違いすぎる日米の訓練環境

2019.6.26
追加 2019.6.27 12:15


 military.comによれば、数百人の海兵隊員はこの夏、大都市訓練センターでイギリス軍兵士と合流します。そこは技術に精通した敵と民間人でいっぱいの人が多い街で戦う海兵隊員の能力を試すでしょう。

 ノースカロライナ州に拠点を置く第8海兵連隊第3大隊K中隊は8月に、インディアナ州、バルターヴィル(Butlerville)近くのマスカタタック都市訓練センター(MuscatatucK)でドローン、ロボット、その他のハイテク装備を試験するでしょう。

 彼らは数週間、地下トンネルをくぐり抜け、模造で人通りが多い繁華街のセンターで模擬射撃を行うでしょう。彼らは敵対者と対面し、敵対者は現在戦いに容易に持ち込める既製のドローンとその他の装置で装備されるでしょう。

 それはメトロポリス計画(Project Metropolis)と呼ばれ、指導者たちが市街戦のための海兵隊員の訓練方法を転換する4年間の努力のはじまりです。この努力はバージニア州、クァンティコ(Quantico)に拠点を置く、海兵隊戦闘研究所(the Marine Corps Warfighting Laboratory)が主導しています。これは、敵対者が戦術と弱点を学び、いまやつけ込む方法を知った中東での20年近い戦争に続いて、軍指導者が厄介な問題を特定したあとに来ます。

 イラン、中国、ロシアとの加熱する緊張のため、海兵隊はイラクとアフガニスタンで彼らが戦った武装勢力のグループよりも、ずっと洗練された敵に直面することがありそうです。
 
 今週、大量の偵察データを収集する高高度を飛ぶ能力をもつ大型の米海軍の無人機をイランは撃墜しました。ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)は、彼は作戦開始予定のわずか数分前に報復的な攻撃を中止したと言いました。

 2週間近く前、ロシアの駆逐艦がフィリピン海で米海軍の軍艦と接触寸前になりました。これは、海兵隊員とその他の米兵が、人口密集地でハイテク装備を持つ同格の軍隊と対決する状態にしかねないほんの一例に過ぎません。

 同じ時、2016年に公表された書面「海兵隊の作戦コンセプト(the Marine Corps' Operating Concept)」は、軍が市街中心部で戦うために配置されず、訓練されず、装備されていないことを見出したと、エドワード・レスリー少佐(Maj. Edward Leslie)はMilitary.comに言いました。

 「敵は変化しました」とレスリー少佐は言いました。「彼らは明らかにドローンへさらにアクセスしています。私は敵のセンサー能力が増していると考えていて、彼らは我々ができるのと同じに夜間に見ることができて、彼らは我々の技術につけ込み、我々の技術を破壊する能力を持っていると考えてます」。

 これらの新しい課題に取り組むのは海兵隊だけではありません。陸軍は地下で戦うために兵士を訓練するために5億ドルを費やし、指揮官たちがより複雑な戦闘シナリオに挑戦させられる大型訓練センターへ小部隊を送りはじめました。

 陸軍はほとんどの歩兵・近接戦闘部隊の若い軍曹たちが分隊を移動させたり、基本的な陸上ナビゲーションを行う方法を知らないことも見出しました。

 彼らが戦場で使うのに慣れていたあまりに多くのアドバンテージが踊り場に来ているため、海兵隊員たちが磨き続けなければならない技術があると、レスリー少佐は言いました。海兵隊員が得意である必要がある部屋の掃除ではなく、隣が学校や病院であるために、破壊することなく建物を貫通するための方法を見つけ出すような市街作戦全般ですと、彼は言いました。

 「私はそれが我々が(メトロポリタン計画で)得ようとしている価値だと考えます」。


次世代の戦闘


 この夏に海兵隊員とイギリス海兵隊員が使う訓練センターは、最大で7階と地下室がある数十の建物をもつ広大な1,000エーカーの基地です。複合施設は1マイル(1.6Km)以上の地下トンネルと活動中の農地も持ちます。

 都市中心部は兵士を訓練するためだけに使われるのではなく、さらに伝染病の大流行や自然災害の準備をするために政府指導者を助けます。

 K中隊はそこで過ごす月の間に4段階を完了するでしょうと、最近戦闘研究所の指揮官として着任したクリスチャン・ウォートマン准将(Brig. Gen. Christian Wortman)は先月、記者に言いました。新しいハイテク装備を持つK中隊の海兵隊員が洗練された装備を持つ同じ考えの敵軍と対峙する5日間の模擬戦をもって完了します。

 このコンセプトは先月、海兵隊員が同格の敵と戦う備えするのを助けるために指揮官ロバート・ネラー大将(Gen. Robert Neller)によって導入されました。演習に参加するイギリス海兵隊は侵略者に対抗するK中隊の努力に参加もし、同じ地域で活動するもう一つの部隊の役を演じもすると、レスリー少佐は言いました。

