北朝鮮が火星14号の打ち上げに成功

2017.7.5


 ワシントン・ポスト紙の記事から、4日に北朝鮮が打ち上げた火星14号を考えます。

 米国防総省の初期評価は、北朝鮮が方峴飛行場(Panghyon)の発射地点から直線で600マイル(966km)に近い日本海に落ちた地上配備型中距離ミサイルを試験したということでした。しかし、政府と独立したアナリストは、ミサイルが地表上垂直に1,740マイル(2,800km)に達する急勾配の弧を描き移動したと説明しました。

 元政府当局者と独立したアナリストによれば、より典型的な弾道で飛んだ場合、ミサイルは容易に4,000マイル(6,437km)移動し、潜在的にアラスカ全部を射程に収めます。射程3,400マイルを越えるミサイルは大陸間弾道ミサイル、ICBMに分類されます。

 「憂慮する科学者同盟(the Union of Concerned Scientists)」のデビッド・ライト(David Wright)は、公表された分析の中で、月曜日に公表された事前の見積もりに基づくと、火星14号は直線で4,000マイルを越える能力を示したと計算しました。

 「この射程は48州とハワイの大きな島に届くには不十分ですが、アラスカ州全部には届きます」とライトは言いました。

 北朝鮮は本物のICBMを開発する何年もの探求のスケジュールの十分前に達成したようです。月曜日に試験された火星14号は米本土には届かないとアナリストは言い、北朝鮮が長距離ミサイルに搭載できるよう小型化した核弾頭を製造できる日付をつける証拠はありません。


 読んでみると、既知の事柄が多いので、一部を紹介しました。

 火星14号については、前回の打ち上げでいわれた、エンジンの設計がロシアのコピーではなく、北朝鮮の独自開発だとされたことが指摘されているのみです。

 ロフト軌道は日本領域にミサイルを入れないためです。テポドン1号が日本上空を通過して以来、日本社会が大騒ぎするのと、常時破壊命令が出されたことが影響していると思われます。常時破壊命令は領空に入らない限りは撃たない政府方針ですが、北朝鮮としては高額の費用がかかる実験を迎撃で邪魔されたくないでしょう。排他的経済水域での迎撃は政府内で検討中です。もっとも、22kmしかない領空で迎撃できるかは、正しい判断かは非常に疑問です。

 今回の実験では、弾頭の切り離しも確認されていないようです。弾頭分離はロフト軌道で試しても、あまり意味がないとの意向かもしれませんが、弾頭の再突入技術が未完だと見ることもできます。

 トランプ大統領は中国頼みですが、中国があてにならないのは、周知の事実です。このまま進むと、北朝鮮は日本、韓国、アメリカを攻撃する能力を身につけます。

 間違ってはならないのは、北朝鮮が好んで核兵器を使うつもりはないということです。金正恩にとっては、自分の支配体制を続けるために切り札を持ち、自国民が背かないようにするという大きな目的があるのです。彼は彼なりに必死だということです。

 そろそろ、そういう時代に北朝鮮とどう付き合うかを考える必要もあります。北朝鮮もむやみに核による恫喝を行うことはできません。我々も単純に北朝鮮を攻撃することはできません。この安心が、逆に何かのチャンスにつながる可能性もあります。そういう余地を逃さないことが大事です。

 なお、発射地点はアルディン・アバゾビック氏(Aldin Abazović)の写真分析によれば、方峴飛行場から6.8km南東です。座標は「39.872153, 125.269192」。工場の敷地内ですね。

図は右クリックで拡大できます。

 

 

 


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