シリアのイスラム国拠点がほぼ壊滅
放棄されたテント、車両、空爆から隠れるためのタコツボが、シリアのイスラム国グループの領域の最後の断片から立ち退いた部分に残されたすべてだと、military.comが報じました。
金曜日にAP通信が入手した独占映像はイスラム国グループと彼らの家族によって最近明け渡されたバグホズ村(Baghouz)の小さな包囲地帯の一部を示しました。この地域は9月以降、アメリカの支援を受け、最近3方向から街へ前進して包囲したシリア民主軍(Syrian Democratic Forces)の攻撃下にありました。
大半は家族である数千人の民間人とともにいる数百人のイスラム国戦闘員は、シリア民主軍が交互に軍事敵圧力を加え、外へ出るために立ち退く時間をみとめたあとで、イスラム国の支配地域から立ち退いています。これまでの2週間で、多くの戦闘員がこれらの避難者の中にいたとみられます。
しかし、一部のイスラム国戦闘員は未だに村の中の包囲地帯にしがみつき、戦うと誓っています。
ワシントンでは国防高官が3,500〜4,000人の成人男性を含む約20,000人の人々が2月20日以降、バグホズ村から出てきたと見積もります。国防総省の基本原則の下で名前を明かせない当局者は、女性と子供を含めた20,000人のほとんど全部がイスラム国の支援者や信奉者とみられると言いました。
シリア東部にあるバグホズ村はイスラム国が保持する本当に僅かな領域で、それはかつては「カリフ」と呼ばれるイラクとシリア両方にまたがる地域の上にイギリスの広さの領域を占有しました。イスラム国を破壊する同盟国の努力はシリアの約8年間の内戦の最中に行われました。
米国防高官はアメリカとシリア民主軍は、イスラム国領域の最後の一片に隠れたイスラム国戦闘員と提携した民間人の数だけでなく、戦いを仕上げるためにかかる時間の総計を非常に過小評価したといいました。高官は現在の状況に基づくなら、さらに2週間かかっても驚かないといいました。
高官はシリア民主軍は約5,000人のイスラム国戦闘員の捕虜を持つと考えられるといいました。その約4,000人はイラク人とシリア人です。その他の約1,000人は数十カ国から来た外国人戦闘員だと高官はいいました。
AP通信が入手したビデオ映像は、シリア民主軍の一部で、主にクルド人民兵の人民防護隊(the People's Protection Units)の戦闘員が水曜日に撮影しました。映像は過激派の背後に遺された放棄されたテントと車両、空爆から身を隠すためのタコツボ、武器とその他の物品を示しました。
散らばった衣類の切れ端、毛布、弾薬箱と、焼けたピックアップトラックと数台のオートバイがみられました。
3月1〜2日の同盟国の重爆撃に守られ、シリア民主軍は住民が立ち去るための回廊を遺して、包囲されたテントの野営地へ前進しました。空爆の間、弾薬貯蔵庫て武器を詰め込んだ車が攻撃目標になり、少なくとも2日間続いた巨大な爆発と火事を起こしました。ビデオ映像の中で、火事はいまだに、爆発で火がついたいくつかのテントでくすぶっていました。
その作戦に続いて、次の4日間で数千人の住人と多くの戦闘員がバグホズ村を立ち去りました。しかし、金曜日は小さなグループだけが出ただけで、新たな攻勢が計画されていたとの推測を起こしました。
避難した民間人は、食料が不足し、空爆とシリア民主軍の砲撃を逃れるために地下に隠れさせられた、村の中のひどい状態を説明しました。彼らの多くは、その戦術を擁護した民兵グループの意志の固い支援者でもありました。
避難者は北部の難民キャンプに送られるか、戦闘員と疑われる者は勾留施設へ移動されています。アメリカが率いる同盟国は避難者のふるい分けと尋問に参加しています。
支援グループの「The International Rescue Committee: IRC」は木曜日だけで少なくとも6,00人の女性と子どもがバグホズからアル・ホル(al-Hol)の難民キャンプに到着し、2日間の避難者の総計を12,000人にしたといいました。IRCは、キャンプは12月からここに到着した55,000人で限界点に達したといいました。
キャンプの人口総計は、支援活動家がテントと資源の不足で圧倒される中、現在65,000人です。少なくとも大半が子供の100人の人びとが、栄養失調と低体温の組み合わせのために、アル・ホルへの途中や到着直後に死亡しました。240人の同伴者がいない子どももキャンプに到着し、同様に多くは重症を負っていました。
これとは別に、シリアのもう一つの側で、トルコの国防大臣は金曜日、トルコ兵とロシア兵は2カ国が緩衝地帯を作ったシリア北西部、イドリブ地域(Idlib)のパトロールをはじめるだろうといいました。
フルシ・アカー(Hulusi Akar・トルコの国防大臣)は、イドリブ地域、アフリン地域(Afrin)のトルコの空域の使用に関する制限が解除されたとも言い、これらの地域の安全を守るためにドローンや航空機が使われる可能性があると合図を送りました。
ロシアとトルコは9月にシリアの反政府派の最後の主要な拠点、イドリブの停戦を仲介しました。合意はシリア政府の攻勢を逸らしたものの、アルカイダ傘下の民兵が競合する武装勢力から町と村を奪い取ったので、緊張が高まりました。
いくつかのトルコのニュースチャンネルでの生中継のコメントで、アカーはロシアはイドリブの外側の境界線をパトロールし、トルコは緩衝地帯の内側をパトロールするだろうといいました。
元の記事はこちらに掲載されています。一番観たいビデオ映像は含まれていません。
これで組織的な抵抗はほぼ終わりでしょう。残った細胞が単発のテロ攻撃をするだけになります。しかし、こういう組織はしぶとく生き残り、民衆の中に隠れて存在し続けるものです。当面、米軍はシリア駐留を続けることになります。さらに小さい拠点が見つかれば、米空軍が空爆を行い、それから地上軍が制圧する形になるためです。
長くかかりましたが、イスラム国の政治的意図はほぼ打ち砕かれました。彼らはアルカイダから分派して、自分たちのカリフを創ろうとしました、その戦略はそもそも矛盾していました。テロ組織が国家と同じように領土を持てば、それはアキレス腱を抱えるのと同じです。領土を守るための戦いに終始することになるからです。
もともと、イスラム国は矛盾した存在で、居場所にこだわらずに戦う方が、まだ生き残るチャンスがあったと私は思っています。
APが掲載した写真には、手荷物を持って徒歩で移動する避難民が写っています。彼らの多くはイスラム国支援者です。そういう者たちでも、保護はしなければなりません。「自己責任」といった切り捨て方はできず、人道的な支援を行わなければなりません。
現在の日本で声高に強硬論を叫ぶ人たちに一番欠けているのは、こういう活動に対する理解です。中にはテロリストの味方だから殺せという者もいるかも知れません。それは戦争犯罪だということを、彼らは知る必要があります。
一方で、トルコとロシアがシリア反政府派の弾圧を強めています。彼らはシリア政府の援軍となり、アサド大統領を助けています。暴力的な弾圧を防ぐ努力はすでに回復不能なところまで来ています。平和国家のはずの日本はこういう事態になにもしません。この構図こそは私がずっと気にかけているものです。
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