手詰まりに陥った米朝交渉
military.comによれば、アメリカのドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)と北朝鮮の指導者、金正恩(Kim Jong-un)がシンガポールで会談してからほぼ半年が経ち、にわかになされた外交活動にも関わらず、朝鮮半島の非核化は明白な進展はわずかしかありません。
特に、北朝鮮は核兵器を諦めるつもりはなさそうです。そうであれば、トランプ政権の第一に主要な外交政策イニシアチブは最大の失敗になるでしょう。
トランプ・金サミットが出したシンガポール宣言は詳細が希薄でした。400字の書面はアメリカは平壌が朝鮮半島の非核化の見返りに北朝鮮の関係を正常化すると宣言しました。書面はタイムラインだけでなく、その目標を達成するためにどんな具体的ステップを履行するかをいいませんでした。
その後、北朝鮮は正常化・非核化のプロセスは相互のステップでなされなければならないと示唆しました。しかし、マイク・ポンペオ国務長官(Secretary of State Mike Pompeo)は「完全で、検証可能で、不可逆的な非核化」は二カ国の関係正常化と国連が付託した経済制裁を解く必要条件とのトランプ政権の立場を繰り返していいました。
米朝交渉を理解するための枠組み
シンガポール・サミットに引き続いて、トランプ政権は平壌は経済開発と財政支援の見返りに核兵器を諦めるだろうと主張しました。トランプは北朝鮮でのピーチ・マンション建設と投資、貿易、ツアーリズム開発を解放するみ見込みすら考えました。しかし、経済開発がこれまでに平壌政府の最も重要な目標であった証拠はありません。
北朝鮮政府は国民を無慈悲に搾取して、奴隷労働の輸出、密輸、サイバー犯罪、拳銃の密輸活動、麻薬、偽造といった広範な犯罪活動を行うことで力を維持する超国家的な犯罪組織です。西欧の情報機関はこれらの活動は平壌のための収益、金一族が慣れ親しんだ様式に保つために十分な現金、5億ドルから10億ドルを生みます。
少なくとも30年間にわたり、民主党と共和党両政権の間、北朝鮮は終始一貫して核兵器とミサイル開発を放棄するとか制限するために署名した合意に対処しませんでした。
権力を恒久化するのを越えて、三世代の金が追い求めた一つの終始一貫した目標は、朝鮮半島を平壌の元に統一すること、韓国内の米軍を追い出し、ワシントンのソウルへの安全の保障を無力化することでした。核兵器はその目標を達成するための基本と考えられます。
さらに、北朝鮮はソウルから経済支援と財政的利権を得るために軍事力を使えることを示しました。核の能力が韓国への安全確保の義務を履行することからアメリカを束縛したり朝鮮半島からの撤退を導く脅威は平壌の影響力を拡張するだけです。
平壌に非核化を仕向けるのは、ビーチ・マンションの建設でなく、政権交代の見通しです。そうした政権交代は3つの潜在的な原因から起こり得ます。北朝鮮の崩壊を招くアメリカによる軍事攻撃。経済制裁の重荷から来る平壌の経済的崩壊。金正恩と金一族へのクーデターです。
北朝鮮の核兵器に対する軍事攻撃の可能性は高くありません。第一に、核兵器が貯蔵されている場所が分かりません。中距離と短距離の核ミサイルの一部は移動式ランチャーで展開され、おそらくは動き回されます。さらに、情報機関は数百ヶ所の施設があり、その一部は北朝鮮の核計画に関与する個々の建物を持つと信じます。
軍事攻撃は平壌の核計画を機能不全にするかもしれませんが、それを破壊したり、北朝鮮の反撃能力を殲滅できません。さらに、北朝鮮は並外れた生物化学兵器も持ち、それは韓国とおそらくは日本に対して放たれかねません。北朝鮮は韓国の首都、ソウルを十分に射程に収めた大量の大砲を含む通常兵器の軍隊も持ち、それは展開が可能です。
