アフガン軍は支配地域を拡張できず
military.comによれば、米国防総省の監視当局は、アフガニスタンでの16年間のアメリカの戦いの進展について、新たな疑惑を示しています。
同局はアフガン政府は2017年末まで、ちょうどアメリカが3,500人を追加して、タリバンに対する空爆を強化したときに支配地域を拡張していなかったと言います。
金曜日に公表された報告で、国防総省の監察部はドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)が8月に発表した戦争の戦略がカブールの政府と和解させる主要な目標を成し遂げられるかを判断するのは時期尚早だといいます。
アフガン軍の犠牲者の率のような、潜在的に役に立つ情報の一部がもはや公に利用できないため、計画の有効性を判断するのは難しいと言いました。
報告書はより多くの進展の物差しが必要だと示唆しました。
短い記事で、報告そのものは載っていないので、報告を見つけて、その全文を読みました(原文はこちら)。そのあとに私のコメントを載せました。以下は原文の邦訳です。
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この主席監察官(Lead IG)の合衆国議会へのに自由の番人作戦(OFS)についての報告は、海外緊急対応作戦(OCO)を詳述する11回目の四半期報告です。報告はOFSに関係する重要な出来事をまとめ、完了済み、進行中、計画済みの主席監察官と提携部局の監視作業を詳述します。この報告は2017年10月1日〜2017年12月31日までの時期を取り上げます。
自由の番人作戦は2015年1月1日に始まりました。米軍はOFSの下で補完的な任務、①アフガニスタンでのアルカイダ、その提携者、イラクとシリア・コラサンのイスラム国((ISIS-K)に対する対テロリズム作戦。②確固たる支援任務を率いる北大西洋条約機構(NATO)を通じたアフガン国家国防治安軍(ANDSF)の訓練、顧問、支援を行います。アメリカの対テロリズム活動はアフガニスタンをテロリストがアメリカ本土とアメリカの国益とパートナーに対する攻撃を計画するための隠れ家となることを防ぐことに集中したままです。確固たる支援作戦の目的は信頼できるアフガンの民間当局の下で治安を維持する能力がある自立したアフガン治安軍を発展させることです。戦略の下で、合衆国は戦術レベルでアフガン軍を訓練、顧問、支援する任務のために約3,500人の追加の兵士をアフガニスタンに展開しています。合衆国はタリバンと、麻薬製造施設のような彼らの財源を攻撃するために、米軍に権限を拡大もしました。
アメリカとNATOの指揮官は、この修正された戦略はアフガニスタンでの勢いをANDSFに有利に変えたと述べました。しかし、この進展と政府が支配する人口密集地域を評価するための、僅かな機密扱いでない測定基準は前四半期から変化していないことを示しました。さらに、政府が支配する地区のパーセンテージは変化しませんでした。
今四半期、タリバンは大規模な作戦から、アフガン軍と警察施設に自爆攻撃を仕掛けるような注目を集めるテロリスト攻撃へと戦術を移行し続けました。ISIS-Kも活動的で、カブールのシーア派少数派住民への自爆攻撃を行いました。
Lead IGと提携部局は今四半期の間に10件の報告を公表しました。報告は国防総省とアフガン治安省とANDSFとの交流に適用する、子供の性的虐待に関するレーヒー法の国防総省の実施、合衆国によるアフガン政府へ補給された装備の責任、対麻薬作戦の監督と対テロリズム支援プログラムの観察および監視の評価を含みました。四半期末の時点で、69件の監視プロジェクトが進行中か計画されました。
今四半期のLead IG局の調査は、犯罪起訴1件、軽犯罪の有罪判決1件、停職7件、法的手段による禁止6件、人事措置7件、その他の行政措置2件、連邦職から1名排除で終わりました。これらは契約業者から320,000ドルの賄賂を受け取った元米政府職員の有罪答弁を含みました。調達、補助金交付とその他のプログラム詐欺、汚職、窃盗、人身売買、その他の罪の申し立てを含めた、OFS関連のプログラムと活動に関係した34件の公開調査がありました。
今四半期、米軍とアフガニスタンはANDSFを評価するのに使われる主要な人事統計と評価基準を再び機密扱いにしました。 過去には公にされたこれらの数字は、現在は追加された関連情報と共に機密扱いの別表に含められています。この別表は適切な政府機関と議会委員会に利用できるように配布されます。
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アフガニスタンで勝利を収めるのは極めて難しく、ここで成果がないからといって、米軍の能力を疑うことはできません。むしろ、規律の点で疑問符がつくアフガン軍に対しても、レーヒー法を適用するなど、近代国家らしい分別をみせています。(この法律に関する過去の記事はこちら)
西欧諸国とはモラルの中身が違うアフガニスタンで、米軍はよくやっていると思います。日本では報じられませんが、いまでも米軍に犠牲者は出ています。
長い闘いの中でタリバンに変化も見られます。「国境なき医師団」のような支援団体を受け入れるようになりました。かつてのタリバンなら、こういう団体は西欧的として受け入れなかったでしょう。不幸にして、クンドーズに設置した国境なき医師団の病院は米軍が誤爆してしまうという皮肉な事件もありました。タリバンは団体が定めるルールに従い、病院内には武器を持ち込まないでいたのに、こともあろうに米軍が判断を誤って攻撃してしまったのです。
処分者の人数も、この程度ならよい方だといえます。
また、この記事で分かるように、米政府は政府内に活動を評価する部局があり、身内の活動を客観視しようとする努力をしています。日本ではこういう活動が弱すぎます。さらに、政府外に非営利組織などの団体にも政府の活動を監視するところが多数あり、マスコミも活発に活動しています。
日本で南スーダン派遣を評価するための政府内組織はありません。こういう活動の少なさが日本の民主主義の弱さとなっています。
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