ロシア元提督が日光浴の隊員を擁護
military.comによれば、ロシアの退役提督は「戦争をするときもあれば、日光浴のときもある」と、先週、駆逐艦が米誘導ミサイル巡洋艦チャンセラーヴィルと接触しそうになったとき、日光浴をしていたロシア人の隊員を擁護しました。
この引用文は、ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones)の「まだ戦いをはじめていない」、オリバー・ハザード・ペリー(Oliver Hazard Perry)の「我々は敵に遭遇。我らのものとした」みたいな米海軍の伝説とはまったく関係がありません。
しかし、ロシア海軍元参謀長で、現在は軍事アナリストのバレンティン・セリヴァノフ退役提督(Adm. Valentin Selivanov)は、ロシア海軍隊員が日焼けするときと戦うときに精通しているのを明らかにしたいようです。
「Sputnik」によれば、月曜日のロシアのメディアへの発言の中で、セリヴァノフ元提督は、巡洋艦をくつろいだロシア軍艦と近接した遭遇につながった貧弱な操船航海術でチャンセラーヴィルを批判するロシア当局の反応を繰り返したようです。
「Sputnik」には日本語版もありますが、いま調べたところではセリヴァノフ提督の発言は載っていませんでした。かわりに、米艦はパニックでロシア艦はリラックスしていたとの記事を報じています。(関連記事はこちら)
しかし、記事の写真を見ると、ロシア艦の航跡の方が幅が広く、やはり右方向へ移動していたように思われます。
セリヴァノフは軍事アナリストとはいえ、ロシア政府と歩調を合わせていて、政府系アナリストの一人に過ぎません。日本にも似たような立場の人は大勢います。
北欧諸国とNATO軍のBALTOPS演習に抗議するための発言ですから、そういうものだと受け止めればよいだけです。
BALTOPS演習には、アメリカ、イギリス、エストニア、オランダ、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、トルコ、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、ラトビア、リトアニア、ルーマニアが参加します。万一、ロシアが西進した場合に、効果的な防衛を行うための演習です。
冷戦時代のNATO軍とワルシャワ条約軍の対峙と似た構図です。NATO軍は攻撃を受け止めつつ後退し、反撃に転じる戦略ですが、ロシアはそれを祖国侵略の準備と考えるのです。
このように、防衛のための活動が緊張の激化につながる場合もあります。単純に防衛を強化すれば安心とはいえません。日本の一部政治家がいう「防衛は最大の福祉」は、常には成立しません。
軍事で白か黒かの二元的な活動見方は危険です。日本人は抑止力という言葉を好んで使いますが、抑止が成立するのは、相手が理性的にこちらの戦力を評価して理性的に判断できる場合にしか成立しません。追いつめられた相手には別の選択肢があります。いわゆる「死なば諸共」で抑止どころか共倒れになる危険があるのです。
ちなみに、記事中のジョン・ポール・ジョーンズはアメリカの提督で、引用文は1779年のフラムボロウ岬の戦いで敵から降伏を勧告されたジョーンズが「まだ戦いをはじめていない」と答えたことで知られます。オリバー・ハザード・ペリーは1813年のエリー湖の戦いでイギリス軍に勝ち、戦闘報告の中で「我々は敵に遭遇。我らのものとした」と書いたことで知られます。
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