最後に、アメリカが北朝鮮に対して韓国の支援と強力なしに軍事攻撃をはじめるのは想像できません。その見込みはとてもありそうにありません。文政府は軍事的オプションはテーブルの上にないと宣言したも同然です。平壌に向けたソウルの政策はワシントンの政府から逸脱しています。アメリカの手法と対立すれば、韓国は北朝鮮に対処する上でワシントンのずっと先にいます。
トランプ政権が最大の圧力の政策と呼んだ経済制裁は、平壌が核兵器を諦めさせるために厳しく十分な経済価値を課し得ます。しかし、今日まで最大の圧力は機能していません。
第一に、平壌は繰り返して、核計画を放棄するよりも北朝鮮が莫大な困難を受け入れることを示してきました。経済的な苦痛は、それがクーデターか大衆の反乱によって政権交代を引き起こす場合だけ適切です。北朝鮮人の苦痛は単純に金の計算には入りません。
第二に、制裁の成功の鍵は、北朝鮮の貿易の85パーセント以上を担う中国です。燃料油とガソリンを含む北京の多くの緊急必要品の補給がないと、北朝鮮の経済は内部崩壊します。中国は、特に石炭が、北朝鮮の輸出にとって主要な市場でもあります。さらに、平壌は北京の広範な公式、非公式の財政援助に依存します。
最初、北京は国連が委任した制裁の最新ラウンドを履行するように見えました。中国・北朝鮮の貿易は2018年前半に急落しました。石炭の輸出は鋭く下落し、北京は中国企業が北朝鮮と関わるのを禁じました。しかし、シンガポール・サミット以来、北京は平壌に対する厳格な経済制裁から後退しました。
北朝鮮からの石炭の輸入は跳ね上がりました。中国は重要な石油蒸留物を供給し続けており、再び北朝鮮労働者が中国に入ることを許可しています。さらに、北京は国連安保理が課した経済制裁緩和の要請で、ロシアと北朝鮮に加わりました。公式には中国は制裁を課したままですが、非公式には北朝鮮の政権が生き残るのを許すに十分な漏洩を認めています。
北朝鮮での政権交代は現在の手詰まりの打破を生みますが、それは先立った結論ではありません。過去の金正恩の振る舞いは挑発的でしたが、核兵器を所持するアドバンテージは平壌は誰が北朝鮮を率いるかとは無関係です。政権交代は核兵器をさらに開発する北朝鮮の願望を変えることなく、より挑発的でない北朝鮮の指導者という結果になり得ます。
金にかわる者は金一族からや北朝鮮軍指導層のいずれかから来るかもしれません。どちらの場合も、活発な参加でないにせよ、クーデターは中国の支援を必要とするでしょう。それは北朝鮮におけるより多い中国の影響と、米中の国境問題と北朝鮮の核計画とのより固いつながりという結果になります。要するに、政権交代はワシントン好みの結果になる必要はないかもしれません。
朝鮮半島で起きていることは、中国、北朝鮮、韓国とアメリカの間の複雑なメヌエットです。各サイドはいかなる交渉においてもテコ入れを最大にするために、仲たがいさせようとしています。
韓国の文在寅大統領(President Moon Jae-in)と金正恩は2018年にサミット会談を3回行いました。公式にソウルとワシントンは北朝鮮の非核化要求で手を結んだままです。しかし、ソウルは平和な朝鮮半島を作る目的で、平壌に広範な財政支援と投資を提供してきました。しかし、より広範な米朝合意や平壌の非核化の前にこの財政支援を実行することは、ワシントンとソウルの間の政治的危機を招きかねません。
アメリカにとってさらに扱いにくいのは、韓国が非核化に向けた進展はアメリカによる関係正常化、そして恐らくは経済制裁の緩和による明確な手順によって達成されるという北朝鮮の要請に呼応しはじめていることです。さらに、アメリカが非核化のあとに平和条約で北朝鮮に報いようとするのと対照的に、ソウルは正式な平和条約を非核化のプロセスの一環として推し進めています。
