中身が分からないトランプの宇宙軍
military.comによれば、アメリカは宇宙軍(Space Force)の新しい隊員を「スペースマン」や「スペース・レンジャー」と呼ぶのでしょうか?。月面に米軍基地を持つのでしょうか?。
ソーシャルメディア上のジョークと推測は別として、木曜日に国防総省でのマイク・ペンス副大統領(Vice President Mike Pence)の次のステップに関するスピーチに引き続いて、トランプ政権が提案した宇宙軍について残る本当の疑問があります。
活動の総費用、組織構造、タイムラインに関する僅かな情報が公表されています。現存の宇宙に焦点をおいた軍部局は新しい軍の部隊に属するのかは完全に明らかではありません。ペンス副大統領は宇宙軍省は2020年の時間枠で開始するよう意図されていると発表しましたが、専門家はずっとながくかかると考えます。
「我々は追加の構造を立ち上げるのに関連する費用は、今年末までに分かるだろうと言っています。我々は費用見積もりをまだ終えていません。パトリック・シャナハン国防副長官(Deputy Defense Secretary Patrick Shanahan)はペンスの演説に引き続いて木曜日に記者に言いました」。
ペンス副大統領は宇宙に投資するために、さらに80億ドルを計上する進行中の計画があると言ったものの、資金は5年間にわたって配置され、宇宙軍自体の創設のためだけに指定されません。
シャナハン副長官は、それでも数十億ドルの費用がかかるだろうと言いました。
総額はともかくとして、未だに次に関する具体的な情報はありません。
- 「宇宙の指導者」たる空軍が、軍当局者が述べたように、宇宙の任務を維持するのか。
- コロラド州のピーターソン空軍基地(Peterson Air Force Base)とロスアンゼルス空軍基地(Los Angeles Air Force Base)のような稼働している宇宙基地は将来どうなるのか
- 提案された宇宙軍は固有の宇宙資産も持つ海軍と陸軍へどのように影響するのか
- どれだけの隊員と民間陣が新しい宇宙軍を作り上げるのか
- 将来性がある第六の軍隊のために、さらにどれだけインフラと諸経費が必要になるのか
- 空軍の宇宙・ミサイルシステムセンターに何が起きるのか
- 宇宙の領域で、正確にどれくらい宇宙軍がロシアや中国、北朝鮮、イランのような敵対国からの脅威を抑止・阻止できるのか
「いまのところ、私が持つ最大の答えられていない疑問は、宇宙軍に何が含まれようとしているのかです」と、「the Center for Strategic and International Studies」で航空宇宙安全保障プロジェクトを率いるトッド・ハリソン(Todd Harrison)は言いました。
「空軍宇宙司令部よりも大きなものになろうとしているのは明らかです」「多くの既存の宇宙部隊がその他の軍隊にあるからです」とハリソンは言いました。
「これら特定の組織と部隊すべてが、この中に移るつもりでしょうか?」と彼は言いました。「それから、これの本当に大きな疑問は、国家偵察局と国家地球空間情報局のような(情報)局はどうなのかということです」。
木曜日にペンス副大統領は3つのパートで計画を発表しました。当局は米宇宙司令部(U.S. Space Command)として知られる宇宙のための米戦闘司令部を創設すること。国防総省も軍隊の米特殊作戦司令部のそれと似ている、陸軍、海軍、空軍、海兵隊の軍隊と民間人の要員で構成される「宇宙作戦部隊(Space Operations Force)」を創設すること。さらに、国防総省が新しい人工衛星の契約プロセスと調達を監督するために宇宙開発局(Space Development Agency)を創設すること。
「これの様々な部分はこれの全部ではなく、宇宙軍に通じるでしょう」とハリソンは言いました。「別個の宇宙司令部……宇宙司令部はちょうど戦闘司令部のように軍隊の一部ではなく、宇宙部隊の一部とはならないでしょう」。
