大統領の軍司法への介入が波紋に
military.comに
よれば、バウ・バグダール2等兵(Pvt. Bowe
Bergdahl)は、ドナルド・トランプ大統領(President Donald
Trump)によるツイートとコメントが元の裁判を決定的に損なったか、彼の有罪判決が取り消される理由になるかを判断するために、彼の裁判の評価を認められました。
この命令は11月4日に米軍の控訴裁判所のウェブサイトに掲載され、最初にMilitary Timesが報じました。
タリバンによる拘束と5年間の投獄と、彼を取り戻すためにグアンタナモベイの収容者5人との物議を醸した交換となった、
2009年にアフガニスタンの持ち場を放棄したための2017年のバグダールの有罪判決は、軍曹から2等兵への降格、罰金
10,000ドル、不名誉除隊を含みました。
トランプは大統領と就任前の両方で声に出してバグダールを批判しました。2015年3月、彼はバグダールは「脱走で死刑に
なるべきだ」と言いました。この年の4月には、彼は5人のテロリストの人質と裏切り者のバグダール軍曹を交換したことで、バ
ラク・オバマ大統領(President Barack Obama)を批判しました。
7月、バグダールの弁護士は有罪判決を上訴し、トランプのコメントと故ジョン・マケイン上院議員(Sen. John
McCain)によって行われたコメントが非合法の指揮介入の理由となると主張しました。
マケイン上院議員は2015年に、バグダールは「明らかな脱走者だ」と言いました。
陸軍は最終的に上訴を却下しましたが、Military
Timesが指摘したとおり、この決定は満場一致ではありませんでした。ジェームズ・ユーイング裁判官は反対意見の中で「陸軍検察官は非合法的な介入が手続きを損なわな
かったことを疑いなく証明しなかった」と書きました。
バグダールの上訴公判はまだ日程が決まらず、バグダールの弁護士は30日間で論証を提出します。政府は30日間で回答を提
出します。
政府の回答が提出されてから20日以内に公判は日程が組まれると、Military Timesは報じます。
military.comに
よれば、ドナルド・トランプ大統領は、それらのすべてが戦争地域での犯罪で告発された海軍シールズと兵士2人に対する別々の
法的事件の軍の処分において、階級を引き上げるかもしれないと発表したあと、軍司法のコミュニティで議論を起こしました。
フォックス・ニュースのパーソナリティ、ピート・ヘグサス(Pete
Hegseth)は今週、トランプが2012年にアフガニスタンで男性2人を殺害し、3人目の殺人未遂で有罪判決を受けた陸軍のクリント・ローレンス中尉(1st
Lt. Clint
Lorance)の事件で介入行動が差し迫っていると言ったと主張しました。ローレンスは現在、カンザス州のフォート・レブンウォース(Fort
Leavenworth)で19年の刑を務めています。
ヘグサスは、トランプが2010年にアフガニスタンで爆弾事件容疑者を殺そうとしたマット・ゴルシュタイン少佐(Maj.
Matt
Golsteyn)に対する事件でも関与するかもしれず、非武装のイスラム国戦闘員とイラク人の民間人を殺して無罪となりながらも、戦争犠牲者と共に写真撮影のためにポー
ズをとって有罪となった海軍シールズのエディ・ギャラガー(Eddie
Gallagher)の上等兵曹の階級を復活させるかもしれないと言いました。
陸軍退役軍人のヘグサスは、これらの事件に関してトランプに直接ロビー活動を行ったとされます。
トランプはまだこれらの事件で最終的な行動を発表していませんが、一部はすでにこうした介入がもつ影響について懸念を表明
しています。さらに、CNNは水曜日に、マーク・エスパー国防長官(Defense Secretary Mark
Esper)が退役軍人の日の前にトランプに会い、これらの事件で介入しないように彼に求める予定だと報じました。
ロスアンゼルスのサウスウェスタン法律学校教授、レイチェル・ヴァンランディングハム(Rachel
VanLandingham)は、最高指揮官が統一軍規法典に介入することは、法律的というよりは倫理的な問題を示すといいました。
「彼はそれを行うことが法律的に許されます。彼は彼が望む者誰にでも恩赦を与える憲法上の権限があります。結局のところ、
これは法的な問題ではありません。倫理的な問題です」とヴァンランディングハムはMilitary.comにいい、軍隊の隊
