専門家、元海軍軍人がイージス艦の責任を主張
ニューヨーク・タイムズ紙もイージス艦とコンテナ船の衝突事故について書き、イージス艦の責任を主張しました。以下はその全訳です。
海の上の謎 なぜ米駆逐艦は貨物船を避けられなかったのか
駆逐艦フィッツジェラルドの左舷、右舷と船尾に当直の見張り台があって、下士卒が水平線を双眼鏡で監視し、ヘッドセットで駆逐艦の艦橋に報告していたはずです。前の土曜日午前1時30分、東京の南にある日本沖合で、彼らは1,000個以上のコンテナを積んだ730フィートの貨物船、ACXクリスタル(ACX Crystal)が接近したとき、見損なうはずはありませんでした。
艦橋と下の戦闘情報センター両方で活動しているレーダー士官は、貨物船のイメージがスクリーンの上で着実に近づくのを描くのを見つけなければなりませんでした。そして、標準的な手順により、フィッツジェラルドの艦長、ブライス・ベンソン中佐(Cmdr. Bryce Benson)が、船が互いに近くに来るずっとまえに、安全な通過を確保するために、起こされて、艦橋に呼び出されなければなりませんでした。
しかし、そのどれもが起こりませんでした。好天の中、混雑していたとしても、慣れ親しんだ海を通ったフィッツジェラルドの定期航海は、数年の中で最も致命的な海軍事故で終わりました。下士卒7人が命を失いました。
調査官は多くのベテラン船乗りが理解できない衝突と言うものを解き明かそうとします。それらには解き明かされるには多くのミステリーがあります。駆逐艦の乗員への尋問だけでなく、船舶追跡サイトに記録された事故後のクリスタルの奇妙なコースがあります。それは、船が衝突したとき、誰もが寝ていたか、少なくとも周囲で起きていることを知らなかった可能性を浮上させます。
エンジンを止めるよりも、損害を評価して、支援する方法を探すよりも、船の乗員が突然何が起きたかに気づいたかのように、突然Uターンを行って衝突現場へ戻る前に、クリスタルは素早く元のコースに復帰して、1時間半の東京港へ向けて疾走します。
調査官たちは先週、損害を調査し、航海記録を評価し、クリスタルの「ブラックボックス」である電子記録を回収し、フィッツジェラルドのレーダーのデータをと乗員の尋問を記録しました。誰も負傷しなかった2012年の別の駆逐艦ポーター(Porter)と石油タンカーの衝突の悲惨なテープのように、駆逐艦の艦橋から音声記録もなされなければなりません。
彼らがその夜に見たものは話してはならないという厳しい命令の下で、フィッツジェラルドの乗員は自分の考えを他人に明かさない一方で、船員仲間の損失を悲しんでいます。しかし、ある下士卒はソーシャルメディア経由で接触し、事故の碑文となり得るものを提供しています。
「私が言うことのすべては」と下士卒はニューヨーク・タイムズ紙に書きました。「誰かさんが注意を払ってなかったということです」。
金曜日、経験豊富な戦艦の指揮官、ブライアン・フォート海軍少将(Rear Adm. Brian Fort)は海軍の主要な衝突調査を指揮するよう命じられました。現在進行中の複数の調査(海軍による2件、合衆国沿岸警備隊による1件、日本海上保安庁とクリスタルの保険業者によるその他の調査)はおそらく、答えを提供するでしょう。しかし、クリスタルの乗員が寝ていたとしても、海軍の退役軍人たちはずっと機動性が高いフィッツジェラルドが責任の多くを負うといいます。
「これは海軍が残酷なまでに正直になる類のことです」と2004年から2006年まで大西洋で駆逐艦を指揮した、ブライアン・マクグラース(Bryan McGrath)は言いました。「フィッツジェラルドが何か間違ったことをしたという点では、我々はそれについてすべてを見つけて、結論が出るでしょう」。
2隻の船はいま、東京の南岸で少し離れて港の中にいます。 9,000トンで15億ドルのフィッツジェラルドは母港の横須賀海軍基地に、29,000トンのクリスタルは横浜です。
