アフガン撤退も特殊部隊は残留か

2019.1.4


 military.comによれば、米国防総省はアフガニスタンで部隊の規模を半分に削減することを計画しているところですが、特殊作戦攻撃部隊はタリバンとイスラム国の戦闘員に対する襲撃を行うために国内に留まるだろうと、撤退計画に詳しい国防総省当局者は水曜日に言いました。

 アフガニスタンから米軍を移しはじめるというドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)による決定の報道が、ホワイトハウスがシリアのイスラム国戦闘員への勝利を宣言して米兵が戦争で疲弊した国を引き上げることを命令した直後の12月下旬に起こり始めました。

 米軍指導層はその後、アフガニスタンの報道を噂だと軽視してきました。11月23日のナンガルハル地区(Nangarhar)の知事との会合に引き続き、アフガニスタン駐留米軍とNATO軍の指揮官、スコット・ミラー大将(Gen. Scott Miller)はアフガニスタンの通信社「TOLO」に「私はあなたが(撤退について)新聞から得たのと同じ噂をみていますが、私があなたに保証できることのすべては、第一に、私は命令を受けておらず、何も変わらないということです。しかし、私が命令を受けたら、私は我々はまだ治安部隊と共にあることをあなたが知るのが重要だと思います。たとえ、我々がほんの少し小さくならなければいけないとしても、我々は大丈夫でしょう」と言いました。

 1月2日、米軍当局はアフガニスタンからの撤退計画を話すのに気乗りしないままでしたが、戦略に詳しい情報筋はMilitary.comに、ミラー大将は14,000人と見積もられる米兵の約7,000人を次の8ヶ月から12ヶ月にわたって国外へ引き上げるよう計画していると言いました。

 目下、アフガニスタンの米軍の駐留の大部分は米軍の援助なしで活動できるようにするためにアフガン治安部隊の顧問と訓練に打ち込んでいますが、戦闘航空、統合化した武力作戦と補給支援のような複雑な戦闘技術では未経験のままだと、軍当局者は言います。

 陸軍の第75レンジャー連隊、デルタ・フォースとして知られる第1特殊部隊作戦分遣隊と海軍の特殊戦開発グループ(シールズ・チーム・シックス)のような米特殊作戦部隊の小さな分遣隊が占めるアフガニスタンでの米軍の任務の直接行動の部分は、国内の敵の陣地に対する攻撃任務を続けるでしょうと、記者に話すことを認められていないために匿名を希望した情報筋は言いました。

 「我々は国内に攻撃部隊を持つでしょう」と情報筋はMilitary.comに言いました。

 トランプがアフガニスタンの兵士の数を半分に削減することを望んでいるという報道にも関わらず、

 「何も変わっていません」と国防総省報道官のコーン・フォルクナー中佐(Lt. Col. Koné Faulkner)は水曜日に言いました。「タリバンとの和平交渉が続いているので、我々は部隊の数と配置についてあらゆる選択肢を考えているところです」。

 撤退についての計画は確認できないものの、ミラー大将は火曜日にカブールでのイベントの席上で、タリバンをアフガン政府との和平合意へ持っていくアメリカの目標全般に関して主要な政策評価が進行中だと言いました。

 「TOLO」ニュースによれば、「政策評価は和平交渉が行われる複数の州都で進行していて、地域の有力者が和平を促進しています。タリバンは和平を話しています。アフガン政府は和平について話しています」とミラーは言いました。

 タリバンはいまのところ、カブールの代表者と会うことを拒否していますが、彼らは米特使のザルメイ・カリザド(Zalmay Khalilzad)と接触を維持しています。

 目下、アメリカの自由の番人作戦(Operation Freedom’s Sentinel)とNATO軍の確固たる支援任務(Resolute Support mission)の両方のために働く約14,000人の兵士がアフガニスタンにいます。NATO軍と国防総省の監察長官部によれば、約8,000人の同盟国の兵士も確固たる支援任務の一部であり、合計で約22,000人の米軍、NATO軍とパートナー国の兵士がアフガニスタンにいます。

 2012年のアフガニスタンへのアメリカとNATOの関与の最高点では、アメリカ、NATO、その他の同盟国からの約130,000人の兵士がアフガニスタンにいました。

 アフガニスタンの再建担当特別監察総監によれば、アメリカとNATOがアフガニスタンに駐留を続けているにも関わらず、タリバンの武装勢力は国の半分近くを支配して、いまや2001年のアメリカが率いた侵攻以来、彼らがあったいかなる時よりも一層強力です。17年間の紛争はアメリカに約9000億ドルを費やさせ、2,400人を超えるアメリカ人が死ぬという結果になりました。


 これが何を意味するかというと、これまで積み上げてきた同時多発テロ以降の米軍の戦略をトランプがぶち壊しているということです。

 もともと、ブッシュ・ジュニアが不明瞭な「テロとの戦い」を宣言して、イラクに侵攻するという無意味な作戦を展開して脱線しかかった対テロ戦でした。

 それをバラク・オバマが軌道修正して、なんとか立て直しました。それでも見通しは明るくはありませんでした。

 こうした動きを大雑把にテレビニュースで知るしかしないトランプには「なんという無駄な動きだ」としか見えないのです。

 シリア介入は対テロ戦とはややずれています。もともと、アサド大統領のシリア国民弾圧を防ぐためのものでしたが、いまや対イスラム国戦争となっていて、そこにロシアが介入する形になっていました。そうした事情をまったく受け付けないトランプ大統領が撤退を決めたのです。

 アフガニスタンはもはやタリバンとの政治的和解しか解決がないのに、相手が有利になるように撤退してあげるというのです。和平交渉の段階でも、相手に圧力をかけるために一定の武力を維持するのが常識ですが、トランプの目には「無駄な出費」としか映りません。

 ここまで自分の思い通りにやれるようになったのです。邪魔くさいジム・マティスは放逐しました。今後、トランプはもっと自分の思い通りにやるでしょう。

 ということは、トランプが次に手をつけるのは朝鮮半島です。国防長官はイエスマンのパトリック・シャナハンにすげ替えました。

 韓国と日本にある在日米軍も減らせとトランプが命令するのは目に見えています。しかし、流石に朝鮮半島からの撤退は、東アジア情勢に悪影響を及ぼしかねないと、軍人たちが反対するでしょう。

 在日米軍も出ていってくれるのなら好都合と考える人たちも多いでしょうが、急激な変化は思わぬ悪影響を生むことがあります。韓国と日本から米軍がいなくなると、中国内部に台湾への武力侵攻を主張する者が増える可能性があります。

 前から指摘していることですが、台湾が陥落したら、目の前にある南西諸島方面へ進出したくなるのは当然です。こういうバランスの問題をどう考えるかも重要です。

 もちろん、軍事的な理由だけで政治は動きません。昔と違って、いまは政治的な要素が事態に大きく影響します。国際的な組織も以前よりは堅固になっていて、武力による侵略に対しては厳しい態度をとります。

 こういう大きな変化が起きる前兆が見えているというのに、日本の政治家たちは韓国のレーダー照射事件とか、沖縄を中国軍が直接攻めるとか、国民の目を逸らせるようなことにだけ熱心です。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.