても、ロナルド・レーガンは平成28年11月21日に寄港してから出港していないことが分かります。(該当ページはこちら

 なので、ロナルド・レーガンはカール・ビンソンが北上するのに合わせて出港し、それから両打撃群は朝鮮半島に向かうということになります。

 先週の土曜日に弾道ミサイルが降ってくると騒いだマスコミ、それを裏打ちするかのような動きを見せた日本政府は一体どこを見ていたのかということになります。

 アメリカが北朝鮮へ圧力をかけるのはこれからです。2個空母打撃群で朝鮮半島周辺の公海上を動き回り、北朝鮮軍を威圧します。哨戒機や戦闘機を飛ばし、我が物顔に動き回って見せます。領空の近くまで行って、北朝鮮の戦闘機にスクランブルをかけさせるかも知れません。

 こうしている間、北朝鮮はミサイルの発射実験や核実験を控えるかも知れません。その辺をアメリカとしては確認したいのでしょう。

 CNNがこうなったのは連絡ミスかも知れないとの記事を報じていますが、マティス長官の発言からも、最初からの計画だったことが分かります。また、空母の位置を米軍が正確に把握していないとは考えられず、連絡ミスだったとは思えません。

 空母の派遣は来週以降ですが、北朝鮮で太陽節の記念行事があるので、それに最大の影響を与えるべく、すぐに派遣するような発表をしたのでしょう。切迫している核実験も延期させられる可能性を考えたのでしょう。

 というわけで、本格的な緊張はこれからということになります。それにしても、先週末は偽の危機が見事に演出されたものです。

 

 


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