恩赦の米陸軍将校が不満を表明

2019.12.8


 military.comに よれば、2013年に戦争犯罪で有罪判決を受けた元米陸軍大尉、クリント・ローレンス (Army 1st Lt. Clint Lorance)は、先月、ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)に完全な恩赦を与えられても、(量販店の)ウォルマートやターゲットで仕事を見つけるのは不可能だといいました。

 ローレンスはアフガニスタンで2012年にオートバイに乗った非武装の3人の男を撃つように兵士に命じたことで第2級殺人 罪で有罪になったあと、軍刑務所で19年間の服役を与えられました。3人のうちの2人は機関銃の銃火で殺され、3人目は負傷 しました。

 ローレンスの仲間の兵士9人は彼の裁判で彼に対して証言し、数名は彼は彼がやったことを隠ぺいしようとしたと主張しまし た。ローレンスは無罪を主張し、仲間の兵士を守ったとして、行動を擁護しました。

 「現場の状況を考えて、私はできるだけの最善の決断をしました」とローレンスは11月の恩赦のあとで「The Sean Hannity Show」でいい、「今日、その決断に直面しても、まったく同じ決断を再びするで しょう」とつけ加えました。

 ローレンスはトランプが11月に恩赦を与えたとき、6年間刑期をつとめていました。トランプの大統領命令は裁判の前にもう 一つの戦争犯罪事件を不問にして、そうするに値する個人に2番目のチャンスを与えるために権限を用いてきた大統領の長い歴史 をひきあいにして、有罪判決をうけた海軍チーフの階級を復権しました。

 「大統領が述べたとおり、我々の兵士たちはわが国のために戦わなければならず、私は闘うための確信を与えたいのです」とホ ワイトハウスは声明でいいました。

 しかし、ローレンスは木曜日にツイートの中で、彼は恩赦を受けて刑務所から釈放されても、不名誉除隊は「就職するのを不可 能にする。たとえウォルマートやターゲットでも」といいました。

 トランプは「彼の記録は抹消されたと私にいいました」と彼はいいました。「ホワイトハウスの彼のスタッフは反対しなければ なりません。これは上り坂の戦いになるでしょう」。

 ツイートの中に、ローレンスは、人材従業員となるための申請を却下し、応募に関する固有のフィードバックはできないとい う、ターゲットからの電子メールに見えるものを含めました。

 2018年のプレスリリースの中で、ターゲットは犯罪歴に関する問題点を排除し、雇用プロセスの最終段階でのみ対処するよ う雇用慣習を改定しているといいました。

 「この手法は意図せず特定の申請者を不合格にしかねず、一部の申請者が彼らが志願した地位に無関係な有罪判決のために不合 格になったとの主張があります」とターゲットはいい、新しいプロセスは彼らの資格、面接、有用性に基づいて雇用を検討される のを確実にするとつけ加えました。

 釈放のあと、ローレンスは2007年に非武装の民間人14人を銃殺し、今年早くに終身刑を受けた元ブラックウォーターの警 備請負者、ニコラス・スラッテン(Nicholas Slatten)を含め、他の有罪判決を受けた戦争犯罪の恩赦について歯に衣を着せません。

 ローレンスは軍高官が政治家になるために制服を着る者たちを取り引きしたとも非難しています。

 「私にしたことを彼らがしたときに、彼らは価値観の一部を失い、部下たちからの尊敬を確実に失ったと私は考えます。知って のとおり、彼らは私をバスの下に放り投げました」と彼は先月「Fox & Friends」でいいました。

 ローレンスの事件は過去にも紹介していますが、あまり深くは調べていませんでした。そのため、当時は有罪判決は珍 しいと思っていました。こうした戦場での混乱からくる誤射は裁判になるほど問題視はされません。アフガニスタンで、ガンシッ プ搭乗員が「国境なき医師団」の診療所を誤爆したときも、裁判ではなく再訓練などの措置がとられました。

 改めて事件を考える必要があるので、armytimes.comか ら事件を報じた記事をみつけて、その中から関連する記述を3ヶ所抽出しました。

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 法廷書面によれば、2012年7月2日、ローレンスはパトロールの近くで兵士にオートバイに乗る3人の非武装のアフガン男 性に発砲するよう命じました。兵士の一人が最初に発砲して外し、男たちが停止し、オートバイを降りて、パトロールの前にいた アフガン 国軍に向かって歩くのを見ました。

 アフガン兵はバイク乗りたちに去るように合図しました。そのときに、ローレンスは無線で小隊の車両にアフガン人のバイク乗 りとM240B機関銃を使って交戦するよう命じ、逃げようとしたバイク乗り2人を殺し、3人目を負傷させました。

 カンダハル州、ザハレイ地区(Zharay)のペィエンザイ(Payenzai)付近の発砲は、彼の小隊の中ですら、ロー レンスを支持するのは僅かでした。ローレンスの兵士数人が軍事裁判で、バイク乗りたちは発砲時に差し迫った敵対的脅威を及ぼ さなかったと証言し、有罪判決が出るのを助けました。

