カール・ビンソンがフィリピン海を航行中

2017.4.24


 米空母カール・ビンソンのフェイスブックによると、4月23日、同空母打撃群はフィリピン海で海上自衛隊との洋上相互演習を開始しました。

 ニミッツ級空母カール・ビンソン(CVN 70)、タイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦レイク・シャンプレイン(CG 57)、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦マイケル・マーフィー(DDG-112)は、サンディエゴに拠点を置く打撃群が西太平洋で北上を続ける中、日本の佐世保を出た海上自衛隊の護衛艦さみだれ(DD-106)とあしがら(DDG-178)と合流しました。

 定期演習は統合化された洋上の対応と防御能力を向上し、統合された機動の練度を向上し、要請されたときにこの地域を守る準備を維持することを確実にします。

 「我々は日本のパートナーを共に活動するために常に先を見ています」と、第一空母打撃群の指揮官ジム・キルビー少将(Rear Adm. Jim Kilby)はいいました。

 「海上自衛隊とアメリカの関係はかつてなくよく、それはこうした相互演習のおかげでもあります」。カール・ビンソン打撃群は、今年初期から、最近では3月に、海上自衛隊と過去3回の相互演習を行っています。

 米海軍はこのような相互・多国間演習を、海上自衛隊と年を通じて西太平洋での活動と共に定期的に行っています。

 サンディエゴを出発した第一空母打撃群は西太平洋へ1月5日に派遣され、カール・ビンソン、第2空母航空団、レイク・シャンプレインと、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦マイケル・マーフィーとウェイン・E・マイヤー(Wayne E. Meyer)で構成される第一駆逐艦隊(CDS)から成ります。


 4月15日には、北朝鮮と戦争になると騒いだ人もいましたが、カール・ビンソンは未だに臨戦態勢にはありません。フェイスブックで情報を流しているのが、その証拠です。臨戦態勢になれば、こうした外向けの情報は止めます。

 この記事から分かるのは、予想通りに空母打撃群がフィリピン海へ抜け、南シナ海を避けたことです。あれほど南シナ海問題を取り上げていたマスコミが、このアメリカの中国への配慮を取り上げないのが不思議です。急行するのなら、南シナ海を通るしかないのに、あえて貨物船もつかう遠回りの航路を選んだ意図を考えなければなりません。アメリカは中国に北朝鮮の動きを止めるよう求めています。だから、今回は南シナ海を避けたのです。

図は右クリックで拡大できます。

 海上自衛隊との相互演習は予定されたものでした。急ぐのなら、定期的な訓練は中止したでしょう。NHKニュースによれば、さみだれとあしがらが佐世保港を出港したのは21日朝です。

 米マスコミの中にある、ホワイトハウスと米軍の連絡ミスでカール・ビンソンの到着が遅れたとの見解は間違いと思われます。単に公報が未熟で、適切な表現を用いなかったのが原因でしょう。トランプ大統領が先走ったコメントを出したのも誤解を増しました。

 これまでの動きを見ると、アメリカはあまり大きな動きは考えていないように見えます。

 もし、強烈なメッセージを北朝鮮に送るのなら、核実験場に巡航ミサイル攻撃を行い、坑道の出入口を塞ぐという選択肢があります。地中貫徹爆弾を使えば、もっと確実に破壊できますが、それには北朝鮮領空内に航空機を送る必要があります。これは北朝鮮を刺激しすぎます。この攻撃には、軍事施設ではない核実験場を破壊して、核開発を阻止できる。民間人への犠牲が小さいか皆無と期待できるという利点があります。しかし、それでも北朝鮮が強く反発して、韓国領内へかつて行われたような榴弾砲やロケット砲の斉射が行われるかも知れません。そうすると、韓国人に被害が出て、批判はトランプ政権へ向かうでしょう。

 金正恩にとって、核兵器は切り札です。通常兵器ではかなわないので、核兵器を持って、攻められた場合に切り札として使うのです。大きな被害を受けると分かれば、敵は攻めてこないと考えています。その切り札をつかむ手段を破壊した時、金正恩がどういう行動に出るかは選択肢がいくつもあって、何とも分かりません。

 こういう場合、あまり強い圧力を加えることは得策でないと、トランプ政権は考えているかも知れません。

 

 


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