墜落したF-35を外国が奪えない理由

2019.4.19


 military.comによれば、極東で墜落したステルス戦闘機F-35Aの残骸を発見するために競う諸外国についての憶測は根拠がないと、アメリカと日本の当局は述べました。

 日本の航空自衛隊が所有する失われた航空機とそのパイロット、細見彰里3等空佐(Maj. Akinori Hosomi)の捜索は木曜日に続いていると航空自衛隊報道官は言いました。

 航空機は4月9日午後7時30分の直前に日本の北東の本拠地、三沢航空基地の東約85マイル(約136.8km)に墜落しました。捜索チームは約2時間後にジェット機の左と右のラダー部品を見つけました、

 それは世界中で第5世代戦闘機のA型のはじめての損失です。短距離離着陸能力がある米海兵隊のF-35Bは9月にサウスカロライナ州のボーフォート(Beaufort)にある海兵隊航空基地の近くで墜落しました。

 メディアの報道はアメリカの敵対者が最初に航空機を見つけて、極秘の装備と情報を活用する可能性について推測を提示しています。日本で三菱重工業によって組み立てられ、行方不明の航空機は合計で105機のF-35Aを入手する日本の目標の一環で、アメリカから入手されました。(訳註 F-35Aを105機入手は誤り。F-35AとF-35B合わせて105機です)

 沖縄タイムスは木曜日、バハマ船籍の深海支援艦、ヴァン・ゴッホ(the Van Gogh)が那覇の米軍港に停泊したと報じました。記事はF-35の残骸を回収するためにチャーターされたかもしれないことを示唆します。

 ビジネスインサイダーは火曜日、外国勢力が最初に残骸を手に入れるかもしれないと報じました。

 「ロシアや中国が墜落したF-35を回収したら、特に両国が米戦闘機に対抗するために専用の彼ら自身の第5世代戦闘機計画を持つ事実を考えると、それは大きな諜報上の思いがけない利益です」と記事は述べます。

 国防誌の「The War Zone」の編集者、テイラー・ロゴウェイ(Tyler Rogoway)は墜落の直後に「日本のF-35のひとつが太平洋の底にあるままなら、我々は冷戦以降最大の海中のスパイ活動と対スパイ活動作戦の一つを見ることになるでしょう」とツィートしました。

 しかし、アメリカと日本の当局はこうした恐れに水を差しています。

 「その他の国が残骸を見つけようと競い合うことについてメディアに多くの見当違いの推測が出ています」と米軍当局は水曜日に電子メールで言いました。「今まで我々はそれを見ていませんが、我々は監視を続けます」。

 日本の岩屋毅防衛大臣(Defense Minister Takeshi Iwaya)は4月12日、記者に外国の航空機と船が失われた航空機を探す証拠は出ていないと言いました。

 「我々はわが国を取り巻く地域での外国の航空機と船舶の活動を24時間365日監視していますが、いかなる変わった事例も確認していません」と、彼は中国やロシアのような国が航空機をサルベージしようとすることについての質問に答えて言いました。

 ハワイの太平洋フォーラム(Pacific Forum)の事務局長、カール・ベーカー(Carl Baker)は外国の敵対者は航空機の電子機器、外面、センサーとコンピュータシステムに興味があるだろうと言いました。

 しかし、航空機を手に入れるためには、水上船とダイバーが必要で、ある程度の時間がかかるため、隠れたサルベージ活動は不可能だと彼は言いました。


 海底からF-35Aを引き揚げるにはサルベージ船が必要です。その前には沈没している機体を発見するため、海底探査を行う船、間違いなく航空機かを判断するための深海艇も必要です。

 1974年、アメリカが沈没したソ連の潜水艦、K-129を引き揚げた「プロジェクト・ジェニファー」では、潜水艦の位置を確認するために米海軍は原潜ハリバットを使いました。ハリバットは探査装置を備えていて、正確な探査を行えます。こうした装置がない場合、ソナーで潜水艦らしい突起を探し、さらに深海艇で間違いないかを確認したり、サルベージの方針を検討することになります。

 こういう活動をしていれば、当然、目につきますから、外国が引き揚げようとしたら、分かってしまいます。見えないように潜水艦を使っても、水中も監視しているので無意味です。

 プロジェクト・ジェニファーでは、サルベージの様子を外から見えないようにしたので、ソ連は引き揚げられた潜水艦を見られませんでした。だから、秘密のうちに引き揚げられたのです。

 岩屋防衛大臣は4月12日の記者会見で潜水艦救難艦「ちよだ」で捜索を行っていると述べています。これで墜落機らしい場所を探して、深海救難艇で機体を確認します。サルベージは別の船に任されるでしょう。

 時間さえかければ、機体を回収することは可能だと考えます。外国に持っていかれる恐れはありません。

 


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