 2017年、上訴審の陳述で、ローレンスの弁護士は身体的な証拠は少なくともバイクの男の1人は発砲前の簡易爆弾事件とつ ながりがあったと主張しました。他の殺害されたバイク乗りは米軍に対する敵対的行動につながる者を知っていました。現場から 逃げた犠牲者は、負傷したあとで武装勢力の攻撃に関与したようです。

 上訴審は最終的に陸軍裁判官により却下されました。裁判官は意見の中で、ローレンスはその情報を知らず、犠牲者はそのとき に脅威をもたらさなかったと書きました。
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 彼は地元アフガン人を脅したこと、村へM14を撃ち込んだこと、発砲を受けたと兵士に嘘をつかせようとし、バイク乗り2人 が殺されたあとで偽の無線報告をして司法を妨害したことでも有罪になりました。
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 小隊がいた地域は武装勢力の活動の温床として知られていました。

 米国民で政府の請負業者のケビン・フーバー(Kevin Huber)は発砲につながる出来事のいくつかを静止気球のカメラを通じて目撃しました。

 「私は戦闘年齢の3人の男性が米軍パトロールの約300メートルを尾行するのを見ました」とフーバーは民事法廷で表される であろう、ローレンスの新しい法廷の陳述で書きました。「米軍の位置へ向けて、村の後壁に沿って移動する間、AK-47突撃 銃で武装し、ICOM無線機を持っていたため、私の経験では、彼らはタリバンや武装勢力の戦闘員のあらゆる兆候がありまし た」。

 法廷記録はこれらのバイク乗りたちが、ローレンスが後に兵士に撃てと命じたのと本当に同じ者たちだったか、発砲時に武装し ていたかかは示しません。

 ローレンスの小隊の上の大隊の部隊最先任上級曹長を務めたダニエル・グスタフソン(Daniel Gustafson)は、その日、戦術作戦センターに配置されていました。

 彼は証言で、ローレンス小隊が差し迫った攻撃のために偵察されていたのは、百パーセント確実だと書きました。

 「私は、バイクに乗った3人のタリバンの偵察がローレンスの小隊に北東から近づいていること、数人の武装勢力がICOM無 線機を持っていて、北へ向けて戦闘位置へ移動していること、停止させられた西から来たバイク乗り1人が拘束され、手に(即製 爆弾を)しているのを見つけられたことを理解します」とグスタフソンは書きました。

 グスタフソンは彼が個人的にローレンスを知っており、彼をよく思っていると証言でいいました。

 「(前の小隊長が)負傷したとき、毎度のパトロールの間に必ず銃撃戦が起きるこの辛い任務のために選ばれているたくさんの 尉官がいて、指揮系統は彼をとても高く評価しました」と証言は読めます。
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 ローレンス小隊の周辺にはタリバンがいたのは間違いがないものの、バイク乗りたちがタリバンであった証拠はなく、攻撃命令 には合理的確証がなかったというのが軍事裁判の結論だったようです。犠牲者が武器も無線機も持っていなかったことが根拠に なったようです。バイク乗り3人が偵察だった可能性はありますが、無線機がないと、それを戦闘部隊へ連絡しようがありませ ん。

 イラク侵攻の初期に、誤射事件は数多く起きましたが、当時、裁判が多発した記憶はありません。停止命令に従わない車を兵士 が攻撃したら、非武装の民間人だったという事件が何度も起きたのです。今回は小隊長が攻撃命令を出した点が問題視されたよう です。将校の行動にはそれなりの責任が問われます。

 イラクで起きたハディーサ事件は下士官が武装勢力を追いかけ、付近で寝ていた民間人を殺害した事件でした。この事件は被告 を刑務所にはいれなかったものの、有罪を認めさせました。ローレンスが長期刑になった理由を考える必要があります。

 ローレンスはバイク乗りをタリバンと判断して攻撃したわけですが、たしかにその判断は早すぎました。グスタフソンが見た武 装したタリバンが攻撃したバイク乗りと同じだとしても、攻撃時には武器などを持っていなかったのなら、小隊に脅威はなかった ということでしょう。結果としては、有罪判決はやむを得ないと考えます。

 2012年にはスタンリー・マクリスタル大将が変更したアフガン戦略により、すでに民間人の犠牲を出さない方針が打ち出さ れれており、それも判決に影響したはずです。アフガン戦は軍事的手法ではなく、政治的手法で解決されるとの見解も出ていたは ずです。そうした戦況の変化を考えず、部隊の安全を優先させた点が問われたのです。

 量刑はかなり重たく、ローレンスはそれが不満なのでしょうが、軍高官に対する批判は的外れです。

 軍司法による処罰は刑法による処罰と同じなので、アメリカ社会は厳しく見るのが普通です。イラク人捕虜を裸にして、首輪を つけて歩かせた リンディ・イングランド元上等兵も就職できず、生活保護に頼って生活することを強いられたといいます。彼女は命令に従っただ けでしたが、それで許されることはありませんでした。

 処罰が厳しすぎる感はありますが、それは秩序ある軍隊を維持するために必要なことです。

 自衛隊には、そういう厳しい処罰はなく、社会もまた甘いので、こういう事件が起きるようなところには部隊を派遣すべきでは ありません。

 

 


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