目的が、結果として、宇宙・ミサイルシステムセンターを廃止することにあるのかは明らかではありません、とハリソンは付け加えました。
調達組織は人工衛星とロケット打ち上げの調達を監督します。
「これについては不明なことがたくさんあります」とハリソンは言いました。
アナリストはこれらのアイテムは、国防総省当局者が宇宙隊(Space Corps・もともと存在した組織の構想)のアイデアの崩壊に引き続いて、数ヶ月間、中間報告書に取り組んでいたとしても、あまりにも早くに決定されるべきでは決してないと付け加えました。
トランプ大統領が約7週間前に宇宙軍をつくる意図を発表する前、空軍と連邦議員の間に、宇宙での敵対国の脅威がさらに深刻になるとの見込みの中、軍隊が「宇宙隊」をつくるべきかに関して議論の数ヶ月間がありました。議員たちは結果的に、宇宙隊を支持して空軍の任務の全体的見直しのような2018年の国家防衛承認法の中で文言を削除しましたが、彼らはそれでもアイデアの研究を要請し、宇宙の幹部の管理に関する変更を支持しました。
予備報告は3月に作られました。2番目の報告はペンス副大統領とシャナハン、ポール・セルバ統合参謀本部副議長(Vice Chairman of the Joint Chief of Staff Gen Paul Selva)によって木曜日に公表されました。2020会計年度の概算要求のために必要な適切な立法府の文言に関して助言する3番目の報告書は12月のいつかの時点で公表されるでしょう、とハリソンは言いました。
一つのことは明らかです。宇宙軍は完全に一から作られるのではありません、とハリソンは言いました。新しい組織がどんなに大きくなるかもしれないとしても、国防総省はすでに宇宙軍につぎ込むために活動できる部隊、人々、組織を持っています。
これを行うために「その大半は、ほとんどそのすべては、一つの口座からもう一つのへと資金の移転がなされることになっています」とハリソンは予測しました。「それらが決まって、宇宙のオペレーターすべてが特定されたら、アイデアはそれからこれらの人々すべてが移動して、予算が彼らにやってくるだけです」と彼は言いました。
専門家たちは数週間、なぜこうした全面的な見直しがいま特別に必要だったのか、特に、大衆に知られていない新しい脅威がこの活動を推進したのかもしれないと推測していると、ハリソンはそのかわりに、なぜ国防総省がすぐに行動を取らなかったのかと疑問を示しました。
「20年間なぜ(行われなかったのでしょう)?。1990年台後半に議会が制定した宇宙委員会はこの軍用宇宙の再編成の問題を視野に入れていました。
「国家安全保障の宇宙管理・組織の評価のための米委員会(The U.S. Commission to Assess National Security Space Management and Organization)」はその後、2001年に宇宙のための別の軍隊を創設することを勧告しました。議長はドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)でした。
「答えは、私が考えるに、これから最も人員と予算を失う立場にあるために、空軍が常に抵抗してきたということです」と彼は言いました。
それを別としても、宇宙の脅威はそこにあります。しばしば引用されるのは、自国の気象観測衛星の一つを破壊して3千個以上の破片を作り出した、中国が対人工衛星ミサイル試験を行った2007年の有名な事件です。
しかし、別の例があります。中国は動的な手段ではない対人工衛星兵器の試験を続けています。ロシアも自前の非動的対人工衛星兵器の試験をしていて、「我々は対宇宙兵器の多くの非動的形式が使われるのを実際に見ています」とハリソンは言いました。
イランは電波妨害となりすましを用い、北朝鮮は全地球測位システムの妨害装置を獲得しました。
「ロシアは機首にレーザーを搭載し、側面にファルコンと偵察衛星のようなものにむけて登る電光の絵の記章をもつ航空機を持ちます」とハリソンは言いました。「それは明らかに画像衛星の幻惑し、目をくらませるよう設計されています」と彼は言いました。(幻惑とは低出力レーザーで画像取得を止めさせるために人工衛星を妨害することを意味します)
