ジョン・S・マケインが航路を横断か
gcaptain.comが、石油タンカー、アルニックMC(Alnic MC)と米誘導ミサイル駆逐艦、USSジョン・S・マケイン(USS John S. McCain)の衝突時のAIS(自動船舶識別装置)のデータを示しました。
AISデータとビデオ映像はVesseleFinderが提供します。
ビデオ映像では、タンカーが突然左ターンした時に(0:50から)、シンガポールの最東端の分離通航方式に接近してきたのが見えます。これは衝突の結果と推定できます。
シンガポールの海事港湾委員会は、衝突がシンガポールの領海内で起こり、シンガポール海峡での輸送は影響を受けなかったと言いました。
米海軍は衝突が、マケインが定期的な寄港のためにシンガポールへ通過していた時、マラッカ海峡とシンガポールの東で、日本標準時間の午前6時24分(訳注 シンガポール時刻午前5時24分)に起きたと言いました。これはAISのアニメーションに一致します。
駆逐艦は左舷船尾に大きな損傷を受けました。
アテネに拠点を置く企業「Stealth Maritime Corporation」は、同社が管理するタンカー、アルニックMC(Alnic MC)が、事故時に部分的な積み荷、燃料12,000メガトンを乗せて、台湾の麦寮郷(Mai Liao)からシンガポールへ通過中に衝突に関与したことを認めました。
同社はアルニックMCが喫水線上の右舷に深い傷を受けたと言いました。
同社は乗員に怪我はなく、汚染はないと言いました。
キャプチャー画面は、衝突が起こったらしい時刻のアルニックMCの位置を示します。
タンカーの損傷が右舷のバウに、駆逐艦の損傷が左舷艦尾だったことを心に留めてください。
残念ながら、政府と軍の艦船は一般的にAISデータを送らず、我々はジョン・S・マケインの航跡を持ちません。
アルニックMCは現在、点検のためにシンガポール東方の停泊地に停泊しています。
シンガポール海峡は105キロ長、16キロ幅で、世界で最も混雑する輸送航路の一つです。
ウェブサイトのVesselsValue.comによれば、衝突時頃にシンガポール海峡で50,000トンを超える、約268隻の貨物船(アルニックMCと同じ型で大きさ)がいました。
衝突は米海軍、シンガポール海事港湾委員会、シンガポール輸送安全調査局により調査中です。
アルニックMCは総トン数30,000トン、183メートルの石油化学タンカーです。
この船はリベリア船籍です。
事故現場はマラッカ海峡の外ではあるものの、狭い海峡の安全のために設定された交通路、分離通航方式に近い場所でした。
記事の下の方に、マラッカ海峡の分離通航方式の図が載っています交通路に入るために、各船が並び、一方向(海峡に向けて)に航行していました。
駆逐艦はその船の群へ北から南へ向けて横切ろうとしたようです。流れに逆らった動きであり、この判断自体に問題があります。
こういうコースを選ぶ場合、左舷方向から船が向かってきます。その向こうは、シンガポールを離れる船の航路があるので、今度は右舷方向から船が向かってきます。船が来る方向の警戒は、特に密にしないといけないのです。
事故の時刻は夜明けの少し前でした。視界が限られた時間帯ですかりさらに注意が必要でした。レーダーと目視による監視を強化する必要があります。
衝突時、アルニックMCの周囲には、他に三隻の船がいました。アルニックMCはその三角形の中心にあり、駆逐艦はこれら三隻の船と衝突する可能性もありました。
サイバー攻撃で駆逐艦のGPSが狂わされたという意見があるようですが、信じることはできません。レーダーもあり、見張りもいたのですが、巨大タンカーを見つけられないはずはありません。
航路を横断しようとした理由。左右への注意が足りなかった理由が明らかにされる必要があります。
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