ロシア艦が米艦に急接近の示威行為

2019.6.9


 military.comによれば、米海軍はフィリピン海で誘導ミサイル巡洋艦チャンセラーズビル(Chancellorsville)がロシアの軍艦と危機一髪だったことを示すビデオ映像を公表しました。その一つは、緊迫した遭遇の中、シャツを脱いだロシア人の隊員が日光浴をするのを示すようです。

 海軍は金曜日の朝、ソーシャルメディア上で、合計3分間近い2つのビデオ映像をシェアしました。それはロシアの駆逐艦が第7艦隊の指揮官が「危険な機動」と呼び、チャンセラーズビルにエンジンを後進に入れさせた、緊迫した瞬間を示します。

 最初の映像は、艦がもう片方へ危険なまでに接近したときに、日光浴しているらしいシャツを脱いだ男性たちが、ウダロイ級駆逐艦アドミラル・ヴィノグラドフ(Admiral Vinogradov)の船尾に乗っているのを示します。



 海軍当局はロシアの軍艦がチャンセラーズビルの50〜100フィート以内(約15〜30m)に近づき、艦と乗員を危険にさらしたといいます。

 「危険な行動はチャンセラーズビルが全エンジンで全力後進を行い、衝突を避けるために機動を行わせました」と第7艦隊は声明でいいました。

 海軍作戦部長ジョン・リチャードソン提督(Adm. John Richardson)は声明で「フィリピン海でのロシア駆逐艦の艦長による振る舞いは無責任で無謀でした」といいました。



 「この無分別な機動」と海と空でのロシア人による過去の行動は「世界が責任があり信頼できる大国に期待するものに合致しません」といい、彼らの行動は国際法がすべての国に活動を認める海と空の自由と開けた利用を支援することでアメリカを躊躇わせませんとつけ加えました。

 巡洋艦はロシア駆逐艦が背後から、そして右へ機動して、増速し、艦に接触するギリギリまで近づいたとき、ヘリコプターを回収しながら、同じ針路と速度でいました。

 ロシア艦との接近遭遇は、海軍がロシア軍と3日間であった2回目でした。火曜日、ロシアのSU-35に3回迎撃された海軍のP-8A「ポセイドン」は、地中海上空の国際空域をとんでいました。海軍当局は1つの通過は危険だったと言いました。

 チャンセラーズビルの事件で、「我々は、この相互のやりとりの間のロシアの行動はプロらしくなく、国際的に認められた海洋の慣習だけでなく、海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREGS)に反していると考えます」と第7艦隊は声明でいいます。

 ロシアの報道機関が伝えた声明で、ロシア太平洋艦隊はアメリカの貧弱な操船航海術を非難しました。

 声明によれば「アメリカの誘導ミサイル巡洋艦チャンセラーズビルは突然コースを変えて、駆逐艦アドミラル・ヴィノグラドフの進路を横切り、艦の50m以内へ来ました」。「国際無線周波数での抗議がアメリカ艦の指揮官へ行われました。艦長はこうした行動の受け入れられない性質について警告されました」。

 ロシアとの最新の勃発はアメリカとNATO同盟国18カ国とパートナー国が主要な年次演習「BALTOPS」を準備するときに来ます。演習は6月16日にリトアニアで米海兵隊による着上陸を呼びものにします。

 BALTOPS演習は通常はロシアの航空と海洋の資産によって追跡されます。

 「我々はいかなる偶発的事件も準備しなければなりません」と米第2艦隊指揮官、アンドリュー・ルイス中将(Vice Adm. Andrew Lewis)はいいました。

 国防総省の記者との電話会談で、ルイス中将は、演習に参加する約50隻の船が「BALTOPS 2019」のためにドイツのキール港(Kiel)に集結していて、演習は6月21日まで行われるといいました。

 ルイス中将は、アメリカは今のところロシアによる変則的な活動は探知していないと言いましたが、BALTOPSの副指揮官、イギリスのアンディ・バーンズ少将(Rear Adm. Andy Burns)は「バルチック海の国であると認識しており、洋上でいくつかの相互的なやりとりを予測します」といいました。

 しかし、バーンズは同盟国はロシア人がプロのやり方で振る舞うことも期待しているとつけ加えました。

 ルイス中将と第2艦隊にとって、「BALTOPS 2019」は新しい指揮部の作戦能力のテストをします。これは47回目のBALTOPS年次演習ですが、第2艦隊がヨーロッパ地域に戻って最初のものです。

 第2艦隊は2011年に任を解かれましたか、モスクワとの緊張が高まったとして、2018年5月にリチャードソン提督によって再建されました。

 ルイス中将は、彼は第2艦隊のスタッフとして要員約100人を持っているといいました。艦隊はバージニア州のノーフォーク(Norfolk)に拠点を置き、安全保障環境がより課題となっている大西洋で、そして極地域へて機動する能力を強化することに集中するために編成された、といいました。


 ロシア軍全軍にBALTOPS演習に抗議するため、機会をとらえて示威行為を行えと命令が出ているものと考えられます。地中海上空での接近はシリアに関する緊張でも説明がつきますが、フィリピン海での接近はそれでは説明がつきません。

 ロシアはヨーロッパ地域からの侵攻を病的に恐れていて、その特質はクリミア半島併合で発揮されました。

 バルチック諸国もロシアの侵攻を警戒していて、NATO軍の支援を受け、核シェルターの建設などで防ごうとしています。その一環としての演習ですが、ロシアは着上陸作戦演習は自国に向けられたものとみなし、侵略の準備としか思いません。

 冷戦中にも、NATO軍の「前進防衛」は、どう説明しようがわが国への侵攻準備だとソ連は主張しました。こうした警戒感から、フィリピン海での危険な操船が行われたと考えられます。

 ビデオ映像を見るかぎり、ロシア艦が接近したのは間違いありません。

 最初のビデオ映像はカメラを大きく動かしているので、相互の動きがよく分かりませんが、おかげで日光浴をする隊員が確認できます。

 2つ目のビデオ映像はカメラの動きが小さいので、相互の動きが分かりやすく、ロシア艦後方を写しているので、航跡が曲がっていて、右に舵を切ったらしいことが見てとれます。

 かなり近づいたことが分かりますが、15〜30mは尋常な数字ではありません。

 過去の事例では2013年にミサイル巡洋艦カウペンスの進路に中国艦が割り込んで問題になりました。この時の接近距離は91mでした。(過去の記事はこちら

 海軍は自軍の中では洋上で競争をすることがあります。

 同じカウペンスは2009年2月に駆逐艦ジョン・マケインと沖縄沖でレースを行いました。カウペンスはジョン・マケインを追い越してから前方を横切りました。この時の接近距離は明らかではありません。艦長のホーリー・グラフ大佐は別件でパワハラで解任、降格の処分を受けました。(過去の記事はこちら

 あと、日光浴の隊員は特に軍事的な意味はありません。艦橋が非番の隊員が日光浴をしていることを知らず、米艦を見つけたので追跡に入ったのでしょう。よくいえば、艦長が部下の健康のために日光浴を奨励していたのかも。

 


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