「人々を苛々させるのは、我々がこれらの脅威が存在しないかのように我々の宇宙システムを造っていることです」と彼は言いました。
宇宙軍を取り巻く大衆の懐疑心が宇宙での任務が重大だというメッセージ全体に有害だったかどうかを尋ねられると、ハリソンはそうであったと言いました。
「それはトランプの宇宙軍となっているようです」と彼は言いました。
メディア報道の中で軍隊の宇宙軍のコンセプトが商業宇宙と民間宇宙と一緒になっていることは助けにならないと、ハリソンは言いました。それはNASAが責任を持ちます。
しかし、大統領のチームはこの混乱に貢献しているかもしれません。木曜日のペンス副大統領の発表の後、トランプ大統領の2020年選挙キャンペーンは、スベースシャトルが「火星が待つ」という言葉と共に飛び立つのを描写するものを含めて、宇宙軍のロゴをデビューさせました。
「(メディアは)これについて宇宙飛行士にインタビューし、月を保護し続けます。これは役に立ちません。これはまったくそれとは違います。そして、宇宙では進行中の深刻な状況があります。我々は我々の宇宙(の能力)を守ることで問題を抱えていて、我々がそれらを守るかどうか。地球上で効果的に戦うかどうかです」とハリソンは述べ、地上の兵士が日々使う兵器と通信システムは軍用衛星に接続していることに言及しました。
宇宙軍がそこにある危機への絶対的な解決となるかどうかは不明のままです。しかし、国防総省はいまから始まる旅が小さくはないことを知っています。
金曜日にワシントン特別区での空軍協会のイベントで聴衆に話して、セルバ副議長は国防総省はそれが直面する仕事の規模に関して「天真らんまん」ではないと言いました。宇宙軍の建設はまったく「中程度の費用」ではないでしょうと、彼は言いました。
「我々はすべての構造的基礎を適切に設定するでしょう。我々は大統領に彼が求めた立法の提案を与え、議会が議論を始めたらそれを支持するでしょう」とセルバ副議長は言いました。「しかし、私は我々はこれが本当に意味することについて広い視野を持つ必要があると考えます。だから、私はできる限り実利的であろうとしています」。
以上は記事のほぼ全訳です。
私も今回発表された宇宙軍の中身は分からないでいました。各軍は宇宙に関する装備をある程度持っていて、別組織を作る必要があるかは疑問です。米議会はこれまで繰り返し、そういう部隊の創設を議論していて、トランプ大統領独自の発案ではありません。(彼はそう言わないでしょうが)
考えられる宇宙軍の任務は人工衛星の防護くらいです。それなら空軍に専門部隊を置けば足りるでしょう。
考えられる必要性はトランプ大統領の功績でしょうね。自分の政権が創設したと、次の選挙で宣伝材料になりますから。
で、人工衛星の防護の具体的手段がなにかが問題です。差し迫った脅威が本当にあるのかも疑問です。人工衛星を破壊すると周辺に破片が飛び散って、それが別の人工衛星の邪魔になることは、中国の実験で明らかです。攻撃した国の人工衛星にも悪影響があるかもしれないのに、あえてそれを実行する国があるかは疑問です。レーザー兵器での攻撃なら、破片を生まずに、機能停止にすることは可能かもしれません。
レーザー兵器だけを心配していればよいのなら、それほど大きな組織は必要ないように思えます。
なお不思議なのは、日本でも宇宙とサイバスペースに進出すべきだと主張する人がいることです。自民党の自衛隊OB議員、佐藤正久氏はフェイスブックで時折、宇宙軍の創設を示唆するのかと思える発言をしています。サイバー用部隊はともかくとして、日本に宇宙軍が必要かは不明です。米軍の兵器は人工衛星に大きく依存していても、自衛隊はそれほどではないからです。多額の金をかけてまでやる必要があるかは疑問です。そんなことに金をつぎ込んで、肝心の基本装備が疎かになっては意味がありません。単に時代に乗り遅れたくないだけなら、お門違いだというべきでしょう。
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