サウジ攻撃についての分析
military.comによれば、今月、サウジの石油製造施設の多くを破壊したドローンと巡航ミサイルの地を這うような群れは、数十億ドルの損害とレイセオン社のペイトリオットを含めたアメリカ製防空システムを打ち負かしました。この攻撃はこうした防衛システムの脅威に対する有効性について懸念を生んだと、アナリストたちはいいます。
イランやそれを代理する者が行ったとされる巨大なアブカイク石油製造施設(Abqaiq)と近くのアル・クライス油田(Al Khurais)9月14日の正確な攻撃は、アメリカからもたらされたホークとペイトリオットの隊列のサウジアラビアの防空システムの屈辱的な失敗だったと、ワシントン協会(Washington Institute)のアナリスト、マイケル・ナイト(Michael Knights)は言いました。
攻撃はアメリカ製システムのサウジの操作方法の欠点もさらしたと、先週、ワシントン協会の投稿の中で、イラク、イラン、ペルシャ湾岸国の軍事・安全保障問題の専門家のナイトは言いました。
「レーダー、ミサイル部隊と対空砲……巡航ミサイルに対して防衛するために必要な多くの機材は適切ですが、それらは明らかに十分に警戒せず、この打撃を回避するのに十分にしっかりと扱われていませんでした」と彼は書きました。
統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォード大将(Gen. Joseph Dunford)は、先週火曜日にロンドンへの移動に同行した記者たちに、空母リンカーン戦闘グループとB-52爆撃機「ストラトフォートレス」機動部隊でイランの脅威に対処している、この地域の米空軍と海軍は攻撃の群れを追跡しなかったと言いました。
「我々は共有すべき頭上からの映像を持ちませんでした」と彼は言いました。「我々は共有すべきものを追跡せず、我々は常に全中東にわたって瞬きしない目を持っていません」。
「我々の諜報・監視・偵察能力は定期的に我々に脅威となるものに焦点をおいていて、この地域で進行するすべてのものを見る必要はありません」。
ロシアのウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)は、この攻撃を最新のS-400ミサイルと防空システムをサウジへ売り込む機会として用います。
S-400を買うことで「サウジアラビアの政治的指導層は懸命な国家的決断をする必要があります」と彼は月曜日にアンカラで、イランのハッサン・ロハニ大統領(President Hassan Rouhani)とトルコのレジェプ・タイップ・エルドガン大統領(President Recep Tayyip Erdogan)との合同記者会見で言いました。
記者会見の写真はロハニ大統領がプーチン大統領が、NATOのメンバーのトルコが購入して、アメリカとの関係に亀裂を生じているS-400の能力を褒めちぎるときに笑うのを示しました。対抗して、アメリカはトルコへF-35ステルス戦闘機の販売を中止しました。
ダンフォード統合参謀本部議長(Dunford)、マーク・エスパー国防委長官(Defense Secretary Mark Esper)は、先週のドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)とのイランに関するホワイトハウスでの会議に引き続き、この攻撃は「十分に計画され洗練されていた」とよびました。
対応として、アメリカは、おそらくより多くのペイトリオットを含めて、より多くの兵士と資産を送るだろうと、彼らは先週金曜日の国防総省での記者会見でいいました。
ダンフォード議長は、派遣の詳細は米中央軍司令部とともに作成中で、今週末に発表できるだろうと言いました。彼は派遣する兵士の人数は数百人になるだろうと示唆しました。
当分の間、アメリカのイランへの報復攻撃はエスパー長官とダンフォード議長によってトランプ大統領に提案される、可能性のある選択肢の混合体の中にあるように見えません。大統領は先週、大統領執務室で記者たちに、初期のアメリカの反応は「自制」を示すだろうと言いました。
日曜日のトークショーで、マイク・ポンペオ国務長官(Secretary of State Mike Pompeo)は、イランが支援するフーシ派が初期に犯行声明を出したにも関わらず、再びサウジの攻撃を正面からイランの責任としました。
ポンペオ長官はABCの番組「This Week」で、イラン人は「明らかに油田を爆撃した」と言いました。
さらに「This Week」の中で、元国防長官ジム・マティス(Secretary Jim Mattis)は「これは(イランの)政権がその政策を実行する方法です。目新しいものはありません」と言いました。
https://abcnews.go.com/ThisWeek
マティスは、同盟国のパートナーシップにおいて、イランに対する「理路整然とした政策」を発展させる必要があるものの、差し当たりは「いまボールがある場所でゲームを行い」、外交に集中するだろうと言いました。
しかし、ポンペオ長官は先週、サウジアラビアに同行した記者たちに、この地域で米軍の資産を増強する計画を持つアラブ首長国連邦はもう一つの攻撃は「ほとんど成功しない」だろうという可能性を提示するのみだと言いました。
