米軍の病院船は伝染病には非対応
military.comが
米海軍の病院船に関する記事を報じました。
コンフォート(USNS Comfort)とマーシー(USNS
Mercy)は計画された整備と医療要員チームの乗船を完了するのを急いでいるところです。装備が完了したら、コンフォートはニューヨーク港へ航行し、マーシーはロスアン
ゼルス港へ向かうでしょう。
準備命令は出されたものの、伝染病の流行がはじまったときに、両艦は定期整備と修理の最中だったため、いまのところ、艦の
出発について現実的な予定はありません。
コンフォートとマーシーは、決して流行の増加に対する根本的な解決ではありません。事実、それらはCOVID-19として
知られるコロナウイルスに感染した人を誰もまったく治療しません。そのかわり、艦は感染した患者を治療する病院の負担を軽く
するために、その他の症例を治療するでしょう。
コロナウイルス対応へのコンフォートとマーシー
の活用
姉妹艦は、ニミッツ級とフォード級航空母艦に次ぐ、海軍で3番目に大きな艦船です。
マーシーはワース(SS Worth)とよばれるサンクレメンテ級石油タンカー(San
Clemente)として誕生し、1980年代中期に病院船に転用されました。コンフォートもローズシティ(SS Rose
City)として知られる石油タンカーの転用です。
コンフォートとマーシー両艦は本質的に浮かぶ病院で、それぞれ1,000床の収容能力を持ち、血液バンク、死体安置所、酸
素生成装置をふくむ、普通の病院でみるあらゆるものを備えます。
艦は負傷兵を治療する任務を考えて、トラウマの症例を専門に扱うよう設計されています。艦はいろいろな理由で、伝染病の流
行を扱うためには設計されていません。艦には感染病患者を隔離する術はなく、それが非COVID-19の症例のみを支援する
ために派遣される理由です。
一部の積載された病床が実のところ上下に積み上げられていて、さらに伝染病流行への支援を難しくします。乗員用の寝台は3
段に積み上げられていて、艦はコロナウイルスが何時間か生き残れる金属製の手すりを用います。艦がそもそも使われるべきかど
うか疑問を持つ人もいます。
病院船が役立たずだったのは、これが初めてではありません。目撃者は、マーシーが危険なまでに近くを航行しながら、真珠湾
でアリゾナ記念館を実際に衝突したといいます。(関連記事はこ
ちら)
コンフォートとマーシーの派遣
2つの艦がユニークなのは、非戦闘員としてのそれらの地位を取り巻く法律です。それらは武器を持ち運びますが、防衛用の武
装だけで、それらは海軍飛行士、特殊作戦員や潜水艦や水上艦の将校などの戦闘技能を持つ海軍の隊員を輸送できません。
海兵隊員も艦上に配置されません。その結果、艦はほとんどが海上輸送司令部(the Military Sealift
Command)の民間人が搭乗します。コンフォートやマーシーに対する発砲はジュネーブ条約の下で戦争犯罪となるでしょ
う。
艦は母港では活動状態が低減されます。マーシーがサンディエゴの母港にいる間、コンフォートがバージニア州のノーフォーク
海軍基地(Norfolk)の波止場にある間、75人未満の乗員が乗船します。
始動すると、艦は通常5日以内で航行する準備をして、民間人の船員約60人と1,200人以上の軍医療従事者を迎え入れま
す。
コロナウイルス対応の間に病院の職員を配属する上で最大の問題は、彼らの多くは民間人の予備役で、これらの専門家を動かす
と、彼らを一般市民から取り除くということです。
コンフォートとマーシーの過去の活用
コンフォートとマーシー両艦は行動の共有を経験しています。両艦は砂漠の盾作戦と砂漠の嵐作戦の支援で派遣されました。
太平洋で主に活動するマーシーは、演習のためと人道主義の危機に対応するために定期的に派遣されます。コンフォートは歴史
的に、より多くの活動を経験します。1992年のハイチでの米軍の介入、民主主義援護作戦(Operation
Uphold
Democracy)を支援するために派遣され、後に2003年にイラクの米主導の侵攻を支援しました。コンフォートは訓練と人道主義演習も支援します。
艦が米国内に派遣されたのは、これが最初ではありません。コンフォートは9/11攻撃へ対応し、当地の病院を支援するため
にニューヨーク市へ派遣されました。艦はハリケーン・カトリーナ(Hurricane
Katrina)の後でニューオーリンズへ、ハリケーン・マリア(Hurricane
Maria)の後でプエルトリコへも航行しました。
病院船は戦争のための装備で、主に外傷にしか対応しないと、昨日の記事で書きましたが、この記事にはもっと重要なことが書かれています。
それはほとんどの病床が縦に積み重ねられていて、患者を隔離できないことです。これでは感染を防げません。乗員の寝台も3
段式です。個室にして、減圧装置を設けないと、伝染病患者は収容できません。そのためには船の大きさはさらに大きくする必要
があります。
伝染病患者を病院船に乗せて、沖合に送ってしまうという構想は明らかに誤っています。伝染病に対応した病院船では収容者数
を増やせません。それでは大規模な自然災害に対応できません。
アメリカではホテルを一時的に病院へ改造して、コロナウイルスに対応する方策もとられています。こういう策を講じるなどす
れば、病院船は不必要なのです。
|