なぜ3等空佐の発言は暴言か?
国会議員に暴言を吐いた3等空佐に対する同情論があるようです。ですが、私は彼に同情する気はまったくありません。なぜかというと、彼に覚悟がまったく感じられないからです。
国会議員が防衛省に抗議すると、3等空佐は謝罪したということです。謝罪した相手は「国民の敵」です。「国民の敵」にこうも簡単に屈した理由が分かりません。そう考えているのに、処分が目の前で現実化すると態度を変えてしまう。これは一体どういうことでしょうか。大した理由もなく非難したとしか解釈しようがありません。
昨日書いたように、要人への侮辱は米軍なら軍事裁判にかけられます。最高刑は軍からの追放、給与と手当の全額没収、禁固1年間です。(昨日の記事はこちら)
米軍にはもっと信念を貫いた人がいます。日系アメリカ人のエーレン・ワタダ陸軍中尉は二度目のイラク派遣を拒否し、カナダへ渡りました。その後、米軍は彼を起訴したため、彼は裁判を受けるためにアメリカに戻りました。
イラク派遣は同時多発テロとは無関係だと考えた彼は、オサマ・ビン・ラディンがいるとされるアフガニスタン派遣を志願しますが、軍に拒否されました。さらに除隊しようとしたところで、起訴されます。彼は脱走罪(第85条)には問われませんでしたが、将校と紳士にあるまじき行為(第133条)、イラクへの移動を拒否したとして敵前逃亡罪(第87条)に問われました。敵前逃亡罪の最高刑は死刑ですが、最近は2年以上の禁固刑になることが普通です。
ワタダ中尉は裁判でも信念を曲げず、禁固8ヶ月などの判決が出ました。しかし、検察側の手続きの誤りが発覚して審理無効となりました。しかし、手続き上のトラブルがなければ有罪判決は避けられませんでした。
このように軍隊の処罰覚悟で信念を貫く軍人がいるのです。それに比べたら3等空佐は腰抜けと呼ばれても仕方がない行動に走りました。なぜ、処罰を覚悟で主張を貫かなかったのでしょうか。自衛隊は米軍と違って、この種の行為で裁判にかけることはありません。内規による処罰のみで済むのにです。
前にも書きましたが、現在の統合参謀本部議長、ジョセフ・ダンフォード海兵大将はドナルド・トランプ大統領がいう「トランスジェンダーを軍隊から追放しろ」「テロリスト容疑者を拷問しろ」には反対の意見であると議会で証言しています。いずれ、これらの件で大統領と対立した場合、ダンフォード大将は躊躇なく主張を貫き、解任される道を選ぶでしょう。なぜなら、トランスジェンダーの件は大統領の意向が出される前に軍の方針は決定していましたし、拷問の件は国際法に違反します。
覚悟がないのなら、それを口にするべきではありません。
防衛省は政治活動を禁止するだけでなく、米軍のように許容すべき政治活動を認める規則を作るべきです。その上で違反者を処罰すれば、憤懣を膨れ上がらせる隊員も減るでしょう。
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