戦闘機パイロットはより被爆しやすいか?

2019.8.1


 military.comによれば、米空軍は戦闘機パイロットの間の前立腺ガンにリスク増加があるかを調べ始めました。独立メディアのマクラッチー(McClatchy)による新しい調査は問題があるかもしれないことを示します。

 マクラッチーが得た報告書によると、戦闘機パイロットの研究は、空軍参謀長デビッド・ゴールドフェイン大将(Gen. David Goldfein)によって、彼が2018年に懸念を持つ退役軍人福祉団体に接触されたあとで要請されました。

 空軍の研究の核心は、コックピットの中で前立腺ガンのリスク増加につながり得る放射線へ広範な被曝があるかどうかの疑問でした。

 研究は「パイロットは紫外線のイオン化した放射線にとても大きな環境的な被爆をします……(戦闘機パイロットは)唯一、コックピット内部の非イオン化した放射線へ被爆をします」と言いました。空軍の研究はオハイオ州、ライト・パターソン空軍基地(Wright Patterson Air Force Base)で第711ヒューマン・パフォーマンス飛行隊(the 711th Human Performance Wing)により行われました。

 空軍の研究は、戦闘機パイロットはパイロットでない者よりも前立腺ガンを発症しやすくはないことを見出しました。しかし、空軍はその評価の限界を認めました。「現在の研究に影響した制限の多くはデータの入手とデータの品質に関係しました。ガンの症例の入手は不完全だったかもしれません」と空軍はいいました。

 マクラッチーによる空軍退役軍人の間の前立腺ガンに関する退役軍人健康庁(Veterans Health Administration)のデータの別の評価は、より極端な結果を示しました。前立腺ガンと診断された空軍退役軍人の人数は2000年から2018年までに3倍近くになった一方、一般の退役軍人コミュニティの診断は同時期で2倍でした。マクラッチーが入手したデータは、パイロットとそうでない者を分けませんでした。

 空軍の研究は、評価した1986年から2006年12月の間に任官した空軍戦闘機パイロット4,949人と戦闘機パイロットではない空軍将校83,483人の間で異なるタイプのガンで977件の症例を報告しました。同じ空軍の研究で更新された分析は退役軍人健康庁のデータを含みましたが、前の結論と変わりありませんでした。

 その時間枠で戦闘機パイロットの間に2件の前立腺ガンの症例があっただけで、それは退役軍人がコミュニティの中で見ているものを反映しないかもしれないと空軍は認めました。

 戦闘機パイロットのコミュニティは「小さく、結束の堅い従属するコミュニティです」と空軍は言いました。「彼らのコミュニティのガンの発生率が(空軍)全体と同じでも、それはそのようには経験されないでしょう」。

 退役軍人医療システムでの数字は別の物語を語ります。

 情報公開請求に基づいて、マクラッチーは前年度にどれだけの前立腺ガンが診断されたか、退役軍人医療システムで治療を受けたかのデータを入手しました。

 マクラッチーは、退役軍人医療システムは2000年度に空軍退役軍人に12,123件の固有の前立腺ガンの症例を、2018年度には195%増加の35,772件の固有の症例を報告したことを見出しました。1つの固有の症例は、ガンを治療するためにその年にどれだけ病院の予約をしたかに関係なく、各年度にガンごとに1件として数えた1人の退役軍人を意味します。

 全軍にわたって、前立腺ガンの治療は2000年度に131,350件、2018年度に266,594件と倍増しました。

 匿名でマクラッチーに語ったある空軍将校は、年齢グループは20代から40代の空軍兵で、評価は現役兵の医療記録に基づきます。前立腺ガンのはまだ現れていないかもしれず、空軍の研究の結果は評価の限界を反映している可能性があると言いました。

 彼らは商業エアラインで飛ぶ道を選ぶことが多く、会社の医療プランを使うため、戦闘機パイロットのグループは退役後に退役軍人の医療を使うことがより少ないかもしれません。よって、空軍はそれらの記録にアクセスできません。

 ほんの僅かな空軍兵しかガンを完全に追跡するのに十分に軍隊に留まらないことでも研究の結論は制限されます。ガンはほとんどが60代の男性にみられます。

 「我々はさらなる研究を検討しているところです」と空軍将校は言いました。

 空軍は海軍と海兵隊のパイロットを含めるつもりでしたが、相当の個体数を得ることができなかったと、空軍当局者はいいました。


 飛行機に乗っている間は、地上にいるよりもより多く放射線にさらされます。登山でも同じで、要するに、宇宙空間に近い場所に行くほど、宇宙線に含まれる放射線をより多く体に受けます。

 月に行った宇宙飛行士が晩年にガンになることがあるのは聞いていますから、戦闘機パイロットで同じことが起きても不思議はありません。商用機は機体が金属で、窓も小さいのですが、戦闘機のコックピットは放射線をあまり遮りません。商用機のパイロットよりも戦闘機のパイロットがより多くの放射線を受ける危険性は考えられます。

 東北地方の国道6号線は福島第一原子力発電所事故の避難区域内にありますが、いまは通行するだけなら可能です。ただし、四輪車に乗り、まっすぐ通過するだけです。二輪車は体が露出しているので被曝量が多いとして禁止されています。体の露出度は被曝量に密接に関係します。

 この研究はさらに進めて、確実な結果が出るまで続けてほしいですね。日本ではこういう研究はしないでしょうから、アメリカでの研究は大いに参考になります。

 


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