接近阻止・領域拒否の突破は無駄?
military.comが「新アメリカ安全保障センター(the Center for a New American Security: CNAS)」の新しい報告によれば、ロシアや中国の複雑な防衛ネットワークを突破するための米国防総省の計画は時間の無駄で、未来の戦場で米軍の打倒を招きかねないと報じました。
国防総省の2018年の国防戦略は、アメリカの最大の2つの競争相手であるロシアと中国を打倒するために、米軍のすべての部署を新しい戦争計画を作る方向へ置いています。
国防総省は、最新の接近阻止・領域拒否(A2/AD)ネットワークからアメリカの攻撃の有効性を低下させるため、これら2つの敵対国が開発したGPSと軍事通信を打ち負かす複雑なジャミング用兵器まで、近代化の努力と作戦のコンセプトの多くに焦点を当てているところです。
CNASの国防プログラムのシニア・フェロー、クリストファー・ドウアティ(Christopher Dougherty)著の「Why America Needs a New Way of War」によれば、これは間違いです。
「A2/ADネットワークが引き起こす課題は、アメリカの国防コミュニティで多くの者に、それらを中国とロシアにとっての作戦の中心として誤って認識させました」と6月11日に公表された報告書は述べます。
この考えが敵のA2/AD能力を打倒するためだとするならば、「間違ったことに焦点を当てさせられています」と火曜日にドウアティはMilitary.comにいいました。
「誰かが盾を持っている戦いに入ったら、すべての時間を剣を彼らの盾へ叩きつけることで費やしません」と彼は言いました。「盾を回り込む方法を見つけようとします」。
CNASに参加する前、ドウアティは4年間、「国防長官直属戦略・戦力開発部(the Office of the Under Secretary of Defense for Policy in Strategy and Force Development)」で勤務し、戦略を未来のシナリオに置き換え、それからそれらのシナリオの要請に合致するために統合部隊の能力を評価するために働きました。
「このプロジェクトは本当に私がそこでやった多くの作業を越えて成長しました」とドウアティは言いました。彼は1997年から2000年まで陸軍の第75レンジャー連隊第2大隊でも勤務しました。
ドウアティは報告書の中で、国防総省の現在の戦争のやり方は湾岸戦争時代後から引き継がれたもので、「ロシアや中国に対するありそうな戦争で本当に機能しない」と述べます。
「あいにくと、新たに発生した安全保障環境が生んだ国防総省の多くの課題への対応は、これまでのところ、多くは国防総省が直面する、冷戦に引き続いて浮かび上がったアメリカの戦争のやり方は、大国が競争する時代では機能しないだろうという問題の体系的性質と基本的な意味を完全に把握していないために断片的かつ不活発です」。
「これは米軍が大差で世界で最も強力だという状況を招いています」と報告書は続けます。「そして、いまだ彼らは中国やロシアとの未来の戦争で負ける危険を冒します」。
「世界のイラクとユーゴスラビアのような地域的な脅威はもはや主要な競争相手ではない」という現実を完全に受け入れることに国防総省が気が進まないことは、破壊的な戦略の結果により、アメリカがありそうな戦争で負けたり、後退する結果になりかねないと、報告書は述べます。
報告書の中で、ドウアティはアメリカの現在の戦争のやり方を分析します。それは敵軍を抑止する作戦から、戦力の構築と政権の目標の攻撃と指揮・統制・通信・コンピューター、情報、監視、偵察(C4ISR)まで及びます。
しかし、火曜日に彼は4つの重要な分野に焦点を当てました。
・敵対国が選んだ時と場所で効果的に戦う
米軍の指導層は長らく定型句「我々が選んだ時と場所で戦え」を用いているとドウアティは言いました。
「私はこの主張は、常に正しいなら、中国とロシアのような国に対してはますます誤っていると考えます」と彼は言いました。「これらは十分な軍事能力を持つ大国であり、多分、もし戦争がこれら2カ国のうち1カ国の間と合衆国との間に勃発したら、それは彼らが選んだ時と場所であるでしょう」。
・情報を巡る戦いを重要視しろ
「我々は過去に我々がやったように、支援的な努力としてそれを扱うのではなく、情報を巡る戦いに焦点を置かなければなりません」とドウアティは言いました。
情報とデータは我々の生活のあらゆる面をつうじて流れます。戦争も同じだと、彼は言いました。