アメリカは北京と平壌を仲たがいさせようとしています。シンガポール・サミットのあと、ワシントンは北朝鮮と直接対処するのを好み、北京を交渉の外で仲間はずれにしたように見えました。しかし、この手法はアメリカに多くのテコ入れを与えませんでした。金は中国の習近平主席(President Xi Jinping)と協議するために北京を繰り返して訪問し、中国は平壌へ外交的、非公式、経済的な支援を与え続けています。
不公正な中国の貿易慣行に対するトランプ政権の厳しい取り締まりは、中国はもはや北朝鮮危機を解決するために必要ではないという見方の反映かもしれませんし、それはアメリカが北朝鮮問題をより広範な米中関係の問題にしようとしていることを示すかもしれません。それは中国がアメリカを大将とした外交政策を追い求めて裏切るだろうという北朝鮮の恐れをかき立てるかもしれません。
北京の視点からは、現在の状況が継続することは理想的です。北京にワシントンに対する追加のテコ入れを許しながらも現状を維持します。北朝鮮の差し迫った崩壊がない間は、北京は危機を解決することから得るものはありません。
2018年11月にアメリカと北朝鮮は2019年にトランプと金の間の二回目のサミットを発表しました。北朝鮮は最初、いくつかの核施設の閉鎖に向けて動きましたが、これらのジェスチャーがとられても、平壌の核能力に深刻な影響を及ぼしません。
アメリカは「完全で、検証可能で、不可逆的な非核化」をいうのを放棄して、2021年までに非核化を完成するという北朝鮮の目標を受け入れました。大規模な米艦軍事演習は休止されたままですが、より小規模な訓練演習は進行中です。アメリカは経済制裁を続けていますが、中国による事実上のこれらの制裁緩和を止めることは僅かしかなせていません。
北朝鮮はうまく時間稼ぎを続けます。おそらく、北朝鮮はワシントンの政権交代がアメリカの政策を変えることを望みます。北朝鮮問題を解決するワシントンのテコ入れやより広範な中国との合意の改善がすべて妨げられれば、アメリカは核武装した北朝鮮を受け入れるしかないことに気がつくでしょう。この受け容れは、金が挑発と敵意に満ちた振る舞いをやめ、北朝鮮が核施設の定期検査をいくらか合意すれば許容できるでしょう。
平壌がすべての核施設と核とミサイル貯蔵物の規模と位置を明らかにするまでは北朝鮮の非核化の見通しはありません。現在まで、そうした公表が出されようとする兆候はありません。
これは軍事関係のライターのジョセフ・V・ミカレフ(Joseph V. Micallef)による論説です。
非常に簡潔に問題点をまとめてあります。
米朝交渉は最初からうまく行くかが疑問視されていました。トランプが自信たっぷりに見通しを語るほど、交渉は簡単にはいかないと感じさせられていました。
これがヒラリー・クリントンが率いる政権だったら、北朝鮮との交渉の経験が豊富だから、タイムラインを示さない合意文書など作らなかったでしょう。
トランプは誰かがミスをしたのだから、そいつに責任をとらせれば自分の責任は回避できると考えるでしょう。こんな馬鹿者と違って、金正恩はもっとずる賢いのです。
日本人の北朝鮮問題の認識がおかしいことも、この記事から理解されることです。
米軍が空母を展開したときに、いよいよ北朝鮮への軍事攻撃がはじまるとはしゃいだ者たちがいました。この記事にあるように、それは日本に対する北朝鮮の攻撃を誘発しかねないのです。それも理解せずに、北朝鮮が消滅して、拉致問題も解決すると単純に考えた者が、国の中にいるのです。こういう者たちこそ、日本を危険にさらす選択を支持する者たちです。
日本政府も似たようなレベルにあります。米朝交渉がどう進展しようと、それらは日本に影響しないと決め込んでいるだけです。
金正恩はこんな者たちよりもずっとずる賢く、今後もうまく立ち回ろうとします。その中で、日本への何らかの影響があることを、我々は考えるべきなのです。
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