 メトロポリス計画は海兵隊が「シー・ドラゴン2025(Sea Dragon 2025)」のコンセプトの一部として行った数年間の実験の上に築かれるでしょう。レスリー少佐はインディアナ州での実験の次の区間で拾い上げられる問題は、海兵隊がより複雑な都市の設定で、未来の戦場で直面しそうなものに似せて試験されてきた新しい技術を使うためにさらに能力を試されると言いました。

 海兵隊員はドローンの操作員を組み込んだ異なる歩兵分隊の大きさで試験しています。いまは、彼らは50口径機銃を搭載する「遠征監視自動運転車(Expeditionary Monitor Autonomous Vehicle)」と呼ばれる戦術自動運転車両を操作するチームを編成する方法を調べるでしょうと、レスリー少佐は言いました。

 「それは大きなものになるでしょう」と彼は言いました。「我々は何がそれと共に機能しそうな編成表か、それが都市部用の車なら何が違うのかをを注視しているところです」

 誰かを危険な地域へ送らずに敵の位置を察知するために、ライフル銃分隊は無人航空システムを実験し続けるでしょう、とレスリー少佐はつけ加えました。彼らは建物の中を図面がする能力をもつ地上ロボットを使い、彼らが情報に圧倒されたときに海兵隊員の決断を試すでしょう。

 「我々が調べたいと本当に望むことは、どのように技術を統合し、都市部の環境でどう動作するかです」と彼は言いました。

 K中隊は非致死的システムとも活動するとウォートマン准将は言いました。それは民間人の犠牲があり得る地域にいる場合、彼らを変えられます。彼らは特攻ドローンと致死的な攻撃を発するためのより洗練されたツールを手に入れるだろうと、彼はつけ加えました。

 戦闘の状況の中で彼らが新しいシステムをうまく使えないのは望まないため、海兵隊員がこれらの新しいツールを素早く、簡単に使えるようにすることを理解することが重要だとウォートマン准将は言いました。

過去の体験への積み重ね

 海兵隊員は市街戦に馴染みがありません。

 海兵隊員はベトナムのフエ市(Hue)の戦い以降で最大の血まみれの市街戦をイラクのファルージャ(Fallujah)で経験しました。約12,000人の米兵は街をイラク政府から取り戻すための2004年の戦いの第二期を戦いました。武装勢力を捜索する家宅捜索を行った激戦の中、米兵82人が殺され、さらに600人が負傷しました。

 海兵隊員はこの戦いの間に学んだ、とレスリー少佐は言いました。しかし、過去15年で多くは変わった、と彼はつけ加えました。敵対者が安い監視ドローン、暗視ビジョンとその他の技術を手に入れたため、戦場で生死に関わる決断をなす軍指揮官たちは調整しなければなりません。

 目的は海兵隊員が戦場で優位を保ち続けるために武装し、熟達することだと、ウォートマン准将は言いました。

 あらゆる街は異なる性格も持つとレスリー少佐はつけ加えました。つまり、海兵隊員がファルージャで見たものは、新しい戦いで彼らが予想できるものと同じにはならないでしょう。

 イラクとアフガニスタンで戦闘作戦が減速して以来、海兵隊に大量の離職者もあったとレスリー少佐は言いました。今日の世代は驚くほど技術に精通していて、彼らはこの実験の間に新しい道具を使う方法を見つけ、それを使う新しい方法を発明しそうだと、ウォートマン准将は言いました。

 「我々は技術開発者が完全に予想しなかった創造的な方法へ、彼らがそれを適合させるため、海軍隊員と海兵隊員がこの技術の可能性について、我々に教えるようになると予測します」。


 訓練センターの面積は東京ドーム約87個分です。センターの映像がありました。

図は右クリックで拡大できます。

 基地の管理棟がたくさん並んでいるのではなく、それぞれのほとんどが典型的な建物を模した訓練施設です。住宅地、高層階の建物、鉄道駅、工場、破壊されたり水没した家屋などが並んでいます。研修に来た部隊が宿泊する兵舎もあります。さらには広大な空き地があって、そこでは航空機の墜落現場が再現できるように、本物の航空機が用意されています。

 高額の費用をかけて建設しているわけですが、訓練は実戦に近い形で行う方が効果があるとの考えから、本物そっくりの建物を用意しているのです。陸上自衛隊も全国各所に市街地訓練場を建設しています。宮城県にある王城寺原演習場の写真を見ると、数棟の建物が並ぶだけの訓練施設であることがわかります。これだと、単一の建物への突入訓練はできても、市街地での戦術を学ばせることはできないということになります。まして、地下道の移動などはできないでしょう。

図は右クリックで拡大できます。

 東富士演習場の市街地訓練場のビデオ映像を見ると、この建物が単なるコンクリートとブロックで造られていて、色も塗られていないことがわかります。ホテルを模したらしい建物のドアには「客室2−4」という表示がありますが、本物のホテルなら、こういう表記ではないでしょう。

 こういうところに日米の訓練の考え方の違いが出ています。米軍は過去の経験をもとにそれを訓練場に再現して、新しい戦術の研究のためにも使います。日本の場合、その目的がよく分からない。単なる予算の問題ではなく、考え方の問題だと思うのです。

 


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