「我々はインフラと資源を、このような攻撃がなしてきたように見えるよりもより成功しないような、適切な場所に配置するのを確実したいのです」と彼は言いました。
サウジアラビアは現在、ブルームバーグ・ニュースによると1機が約10億ドルするペイトリオット部隊を少なくとも6個部隊を持ちます。しかし、アナリストたちは、システムは高く飛ぶ弾道ミサイルに対して防衛するために設計されていて、低く、ゆっくりとしたドローンと、亜音速で地を這う巡航ミサイルの群れには脆弱だと言いました。
ペイトリオットのようなシステムは、いわゆる「拠点防御」を意図していて、広域を傘のように防衛するようには設計されていないと、アナリストは言いました。
ロシア外乱に供給した「ガントレット(Gauntlet)」システムのような、小さく一握りの防空システムだけが、いまのところ、最新の低く飛ぶUCAV(無人戦闘航空機)と複雑で長距離を飛べる巡航ミサイルに対処するようにも意図されて展開されている、と先週、戦略国際問題研究所(CSIS)のアナリスト、アンソニー・コーデスマン(Anthony Cordesman)は報告の中でいいました。
非営利団体「GlobalSecurity.org」によれば、ロシアのTOR-M1 9A331-1「ガントレット」は、航空機、巡航ミサイル、精密誘導弾、無人航空機、弾道型の目標を迎撃するように設計された低〜中高度、短距離の地対空ミサイルシステムです。
CSISでアーレイ・バーク議長(Arleigh Burke Chair)であるコーデスマンは、UCAVと巡航ミサイルは、レーダーとその他の形式の探知を避けるために地形回避システムを使って地面を這う手段として使われるといいました。
この兵器は「最も高価な固定した工業、インフラおよび軍事目標を含める主要な目標に対して極めて精密に、遠く離れて到着する能力も持ち、主要な構成物を破壊するために比較的少量の爆発物を使う」と、彼は言いました。
ワシントン協会のアナリストのナイトは、ドローンと巡航ミサイルの正確さも指摘しました。
「17ヶ所の個別の着弾点がアブカイク施設に対して撃たれ、クライスはより少数(おそらく2ヶ所程度)でした」と彼は言いました。
「武器はとても正確でした。たとえば、アブカイクの30メートル幅の球状のガス・石油分離タンク12基すべてが、ほとんど真ん中に命中されました」と、ナイトは攻撃の分析を述べました。
攻撃のずっと前に、CSISのアナリストのセス・ジョーンズ(Seth Jones)は「サウジアラビアすべてはイランのミサイルに脅かされ、国に届く能力があるイランのミサイルの数はいかなるミサイル防衛システムをも事実上、圧倒しています」という報告を共著しました。
先週、CSISのポッドキャストの中で、ランド社の国際安全保障国防制作センター長(the International Security And Defense Policy Center)を務めたことがあるジョーンズは、攻撃はアメリカにとって戦略的ジレンマをもたらしたと言いました。
「私はイラン人は、アメリカの艦船、この地域のアメリカの基地に対して、直接であれ間接であれ軍事行動を行えば、我々がほとんど確実に武力を使って対応することを理解するに足るほど賢いと考えます」と彼は言いました。
「我々ではなく、サウジを攻撃したら。それは議論になりますね」とジョーンズは言いました。「我々は対応するのか?。サウジに対応させるのか?。どう対応するのでしょう?。サイバー作戦ですか?」。
「私はイラン人は、彼らがこれを行ったやり方を認識すると考えます。彼らが攻撃した目標がサウジなら、アメリカの対応はより困難ですが、イラン経済を破壊している制裁に対して継続的に代償を払い続けるというメッセージは伝わります」と彼は言いました。
ペイトリオットが拠点防御用の武器だということは知られていましたが、その欠点がまともに出たということです。
しかも、これまでは巡航ミサイルのような高額の兵器を使う必要があったのが、安価なドローンで間に合うのでは、下手をすると、イスラム国のようなテロ組織でも似たような攻撃を行えるということです。しかも、低速で飛ぶのでGPS誘導は巡航ミサイルよりは正確でしょう。
アブカイク石油製造施設では17基のタンクが攻撃されたとのことですが、ここにある大型の円形タンクは、衛星写真で見ると19基ほどあります。もしかすると、これらのすべてを狙い、2機のドローン(巡航ミサイル)が墜落したということかもしれません。つまり、安価な攻撃で、一つの石油施設を稼働不能にできるのです。
こうなると、対抗手段はレーザー兵器しかなさそうです。相手は低空で飛んできて、接近してから急上昇できるドローンです。レーダーに映ったら、自動的に、しかも瞬時に撃墜するしかなく、ミサイルですら間に合いそうにありません。高出力レーザー兵器はすでに実用化されていますから、それを使って撃ち落とすのです。
これは北朝鮮の弾道ミサイル政策にも影響を与えるかもしれません。イランは北朝鮮が日本の近くまで船でドローンを運んで、工業地帯を攻撃できる可能性を示したのです。開発費用がかかる弾道ミサイルよりは、ドローンの方が開発が簡単でしょう。しかし、我が国の政府はまったく関心を持っていないようです。
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