フィッツジェラルドにはへこんだ右舷側の部分があります。そこはクリスタルが直接ベンソン中佐の居室にぶつかり、引き裂いて開き、彼を負傷させた場所です。下士卒は彼を自由にして、彼を艦の中に入れるために居室のドアを曲げなければならなかったと、「合衆国海軍協会ニュース(the United States Naval Institute News)」は報じました。吃水線の下では、コンテナ船の広がったバウも駆逐艦の船殻を長く深く引き裂いたと、当局者は言いました。
海水が流れ込んだとき、116人の乗員は浸水した寝室2ヶ所で眠っていました。艦の無線室は損害を受け、通信装置の大半は破壊されたか、電力を失いました。下士卒たちは救難要請を出す前に1時間浸水と戦ったと、協会は言いました。
7人の男たちの死体が、艦が沈没しないようにするために閉鎖された浸水した場所から、ダイバーによって回収されました。衝突の混乱した余波の中の将校による苦渋の決断でした。
フィッツジェラルドが衝突に接近している警告がほとんどなかった多くの兆候があります。艦長が居室にいて、全艦警報が寝台から下士卒を引っ張り出していなかった事実。「どれだけの警告があったかについては、私は知りません」と第7艦隊指揮官、ジョセフ・オークイン中将(Vice Adm. Joseph Aucoin)は日曜日に記者会見で言いました。「それは調査の間に見出すことになっています」。
クリスタル船上で何が起きたかは少し知られています。船は日本の中部沿岸の名古屋から東京へ貨物を運ぶために日本企業によってチャーターされていました。フィリピン人の乗員が配置され、フィッツジェラルドよりも遥かに損害を受けませんでした。水曜日の午後、船の前面に大きな青い防水布が吊るされ、大きな引っかき傷が左舷側に見え、バウの部分はつぶされていました。
クリスタルを所有する大日インベスト株式会社の広報、ダレル・ウィルソン(Darrell Wilson)は、同社がU.S.S.フィッツジェラルド上で悲劇的に命を失った人たちの家族と友人に衷心からの哀悼を示すことを望みます、と言いました。彼は衝突したときにコンテナ船のパイロット・ハウスで誰かが目覚めていたかについて、コメントしませんでした。
船舶追跡についてジェーンズ・インテリジェンス(Janes Intelligence )に書いた情報技術セキュリティのコンサルタント、ステファン・ワトキンズ(Steffan Watkins)は、船舶自動識別装置から記録されたクリスタルの航跡は、自動化された航路に似ていると言いました。乗員が何がいま起きたのかを調査できるようにするために停止するかわりに、船はコースを調整し、東京へ向けて加速を続けた、と彼は言いました。
「コンピュータが操縦していたのに非常によく似ているようにみえます」と彼は言いました。
しかし、30分以上あと、クリスタルがコースを反転して、事故現場に戻った事実は、艦長や乗員が自動操縦から船のコントロールを得たことを示すと、ワトキンスは言いました。「衝突の場所に戻るために彼らは55分を必要として、それが彼らが日本海上保安庁に連絡したときです」と彼は言いました。
調査官がワトキンス氏の情報に基づく推測を確認するかどうかはこれからのことです。しかし、活発なオンラインでの議論に参加した何人かの海軍退役軍人は、クリスタルの乗員が最大限に注意散漫だったとしても、フィッツジェラルドがその航路を避けるのに失敗したことを正当化したり、説明することはできないと言いました。
「恐ろしく見えます」と、ニュージャージー州の技術会社を所有し、海軍艦サンディエゴ(San Diego)で勤務し、多くの注意を引いた事故に関するYouTubeのコメントを投稿したゲーリー・E・メイヤー(Gary E. Meyer)は言いました、「見張り台3ヶ所を持ち、レーダーを動かしています」とメイヤー氏は言いました。「艦は間違いなく加速して、機動できます。それは彼らが衝突しないことを意味しませんが、回避しないことに対しては責任があります」。
