巡航ミサイル攻撃の詳細

2017.4.7


 今朝、紹介したmilitary.comの記事が更新され、内容が一新されていましたので、もう一度紹介します。

 ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)の命令により、地中海東部の海軍駆逐艦2隻が、米情報機関が今週早くの命を奪った化学兵器攻撃の源泉としてあげたシリアの飛行場へトマホーク巡航ミサイルの一斉射撃を行いました。

 駆逐艦ロス(Ross)とポーター(Porter)は共に、現地時間の金曜日午前4時40分頃、それぞれ1,000ポンドの通常弾頭を持ち、約100万ドルの費用がかかるBGM-109トマホークミサイル59発をダマスカスの北にあるシャイラト基地(Shayrat)へ発射しました。

 攻撃は素早く、2分間続いただけでした。

 「意図は政権が再びこれを行うことを阻止するためでした」とジェフ・デイビス海軍大佐(Navy Capt. Jeff Davis)はいい、シリアイのドリブ州(Idlib)、ハーン・シャイフン(Khan Sheikhoun・kmzファイルはこちら)に対する火曜日のシリア空軍機による神経ガス攻撃疑惑について言及しました。

 人権団体と支援グループは、シリアのバシャル・アル・アサド大統領(President Bashar al-Assad)が命じたと疑われる攻撃で、70人以上が殺され、数百人が負傷したと告発しました。

 サリンガス攻撃と疑われる写真とビデオ映像がソーシャルメディア上に出回りました。

 シャイラト空軍基地はアメリカの攻撃の目標となったとデイビス大佐はいいました。「これは2013年より前に主要な化学兵器の貯蔵施設の一つだった場所です。こういう施設の多くは彼らが命令に応じようとした時に解体されましたが、彼らは明らかに再びそれを使っていました」。

 巡航ミサイルの攻撃はロシアが支援しているアサド政権に対する米軍の最初の軍事行動となりました。

 「アサドは無力な男性、女性、子供の息の根を止めました。神の子は決してそうした恐怖を苦しんではいけません」とトランプは声明でいいました。「今夜、私はシリアで化学兵器攻撃が開始された場所へ目標を絞った軍事攻撃を命じました。命を奪う化学兵器を防止し、抑止するために不可欠なアメリカの国家安全保障の利益においてです」。

 大統領は、アサドの振る舞いを変える数年間の試みがすべて劇的にすべて失敗し、アメリカには選択の余地がなかったと付け加えました。

 デイビスはシャイラト飛行場のロシア人の要員は攻撃が午後8時40分(東部時間)に始まって、数分間だけ続いた前に数回警告を受けたといいました。

 巡航ミサイルの一斉射撃はロシア人要員が置かれた地域を避けるようにも狙ったと彼はいいました。

 ミサイルが打ち上げられる前に、航空事故を避けるために米軍とラタキア(Latakia)のロシア国防省とで設置した通信チャンネルを通じて「ロシア人と複数の会話がありました」とデイビス大佐はいいました。

 モスクワとの直接の接触はありませんでしたと、彼はいいました。

 トマホーク地上攻撃ミサイル(TLAM)はシリアの航空機、地下シェルター、燃料、補給集積所、弾薬庫の掩蔽壕、防空レーダーを狙ったと、デイビスはいいました。

 詳細な爆弾損害評価が進行中ですが、報道官は初期の見積もりは攻撃がシリアの航空機に深刻な損害を与えたということだといいました。

 デイビス大佐は攻撃によるシリア人やロシア人の犠牲者に関する見積もりを提供しませんでしたが、照準は要員を避けようとして、ロシア人は攻撃で殺されなかったと信じられているといいました。

 ロシア兵は過去にここで勤務したと報じられています。

 報道官はシャイラト飛行場が化学兵器攻撃の源泉だと決定するためにアメリカが用いた偵察技術を開示することは拒否しましたが、彼は米情報機関は命を奪った化学剤を含む弾薬を投下したシリア軍機を追跡し、ソ連時代の戦闘爆撃機スホーイ22「フィッター」だと考えられるといいました。


 記事の前半を紹介しました。後半にはこれまでの経緯などが載っています。

 シンシャルの弾薬庫が記事から消えたので、トマホークミサイル59発すべてがシャイラト基地に向けられたというのが本当のようです。

 弾頭も通常の爆薬だったとのこと。1,000ポンド(約453.5kg)の爆薬を積んでいます。これを59発、一つの基地に集中したということは、かなりの損害があったはずです。基地はしばらくは使えないでしょう。

 攻撃は集中して用いる原則を活用したものと考えられます。作戦のやり方としては適切です。化学兵器攻撃の源泉となっている基地を完全に破壊しないと、シリア軍はまた攻撃を行うでしょう。それでは何の警告にもなりません。

 シリアは2013年に化学兵器すべてを外国の監視の下で廃棄したはずでした。これは記事にも書かれています。いつの間にか、また生産を始めていたことになります。なので、今回の攻撃は警告としては必要だったといえます。バラク・オバマが大統領でも、今回の攻撃はやったでしょう。

 間違いなく、この基地から化学兵器攻撃が行われたのかは、NATO軍は長らく、シリアの空域で活動していますから、各国の空軍機のレーダーによる観測があったと考えられます。化学兵器攻撃があった時刻にシンシャル基地から飛来した航空機が被害を受けた地域の上空にいたのでしょう。

 政治的には、ロシアとシリアがすでにアメリカを非難しています。今後、長く尾をひくのは当然です。アメリカもそこは折り込み済みです。

 なお、人権団体はシリア軍兵士4人がこの空爆で死んだと発表しています(関連記事はこちら)。

 この数字は北朝鮮のミサイル問題を考える上でも参考になります。北朝鮮のミサイルが搭載できる弾薬は1トン前後でしょう。トマホークよりは協力ですが、命中精度はトマホークの比ではないのでばらつきます。航空機の速度で飛ぶトマホークは建物を指定して命中させられますが、音速で飛ぶ弾道ミサイルは数百〜数キロの範囲に落ちます。

 つまり、通常兵器なら相当な数を打ち込まないと、日本へ損害は与えられないということになります。韓国に向ける分を考えると、この数はもっと増えます。しかし、核兵器を完成させた途端、核基地へは1発を撃てばよいことになり、話はまったく変わります。

 こういう議論が日本政府内から聞こえないのが本当に不思議です。

 

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.