アフガンの米人誘拐事件で新情報

2020.5.2



 military.comに よれば、アフガニスタンで今年早くに起きたアメリカ人請負業者の拘束後数日の間に、海軍特殊部隊が村を急襲し、タリバンにつ ながるハッカニ・ネットワーク(Haqqani)の容疑者たちを拘束し、米情報機関は男性と彼を拘束した者たちの携帯電話を 追跡しようとしたと、AP通信は報じました。

 誘拐をとりまく状況は不明のままですが、過去数カ月間にわたり複数の米当局者が説明した報じられていないマーク・R・フレ リックス(Mark R. Frerichs)の居場所を突き止める作戦を初期の努力について異なる観点から見直します。イリノイ州出身の請負業者の数ヶ月前の失踪事件は謎に包まれていて、事件は米 政府による議論はほとんど行われていません。

 新しい詳細は、アシュラフ・ガニー大統領(President Ashraf Ghani)と彼の政敵、アブドラ・アブドラ博士(Dr. Abdullah Abdullah)との権力闘争の仲介に失敗した後マイク・ポンペオ国務長官(Secretary of State Mike Pompeo)が不満を現した、カブールでの暴力的で政治的な内輪もめが、先月のアメリカとタリバンの和平解消を脅かすときに浮かび上がりました。

 ワシントンは和平合意の一環として、カブールにタリバンの捕虜を釈放するよう求めました。

 しかし、海軍の退役軍人のフレリックスは兆候がなく、それはアメリカとタリバンの指導層間の交渉の一部であり、彼の釈放は 和平の一部です。

 「タリバンは1月に私の兄弟を誘拐し、2月にアメリカはタリバンとの和平に調印しました。私の兄弟は取り決めの一部ではあ りませんでした。いま、私たちは数千人の捕虜を交換することでタリバンとアフガン政府と調整しているところです」と、フレ リックスの姉妹のカコラ(Cakora)はAP通信への電子メールの声明でいいました。「アメリカ人の人質をそれらの一つと できないはずはないでしょう?」。

 フレリックスの父親のアート(Art)は声明で、彼はドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)とポンペオ長官を信じるものの、「彼らは、私の息子が帰るまでアメリカは黙らないとタリバンと交渉する人たちにいうだけでよい。彼は退役軍人です。ここはアメ リカです。我々は人々を置き去りにしません」といいました。

 国防総省と米特殊作戦軍はコメントしませんでした。救出活動はFBI主導の人質救出統合部(Hostage Recovery Fusion Cell)を通じて調整されています。同部は声明で「マーク・フレリックスと海外で人質になっているアメリカ人すべてを帰国させるためにパートナーたちと活動している」と いいました。同部は情報を持っている人に出てくるよう求めました。

 国務省はアフガニスタンで誘拐されたアメリカ人について承知していて、アメリカ人の健康、安全と防衛はトランプ政権の最優 先事項だと言いました。

 フレリックスの家族に助言している元米国家安全保障当局者は、彼はワシントンの和平特使のザルメイ・カリザッド (Zalmay Khalilzad)に状況の解決とフレリックスを帰国させるためにことを特に求めるといいました。元当局者は、トランプ政権と活動してからは、率直に話すために匿名を希 望しました。

 米当局者は、イリノイ州、ロンバード(Lombard)に住む57歳のフレリックスはある時期に、歴史的にタリバンとアル カイダ民兵の隠れ家だった山岳地域、いわゆる部族地域(tribal region)のパキスタンとの国境に沿う東部の州、コースト(Khost)、で拘束されていたと考えます。

 元国家安全保障当局者は、フレリックスは約十年間商業プロジェクトで働いてアフガニスタンにいて、米政府の請負業者ではな いといいました。

 公式な要求がなされていないものの、米情報当局はフレリックスは、アフガニスタンでタリバンと連携し、2012年に外国テ ロ組織に指定されたハッカニ・ネットワークのメンバーに拘束されたと考えます。