「海兵隊指揮官のロベルト・ネラー大将(Gen. Robert Neller)は最近言いました。「ネットワークの活動を得られて、すばやく決定する側は、未来の戦争でかなり大きなアドバンテージを持つだろう」とドウアティは言いました。「彼は実際に正鵠を射ていました」。
・安全な聖域はない
「我々は聖域なしで作戦を行う方法を学ばなければなりません」とドウアティは言いました。「それが半ば阻止可能な長距離攻撃を通じてや非キネティックの手段を通じてであれ、本土内で我々に到達して攻撃できる競争相手です。彼らははるばると我軍を……はるばると海を越え、彼らが塞ぐ必要がある港と飛行場を母国の彼らの基地から攻撃できます。だから、我々は考え出さねばなりません。その仮定の下で我々がどう作戦を行うかを?」。
・領域を支配せずに敵の侵略を打ち負かす方法を開発せよ
「湾岸戦争で、それはイラクの防空を破壊し、支配を確立し、それから我々自身のスケジュールで合同部隊を移動するために、軍隊が中に入り、構築する上で我々のために非常によく機能しました。しかし、中国やロシアに対しては、この手法はあまりにも遅いでしょう」とドウアティは言いました。「我々が優位のレベルで動員するときまでには、彼らはすでにそれが何であれ占領しているでしょうし、彼らは強い立場から紛争を解消しようとしているでしょう」。
「だから、我々はまずネットワーク全体を倒そうとするのではなく、機能する防衛ネットワークや接近阻止・領域拒否の内部で必要とする致命的な効果を成し遂げる方法を考え出さなければなりません」。
しかし、ドウアティの報告書は、ロシアや中国との戦争のために準備をするための各軍による努力には言及しません。
「いくらかの作業はなされていて、様々な軍とさまざまな構成員の至る所で、私が見込みのある成長のツルと呼ぶものはあります」と彼はいいました。「私は陸軍の未来コマンド(Futures Command)は確かに見込みがある発展だと考え、海兵隊戦闘研究所はたくさんの本当によい仕事をしていると考えます」。
すべての軍はマルチドメイン作戦に集中する合同ドクトリンを開発するために作業していて、陸、海、空、サイバー、宇宙の領域で活動するために部隊を準備することを目標にしています。
「マルチドメイン作戦は、私はそれはうまく行くと思いますが、よいスタートだと思います」とドウアティはいいました。「私はほとんど、いかなる特定のコンセプトをも議論するのを避けようとしています。そうすると、それぞれ及びすべての軍のコンセプトを調べ、それからそれを議論する必要があるためです」。
彼はこの報告書は、国防総省、軍隊と民間人両方から大勢の人々を一緒にして、彼らに「あなたが持つグッドアイデアは何で、我々はそれらをなにか首尾一貫したものにまとめられますか?」と尋ねるよう意図した2年間の努力の最初のステップに過ぎないといいました。
ドウアティはCNASの国防プログラムは一連の深く掘り下げる議論と、情報戦争と競争相手がもたらす課題に焦点を置いた文書公表の先鋒だといいました。
「他のことと同じように、首を縦に振り、『我々は何年もこれを言ってきた』という少数の人たちがいるでしょう。不思議そうに顎を搔いて『興味深いね』という少数の人たちがいるでしょう。腕を組んで咳払いをして『すべてはうまく行っている』というもう一つの人たちのグループがいそうです」。
アメリカらしいやり方です。わざと従来のコンセプトに反する議論を行い、新しいコンセプトを生み出そうとするやり方です。
日本では、こうして生み出されたコンセプトが確立すると、誰かさんが輸入して、オウム返しに反復連呼して広めます。「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」がまさにそれ。
こうして日本の防衛政策はアメリカの後塵を拝し続けます。いまや自分で考える力はなく、アメリカに頼りっぱなし。宇宙空間で活動する部隊もそうです。アメリカでは宇宙軍の存在意義が疑問視されているのに、日本では誰も批判しません。アメリカがやっているから間違いがないとしか考えません。サイバー戦争も、安倍総理大臣がサイバー攻撃を受けたら自衛のための攻撃が許されると宣言するほどのめり込んでいます。
気がついたら、アメリカがコンセプトを捨て去っていて、日本が取り残されていたなんて可能性もあります。
他人任せの防衛哲学が日本の防衛の特徴です。
ドウアティの提言についても書きたいのですが、中東で起きたタンカー攻撃について書く必要があるので省略します。
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