自衛隊の戦地医療は米軍の軍用犬医療に劣る

2019.12.14


 米軍の軍用犬の医療態勢について調べ、petmd.comに 適切な記事を見つけました。これを見る限り、自衛官の海外派遣の医療態勢は米軍の軍用犬より劣っています。

治療第1段階

 軍用犬の治療の最前線は野戦医療スタッフです。彼らは負傷兵を看護する同じ衛生兵によって治療されます。ドクター・ギリス (Dr. Giles)のような獣医の助けを得て、軍は野戦で負傷した犬を、彼らが適切に安定させ、治療できるようにするための訓練プログラムを開発しています。怪我が軽いなら、軍 用犬は兵士と同じく現場で治療され、すぐに任務に戻されます。怪我が獣医の治療を必要とするなら、犬は陸路や空路で医学的治 療の次の段階へと避難させられます。

治療第2段階

 治療の第2段階の地域は間に合わせの場所で、獣医1人と支援スタッフが配置されます。これらの施設は動物病院に比べて非常 に限定されているため、獣医は負傷した者の治療において独創性と創造性を必要とします。ドクター・ギリスは、犬が動脈グラフ トを行える施設へ移送できるまで、切断された動脈の部分を静脈チューブで置き換えるスライドを示しました。この犬はドイツ で、最終的にアメリカで治療を受けます。十分に治療できず、治療第2段階から任務へ戻せなかった犬たちは獣医の治療の次のレ ベルへ送られます。

治療第3段階

 外科獣医の免許を持つドクター・ギリスは、アフガニスタンに派遣されると、第3段階の治療施設で働きます。こういう病院の 員数が獣医2人、専門職と支援スタッフに制限されているため、彼はただ一人の獣医と共に活動します。

 ドクター・ギリスの病院はM.A.S.H.(移動外科病院)と同じでテントです。幸い、彼の病院は人間の病院と隣接してい て、可能なら、彼は患畜の高等な治療のためにその施設を使います。これは戦争地域での獣医治療の最高レベルのため、ドク ター・ギリスは拡張された病院医療を必要とする最も重症の案件を扱います。過去の投稿で触れたように、攻撃を訓練された犬は 治療するために彼らを制御するため、彼らのハンドラーが常に存在する必要があります。ハンドラーと犬の絆はとてつもないもの です。ドクター・ギリスは、床、簡易ベッド、病院のテント内のあらゆる間に合わせの場所で、液体やその他の生命維持装置でつ ながれた犬と共に眠るハンドラーの複数のスライドを示しました。

 第3段階の負傷した犬の多くは、治療され、修復され、戦闘へ戻されますが、一部はさらなる治療のためにドイツの米軍病院へ 空輸されるか、最終的にはテキサス州のサン・アントニオ(San Antonio)のフォート・サム・ヒューストン(Fort Sam Houston)へ空輸されます。

 南スーダン派遣で、自衛隊は隊員の治療のために外科医2人と内科医2人を配置しましたが、手術施設は初歩的な施術 ができる程度でした。重傷者が出た場合は、隣国へ運び、そこで治療する方針でした。

 この方針だと、いかに分屯地が空港内にあるとはいえ、滑走路が使えない状態では重傷者を救えない恐れがあります。負傷は戦 闘でだけおきるのではなく、米軍は派遣先で交通事故でも負傷者を出しています。あらゆる事態を想定するべきなのに、自衛隊は これで足りると考えています。

 3段階の治療システムは米兵の医療態勢と同じですから、同じ発想を用いていることになります。当然、米軍と自衛隊の医療体 制も著しい格差があるわけです。

 明らかに、派遣先での治療は米軍の軍用犬より自衛官の方が劣っています。負傷者が大量に出たら、できるのは対処する負傷者 を選ぶトリアージくらいです。トリアージとは、いまにも死にそうな者と軽症の者は見捨てて、治療が可能な中程度の負傷者だけ に対処する手法です。

 戦争をすることを想定しない自衛隊の危機管理はこの程度のです。自衛隊だけでなく、民間防衛も日常生活に毛が生えた程度の 準備しかしていません。自衛隊を礼賛する人たちは、こういう現実から目を背けています。

 


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