海軍で22年を過ごし、何度も夜間に当直将校として艦を担当したウィスコンシン州スパルタ(Sparta)のスティーブン・M・モラウィック(Steven M. Morawiec)は、艦長を呼び出さなかったことは理解できないと言いました。
「私の艦では、別の船が4,000ヤード(約3.7km)以内に入ると予測されるなら、隣に艦長がいなければなりませんでした」と彼は言いました。「しなければいけないときに艦長を起こせなければ、おしまいでした」。
フィッツジェラルド上で死んだ人たちの家族は彼らの損失を説明できることすべてを待望しています。遺体は現在、アメリカ国内にあり、海軍は検死を行って、計画することが難しい葬儀をあげるところだと、テキサス州ウェスラコ(Weslaco)出身の26歳のノエ・エルナンデス(Noe Hernandez)の従兄弟、アリ・エルナンデス・シンジャー(Aly Hernandez-Singer)は言いました。当惑した親族たちは、噂を信じているところです。
「彼らが言っているものについて、何かが間違っています」と、死者の一人でオハイオ州エリリア(Elyria)出身で37歳のゲーリー・レーム・ジュニア1等火器管制士(Fire Controlman First Class Gary Rehm Jr.)の叔父、スタンリー・レーム(Stanley Rehm)は言いました。彼の他者を助けようとする英雄的努力は、駆逐艦に彼の名前を名付けさせるオンライン署名を起こさせました。「我々はこの真相を究明させます」。
一層、フィッツジェラルドの責任が重いことが明らかになったといえます。
調査報告書を待つ必要はありません。すでにわかっている情報だけでも、イージス艦側に非があったことは疑えません。
この記事から新しくわかったことは以下のとおりです。
- ACXクリスタルは衝突時、自動操縦だった可能性がある
- フィッツジェラルドの艦長が艦橋にいなかったことは、同艦がクリスタルに気がついていなかったことを示唆する
なお、バスバスバウとは下の写真のように、艦首の吃水線の下にある半球状の突起です。波の抵抗を減らすための装置です。
ACXクリスタルにも同様の装置があり、これがフィッツジェラルドの右舷吃水線の下に衝突し、穴を開けたのです。ドックに入ったACXクリスタルの写真を見ると、先端部分に塗装が剥げた部分があり、横に擦ったような跡もあります。
再びACXクリスタルの航跡を示します。青い矢印が衝突が起きたと思われる場所です。赤い矢印は最後に針路を変えた場所で、その後、針路はほぼ一定でした。
ただ、衝突時に自動操縦だったかどうかは疑問もあります。船は大きく舵を切っていて、これが自動操縦がイージス艦を避けようとしたためなのかどうかがよく分かりません。船に搭載していた自動操縦装置がどんなものか分かりませんので、乗員が衝突後に、イージス艦から離れるために舵を切った可能性もあります。
コンテナ船は貨物を満載していて、前方はほとんど見えなかったでしょう。重量比も大きいので、ぶつかったときに振動が感じられたかどうかも疑問です。このため、コンテナ船の乗員が衝突を確信するのに時間がかかった可能性もあります。この場合、衝突で針路が変わり、自動操縦装置がまた針路を戻したのかもしれません。
ACXクリスタルは衝突後に加速していますが、乗員なら加速せず、できるだけ早くに衝突現場に戻ろうとした可能性はあります。
私も当初から、フィッツジェラルドがコンテナ船に気がついていなかった可能性を指摘しています。艦長が居室で寝ていた事実。乗員の大半も寝ていたことから、緊急事態が起きているとの認識が艦内になかったとの推測は正当です。
これらを考えれば、日本政府は米政府に、もっと強い立場に出て、地位協定があろうと、海上保安庁の調査に協力するよう要求してもよいと考えます。いまの対米追従は異常事態といえます。
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