員は戦争法規に違反したら責任をとる必要があるとつけ加えました。
「トランプはこれらの規則に従って生きなければならないその他の軍隊の隊員たちとの信頼の絆を壊しています……彼は我々と
イスラム国との間の違いを破壊しています。彼は我々の兵士とアルカイダの間の、我々の兵士と過激派すべてとの間の、戦争では
何でもありと考えるアナーキスト・グループと間の違いを破壊しています」。
しかし、その他の者たちは、トランプはこれらの裁判で行動することに十分な制約があるといいます。
2005年に創設された権利擁護団体「United American
Patriots」の理事、デヴィッド・ガフェイン(David
Gurfein)は、裁判が適切に処理されていないと主張し、トランプはローレンスとゴルシュタインのかわりに介入する責任があるといいました。
「最高指揮官として、彼はこのすべてを行う制度上の自由を持ち、前例があります。実は、最初の共和党の大統領、エイブラハ
ム・リンカーン(Abraham
Lincoln)が何百回もこれを行いました」と、海兵隊で25年務めた退役中佐のガフェインはいいました。
「だから、これは大統領が後ろから抜け出すようなものではありません。前例があり、非常に多くの視点から多くの弁護士に
よって考察されているものです」と彼はつけ加えました。
すべてのアメリカ人は犯罪で訴追されたら迅速な裁判を受ける権利がありますが、「この裁判はマット・ゴルシュタインを10
年間未決のままにしています」とガフェインはいいました。
ゴルシュタインの弁護士、フィル・スタックハウス(Phil
Stackhouse)はMilitary.comに、彼の依頼人の裁判の陸軍の取り扱いには、不完全で疑問がある証人から証拠の問題と裁判自体の手続きまで、多数の問題
があったと言いました。権利への損害により裁判を取りやめて免訴するために、彼は統一軍規法典の下で彼が持つ権限でこの裁判
の司法権を留保し、問題の管轄権を引き継いでほしいといいました。
「これらの裁判で、弁護士と調査官たちの両方にキャリアができました。そして、誰もが(トランプの予想される介入は)軍司
法手続きの信頼を破壊するというのは嘘に過ぎません」と彼はいいました。
法的な手続きをさせるようトランプに求めるエスパーの報告された意図に関して、スタックハウスはゴルシュタインの裁判に関
して普通のことがなにもないと言いました。裁判は最初に、将校にあるまじき行いとして、陸軍によって管理上の決定が行われ、
戦争地域での事件の8年後、彼は殺人で起訴されました。
「私はこれらの裁判に20年間関わっています」とスタックハウスは言いました。「こうした非典型的ではない少数の裁判があ
りました」。
クリント・ローレンスの弁護士、ジョン・N・マーヘル(John N. Maher)と「United American
Patriots」の創始者は、Military.comからの質問に答えませんでしたが、Military
Timesに彼は大統領にローレンスの有罪判決と刑罰を不可とするのを望むといいました。それは元少尉に復員軍人援護局の給付金を持ち続けさせるのを許します。
ガフェインは、ローレンスの軍事裁判の間に、ローレンスの部隊が敵の待ち伏せのために設置されていたことを述べた「重要行
動報告」のような提示されなかった証拠があるとも主張しました。
「陪審団はクリント・ローレンスを有罪としましたが、情報のすべてを得ていませんでした。証拠のすべてを得ていませんでし
た」と彼は言い、ローレンスの事件は連邦裁判所の評価を受けたら「棄却されるかもしれません」と指摘しました。
ヴァンランディングハムは、軍司法システムは軍事裁判の判決を控訴する多くの選択肢を持ち、これはそうした決定がなされる
ところであり、ホワイトハウスではないといいました。
「我々は軍隊の中に堅固な控訴(システム)を持ち、軍の控訴裁判所まで行きます」と彼女は言いました。「それがこれらの評
価が行われるべきところです。合衆国の本当に粗野な司法があったところに、これらの控訴メカニズムを持ったよりも前に、大統
領の権限が作られたことを忘れてはなりません。その期間は過ぎ去りました」。
主張を明確にするために、ヴァンランディングハムはギャラガーを引き合いに出しました。
「ギャラガーの裁判で起きたことを見てください。勧告すべき憲法修正第6条の権利(犯罪事件で陪審員による裁判を受ける権
