いかにして米陸軍は糧食を重視しているか

2020.10.10


 
 military.comが 米軍の戦闘糧食について報じています。

  MREを楽しんだことがあって、栄養や一日の推奨摂取量のような事柄に過度に関心があるという人は多くはない でしょう。

 それでも、米軍の調理済み食料(Meals, Ready-to-Eat: MRE)の一つ一つのラベル上には、兵士がとる固有の必須栄養量について注意書きがあります。それらはポウチ一つが丸一日分のナトリウムより多く含むことや、それを食べる と数日間は仮設トイレに急ぐ必要がないことを心に留め置かせます。

 陸軍は総カロリー、炭水化物、ナトリウムを含む全部の好きなMREまたはわずかな好きなMREの栄養情報を見られるように するデジタルの戦闘糧食データベース「ComRaD」を作っています。

  本当に食べている物に注意を払う隊員なら、野外で消費している物を理解するために強い注意を払えます。いま、 私たちはペパロニピザのMREから統合グループ糧食(the unitized group ration: UGR)、さらに寒冷気候と激戦用に特化された食料のすべてが実際に持つ栄養をよく調べ、確認できます。  あるいは、ネットにアクセスして、ハラペーニョチェダーチーズ・スプレッドがMRE全体のどこにあるかを調べられます。そ うです。デジタルで評価する時代です。

  ユーザー は糧食の中の食物成分すべての栄養情報も見られます。アジア風の牛ストリッ プに由来するセレンがどれくらいか気をつける人はいないものの、食物繊維みたいなその他の含有量には関心を持つべきです。

 データベースは多くの情報を提供しますが、かなりの制約があります。最も重要なものは、MREが一つだけの生産業者で作ら れず、異なる生産業者が異なる成分を使うため、ComRaDが各コンポーネントの個々の成分のリストは示さないということで す。

 成分をあてにするよりも、アレルギーがある兵士は各糧食のアレルギーの説明に注意を払います。それはComRaDのサイト に載っていません。

 栄養情報に本当に関心があるなら、ComRaDのサイトがどの民間の製造業者の栄養成分表よりもずっと信頼性があることを 知って驚くかもしれません。

 ラベルが貼られた食品の成分表は食品の実際の栄養値の20%以内でなければなりません。

  陸軍の実際の情報は、米陸軍環境医療研究所(the U.S. Army Research Institute of Environmental Medicine: USARIEM)が資金を手出した複雑で、高価な化学分析を用いて作られました。これは軍にとって重要であり、2015年のニュースリリースで二回言及されました。

 「ユーザーは100%化学的に分析された、個々のコンポーネント、完全な糧食の系列と個々のMREのメニューで栄養を摂取 できます」とUSARIEMの栄養学者、ホリー・マクラング(Holly McClung)はそのリリースでいいました。「だから、私たちは栄養データを確信します」。

  これらの栄養分析をみると、兵士は割合が高いようなのに気がつくでしょう。ライトツナの糧食の量が約 1,400カロリー、 炭水化物が180グラム、一日の脂肪推奨量が273%であるのをみると、息が止まるかもしれません。

 それはこういう値が一般的な民間人向けに設計された一日の値に基づくからです。

  しかし、MREに書いてあるように「一般大衆にくらべて、戦闘員には固有の栄養必要量があります」。糧食は戦 闘環境で活動 する者たち向けです。激しい活動でこういうカロリーを燃やすなら食べましょう。そうでないなら慎重に。軍隊が一日に3つの MREを支給しても、それは毎日常に3つ全部のMREを食べるべきということを、特に腸を大切にするならば、意味しません。

  ComRaDはあなたが腹に入れた物を教えますが、体の外に出す方法は教えません。中には何十年もカント リー・キャプテ ン・チキンを持ち歩いている者もいます。



  カントリー・キャプテン・チキンというのは、アメリカ式のカレーライスのことのようです。辛いので食べられ ず、手元に残っ てしまうというオチと思われます。

  それはともかく、以前にMREについて何度か取り上げていて、自衛隊の糧食を比較もしています。(過去の記事 はこちら 

 米軍のMREにはパッケージごとに栄養素が明記されていて、自己管理ができるようになっています。その点、自衛隊のには何 の記載もありません。その点を評価した憶えがありますが、やはり、米軍の MREがそういう意図を持って作られていること を、この記事で確認できました。

 自衛隊の糧食は長期間食べると口内炎になるとか、よい話を聞きません。米軍と違い、糧食の開発の専門部署は自衛隊にはな く、食を軽視しています。活動が国内だから、食べ物は手に入るという考えなのでしょうが、そんなことでよいのでしょうか。大 勢に行き渡る食料を確保するには、事前の準備が必要で、場当たり的な方針で足りるとは思えません。

 陸自は市街戦よりも野戦で戦うことを目指していたはずです。そんなところで食べ物が安定して手に入ると考えるほうがおかし く、調理済みの糧食の充実は不可欠です。長期間、山地の陣地にこもるなら、そのまま食べられる食料が必要なのはいうまでもあ りません。記事中にあるUGRのような特殊部隊向けの軽量のものは不要でしょうが、一般隊員向けの糧食はもっと工夫が必要で す。 そして、隊員にも栄養学の教育が必要です。

 


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