HIV陽性の隊員が除隊に抗議して提訴

2019.9.19


 military.comによれば、HIV陽性の米空軍隊員2人の弁護士は水曜日、連邦上訴審にトランプ政権に彼らに対する除隊手続きを続けることを禁止する差し止め命令を守るよう求めました。

 国防総省は、裁判官が空軍は「不合理」で「時代遅れ」の政策のもとで動いていると結論した判決に対して控訴しています。

 政策はHIVの隊員を免責することなく海外派遣を禁じ、継続的に軍務を続けることに「不適当」とみなされる結果となりました。

 治療はHIVが感染するリスクを減らすと認めているものの、司法省はリスクは、兵士たちがしばしば血液と接触する戦場で増幅されると主張します。中東、北アフリカ、中央アジアでの軍事作戦を統括する米中央軍は、HIVの隊員を免責することなく派遣を禁止します。

 第4米巡回上訴審の3人の裁判官は、司法省の法律家に、未だにHIVの治療において大きな進歩があるのに、軍事政策は未だに必要なのかについて広範囲に質問しました。

 「戦闘の背景にリスクがあります」と、司法省の民事部の法律家、ルイス・エリン(Lewis Yelin)は言いました。

 しかし、空軍隊員の弁護士、ゲオフリー・イートン(Geoffrey Eaton)は、戦闘におけるHIV感染の見込みは微小であり、派遣が制限されたり、除隊へつながるべきではないと主張しました。イートンは、科学とHIV治療の前進は軍の政策を時代遅れにしたと言いました。

 空軍隊員が提訴した2018年の裁判はHIVの隊員の派遣を禁止することに合理的な根拠はないと主張しました。彼らは、容易に適切な治療を受けられ、他者へ感染する現実のリスクはないと主張しました。

 司法省は準備書面の中で、彼らの職務部門が頻繁に彼らを派遣することを必要としていて、彼らの状態は、ほとんどの空軍隊員が行くと予想される中央軍の責任がある地域へ派遣することを妨げるために、2人の空軍隊員はもはや任務を遂行できないと空軍は決定したと主張しました。

 米地裁判事のレオニー・ブリンケマ(Leonie Brinkema)は2月に、男性たちが彼らの主張が裁判にかけられるまでは空軍に留まることを確実にするとの判決、仮差し止め命令を出しました。ブリンケマは将校として勤務する機会を拒否され、HIV陽性の状態のために除隊の可能性に直面しているというワシントン特別区の州陸軍の軍曹が提訴した別の裁判を審問するとも見込まれます。

 空軍隊員たちは訴訟の中で名前が出されず、ビクター・ボー(Victor Voe)とリチャード・ロー(Richard Roe)という仮名で示されます。裁判はラムブダ・リーガル(Lambda Legal)と、アメリカ現代軍事協会(the Modern Military Association of America)、ウィンストン・アンド・ストラウン法律事務所(the law firm Winston & Strawn LLP)によって提訴されました。

 「祖国に奉仕することは私の人生で最大の名誉で、私は強く感謝して、誇りに思うものです」とボーは弁護士が公表した声明の中でいいました。

 「この訴訟における私の仲間の隊員すべてと私が望むのは、軍務を続けられることであり、私たちが――我々のベストを――それが値するこの国に与えるのを妨げる不必要な制限なしに行うことです」と彼は言いました。

 上訴審はいつ判決を出すかを示しませんでした。


 これは日本では、特にネトウヨなんかは、一言の下に「HIV陽性の自衛官は解雇」といいそうな話です。

 しかし、地裁では連邦政府が負けており、この裁判も軍務を認める方向で進行しているようにみえます。この辺は、国民の軍務につく権利を最大限認めるアメリカ社会の特徴といえます。

 空軍隊員の個人情報が開示されていないので、彼らが戦場に出ることが多い職務かなどは分かりませんから、司法省の主張を評価することはできません。なので、コメントできることは少ないのですが、たとえ、エイズに感染していても勤務を認めようとする米軍の考え方は評価したいと思います。そして、外部の団体がそれを支援し、裁判を支援していることも、日本では起こりにくい動きであり、日本の民主主義の立ち遅れを実感させられます。

 


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