利)への干渉があったと感じたので、裁判官は証拠を排除し、主任検察官を却下しました」と彼女はいいました。「欠陥があるな
ら、それらを見つけるために、私は軍司法システムと連邦司法システムを完全に信頼します」。
海軍のトップ将校は先週、ヘグサスがトランプがひっくり返すと期待する決定を、ギャラガーがE-6の給与等級で退役すると
決定しました。ギャラガーは軍事裁判に続いてシールズの三叉の記章も失うかもしれません。
ガフェインはそれは非合法な指揮介入と検察の職権乱用で損害をこうむると主張し、ギャラガーの裁判の処理は、軍の司法シス
テムにさらに監視が必要な証拠だと言いました。
「法務総監システム全体、法務部は精査を行っているところです。彼らは非常に限られた監視しかしないため、そこで何が行わ
れているかについて、海軍と海兵隊は完全な調査を行っているところです」と彼は言いました。「陸軍はまったく同じことをすべ
きです」。
ヴァンランディングハムは同意しませんでした。
「軍隊(の司法システム)には、司法省の米法律家補佐官や米法律家にあるよりも、よりも多くの監視があります」と彼女は言
いました。「軍司法システムは唯一の司法システムです……議会は毎日、聴聞会を開催し、多数の委員会が監視を提供するために
設置されています」。
「世界に完璧な司法システムがありますか?。ありません。しかし、軍司法システムはアメリカで他のどの犯罪司法システムよ
りもより多くの手続きのセーフガードと監視を提供します。百パーセント。絶対にです」。
ヴァンランディングハムは戦争法を守ることの重要性へと戻りました。南北戦争中のエイブラハム・リンカーンの下で判断され
ました。
「それは我々は行うべき道徳的に正しいからだというだけでなく、指揮官が兵士の間の良好な秩序と規律を持たない、任務の目
的を達成できないと認めるためです」と彼女は言いました。「しかし、規則を破る人々は常にいます。彼らには責任をとらせ、軍
司法システムがそのコースを進めるようにしようとするものです」。
ガフェインは、民間人と同じようにアメリカ人の戦士が権利を守られていないと主張します。
「我々はこうした白と黒の戦いに入りますが、ここに微妙な差異があります」と彼は言いました。「民間人の世界では、警察官
が不適切に振る舞い、あるいは検察官が不適切に振る舞い、犯罪者を自由にすることがあります。そして、いまでも我々は推定無
罪を与えようとしていない我々の戦士について話していて、彼らに同じ理解を与えようとしていません」。
今の日本にはない軍司法の問題です。軍は独立した司法権を持っており、軍法という特別な法律を持っています。
そこにド素人のトランプ大統領があれこれと口を挟んでいます。普通、大統領は個々の軍事裁判に介入したりはしません。しか
し、自分を王と同じ権力を持つと錯覚するトランプは、あれこれと介入したがります。
トランプは軍にテロリストの拷問をさせようと、大統領選挙中に繰り返し「拷問は効果がある」と言い続けました。これに対し
て、ジュネーブ条約遵守の点から米軍は一貫して、捕虜の拷問はしないという説明をしてきました。軍隊ではないCIAは拷問を
しますが、米軍は捕虜とは信頼関係を築くのが伝統です。
テロリストを殺したのだから、敵を殺したも同じで、違法行為だとしても免責すべきだというのがトランプの考えです。しか
し、こういう行為を容認していれば、現場の兵士の規律が損なわれ、違法行為が横行することになります。
ガフェインがいうように、民間人に認められることが軍人に認められていないという考え方は、根本的に間違っています。軍人
は特別な身分であり、殺人や破壊という特別な行為に携わります。彼らには特別な法律が必要で、しっかりと拘束しておく必要が
あります。
そこに、国のためにやったことで裁かれるのかと、人情話を持ち込むのは完全な誤り。アメリカの軍人は憲法レベルで別の立場
が与えられていて、様々な法律で行動を制限されています。
この点で、実は自衛隊も、軍法自体がないので処罰が極めて甘く、戦争を想定していないため、該当する法律も少なく、戦時に
適切な規律が維持できるのかが不明という問題を持ちます。日本人も人情話が大好きで、戦闘における行為で自衛官を厳しく処罰
することに対する抵抗が強いことも、容易に予想できます。
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