 ハッカニは暗殺と身代金目当ての誘拐を行うと知られますが、タリバンの指導層はフレリックスの拘束を認めていません。

 持ち場を放棄してタリバンに拘束された陸軍兵士、バウ・バグダール(Bowe Bergdahl)を捜索したチームを率いた、フロリダ州選出の共和党議員で陸軍の退役軍人のマイケル・ワルツ上院議員(Rep. Michael Waltz)は、タリバンは頻繁にアメリカ人の人質をパキスタンへ越境して彼らを移動できるようになるまで隠したといいました。

 彼は、彼は「タリバンが和平を真剣に考えているとの気配について本当に懸念している」といいました。

 米政府高官によれば、フレリックスの活動に関与したシールズは、1月下旬に中央アフガニスタンのガズニー(Ghazni) で墜落して死亡した米軍人2人の遺体を回収するために活動して過ごしました。

 米軍無人機による航空機の残骸の上空偵察を制限した厳しい冬の天候も、2月3日夜の後に後のシールズの作戦の間、当局に不 利に働きました。視界がほとんどない期間が、既知のタリバンの居場所に対する計画された情報収集活動を結果的に遅らせたと、 米政府高官はいいました。

 天候がよくなると、シールズはヘリコプターに乗り、非公開の場所へ飛びました。高官は作戦保安上の理由で州の正確な位置を いいませんでした。

 急襲について知る米政府高官と国防総省筋は、匿名を希望した上で、シールズの小隊はタリバンの抵抗に遭わず、施設に入る と、彼らはハッカニの民兵とされる数人を拘束し、武器の貯蔵を発見しました。

 米政府高官によると、ハッカニのメンバーらしい者たちはフレリックスの居場所について尋問され、最後にアフガン政府に引き 渡されました。

 2月4日に、米情報当局者はフレリックスはおそらく、タリバンの歴史的な隠れ家、パキスタンのクェッタ(Quetta)に 移動したとの報告を受けたと、当局者2人はいいました。しかし、米政府高官によると、その情報は特殊作戦を行うには十分な信 憑性がないと判断されました。

 報告は、当時米当局が持っていた無線傍受、携帯無線や携帯電話のような装置から送信される電気信号から集められる情報とも 矛盾しました。

 米政府高官と国防総省当局によれば、米情報当局はフレリックスと彼を拘束した者たちのものと疑われる携帯電話からの位置パ ケットの受信を続けましたが、痕跡は2月5日に途絶えました。

 「作戦上、誘拐で時期が重要な理由は、情報源を利用して、より早く、理想的には直ちに素早く接近できるからです」と米政府 高官はいいました。「現時点ではそうではありません。彼は連れ去られた場所から2軒先にいるかもしれませんが、我々には分か りません」。

 この種の事件は何度も起きていて、珍しくもありません。アメリカでは、こうした現在進行中の危機がいくつも起きて いるのが普通です。新型コロナウイルス一つにすら満足に対応できない日本政府とは負荷が違います。両政府の能力の差を、日本 国民はもっと自覚して、態勢の改善を求めていくべきです。

 いま、日本人の多くは日本政府の対応に満足しているようですが、国外に目を向ければ、不備ばかりが目立ちます。政府を批判 するなという人達は、そうした事実を知らないのでしょう。

 自国民の保護も、日本の態勢は低質です。国民が海外で誘拐されるような人は「自己責任」とみなすので、政府も大した努力を しません。新型コロナウイルスでも武漢から邦人を避難させるのに使われたのは民間機でした。日頃、中国に配慮していないから 自衛隊機の派遣は中国政府が拒否したのです。イギリスが軍用機を派遣したのとは大違いです。

 記事中にあるバグダールの救出も、彼の捜索中に米軍人2人が回復不能の怪我を負いました。それでも、バグダールの裁判で証 言した負傷者の一人は、なぜ彼を探そうとしたかと問われ、「彼はアメリカ人です。彼には母親がいます」と証言しました。

 イラクやシリアで日本人が人質になったとき、日本では「自己責任」だから、日本政府は何もするべきではないという意見が続 出しました。それはアメリカなどとは大きく違う態度です。米軍には行方不明の隊員の身元を科学的に特定し、故郷に戻す常設の 部署があります。日本は千鳥ヶ淵の墓苑に遺骨を納めるだけです。

 自国民だけでなく、他国の人間も人道の観点から保護するという発想がない日本が、世界をリードするような大国になれないの は、ごく当たり前の話です。

 

 


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