アメリカが国際裁判所をシャットアウト

2020.6.12



 military.comに よれば、ホワイトハウスは木曜日、当局がアフガニスタンで米兵が関与した戦争犯罪容疑の政治的な動機がある捜査とよぶものに ついて、国際法廷のメンバーへの経済制裁を承認しました。

 米軍隊員を捜査し、起訴しようとするあらゆる努力に直接従事する国際戦犯裁判所当局者もアメリカへの入国を禁じられると、 ホワイトハウス首席報道官は声明でいいました。ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)は今週、大統領命令に署名し、国際裁判所が米軍隊員へ及ぼす脅威を「国家的危機」と呼びました。

 マイク・ポンペオ国務長官(Secretary of State Mike Pompeo)とウイリアム・バー司法長官(Attorney General William Barr)と共にマーク・エスパー国防長官(Defense Secretary Mark Esper)は木曜日、アフガニスタンでの米兵の犯罪容疑の捜査について演説しました。アメリカは米軍隊員について裁判所の司法権を決して受け入れないとエスパー長官はい いました。

 「わが国と当政権は、わが国に奉仕するアメリカ国民が不法な捜査を受けることを認めません」と国防長官はいいました。「そ の代わり、我々は我が国民による不正行為容疑についての情報が、我々が過去に一貫して行ってきたとおりに、我々が適切な処置 をとれるように米当局に引き渡されるよう求めます」。

 3月の国際刑事裁判所の判決は、アフガニスタンで米兵による可能性がある不法行為の調査の開始を認め、ニューヨークタイム ズ紙は「トランプ政権を激怒させた」と報じました。裁判所はジェノサイド、戦争犯罪と人道に対するその他の犯罪を巡って人々 を調査し、裁判を行います。

 裁判所の首席検察官は2017年に、米軍隊員とCIA当局者がアフガニスタンとその他の地域で、特に2003年から 2004年の期間に、紛争に関係する勾留者に対する拷問、残虐な待遇、個人の尊厳への凌辱、強姦、性的暴行に関与したという 合理的な基礎となる十分な情報があるといいました。捜査はアフガン政府とタリバンのメンバーが関与した可能性がある犯罪も調 べています。

 ニューヨークタイムズ紙によれば、裁判所が問題の捜査に着手するのを認める3月の判決は、米軍が国際刑事裁判所によって戦 争犯罪の起訴の被告となる可能性に直面する最初となります。

 しかし、エスパー長官は木曜日、アメリカは主権と容疑を適正に捜査する責任を保持するといい、その可能性に反論しました。 アメリカの司法システムは、アメリカ人が「国際刑事裁判所やその他の行き過ぎた政府間機構ではなく」米国憲法の下で責任を問 われることを確実すると、彼はいいました。

 「米軍の男女は国際刑事裁判所に決して出廷しないし、これから先、無責任な国際機構の審判を受けることはありません」と、 彼はつけ加えました。



 ある部分では、米軍は米国内と国外で随分と態度が違うことがあります。

 ジョージ・フロイドの事件ではじまった全国的デモでは憲法を忠実に守る態度をみせ、大統領と反目すらしましたが、国際社会 の要請には抵抗を示します。

 米軍の軍規が厳しく、不正行為には極めて厳格な裁判をするのは疑いがありません。それに比べて、諸外国には身内に甘い軍隊 もあります。

 おそらく容疑の中の拷問は軍ではなくCIAの行為でしょう。捕虜を尋問する軍の情報部は、捕虜と信頼関係をもつことを重視 しています。第二次大戦で米軍の捕虜になった日本兵の話を聞いても、それは裏付けられます。

 CIAは拡張尋問システムという手法を持ちます。要は水責めであって、板に縛り付けた捕虜の頭部を水を入れた容器に漬けて 擬似的な溺死を起こすものです。

 軍はジュネーブ条約の遵守義務がありますが、軍ではないCIAは義務がないので、拷問が可能だという訳です。2014年に 民主党が公表した調査報告では、対テロ戦争で拡張尋問システムは有効な情報を捕虜から引き出していないと結論しています。

 自国の軍司法システムにアメリカ人が自負を感じるのは当然です。ロシアはジュネーブ条約を尊重せず、戦争犯罪を告発しよう としません。他国からいわれる筋合いはない、先に、自国の軍隊の軍司法システムを改善すべきだというのが、アメリカ人の意識 にあります。

 この点で、どれだけ証拠を積まれても、戦争犯罪を認めようとしない日本政府とは性質が違います。いわゆるそれは「愛国無 罪」の意識であり、行為は国のためなのだから処罰すべきでないという特権意識です。

 それが戦争犯罪を生んでいるから国際刑事裁判所などで裁こうという動きになったのですから、アメリカも本来は賛成すべきで す。それを無責任な政府間機構と呼ぶのは正しいとはいえません。

 世界には未だに独裁国もあり、民主主義のレベルが低い国もあるから、国家とて簡単に信用できないのも事実です。それでも内 向きな態度で何でも解決しようとするなら、それはさらなる悪循環になります。

 同様に捜査対象になっているアフガン政府やタリバンが同じことを主張する原因を作るからです。

 本来、日本はこういう国際司法の分野で力を発揮すべきですが、対米追従と国益の追求が基本方針なので、手を出すことはない でしょう。このアメリカの決定も支持するでしょう。

 日本人は勝ち負けだけで武力紛争を考えがちですが、戦争に関連する法律を整備することも大事だと知るべきです。アメリカの 間違いから学び、自ら動かないと、前進はありません。

 


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