憲兵隊は騒乱現場に出ず待機を継続

2020.6.3



 military.comに よれば、米全土で任務のために100,000以上の州兵が動員され、法執行機関を支援するためにワシントン特別区 (Washington, D.C.)内にいる州軍は、抗議が続く火曜日夜に約3,000人に達すると、州軍局(the National Guard Bureau)はいいました。

 ジョセフ・レンギェル空軍大将 (Gen. Joseph Lengyel)は、インディアナ州、サウスカロライナ州とテネシー州の追加の州兵約1,500人がワシントンでの対応活動に参加しており、完全に動員された特別区の州軍 を増強し、すでに現場にあるユタ州とニュージャージー州を増員しています。

 「間違いなく、これは非常に歴史的な州軍の対応です」とレンギェル大将は火曜日朝の電話で記者にいいました。

 ミネアポリス市(Minneapolis)での白人警察官によるジョージ・フロイド(George Floyd)の5月25日の死に引き続いた国家的抗議運動の一部であるワシントン特別区での月曜日の夜の抗議は、抗議に参加する人が増えたのに前夜よりも暴力が減ったと、 レンギェル大将はいいました。

 一方、月曜日にこの地域に派遣された現役兵は特別区の外に留まっていて、地区で法執行機関を支援する命令を未だに受けてい ないと、国防総省高官はいいました。

 「この地域に現役部隊がいて、警戒態勢に置かれています」と当局者はいいました。

 当局者は、兵士たちは首都圏の中にある基地に配置されていますが、地区の外で、支援の要請を待っているとつけ加えました。 Military.comは月曜日に、第18空挺軍団の憲兵がノースカロライナ州のフォート・ブラッグ(Fort Bragg)から派遣され、それは警戒態勢の現役兵合計200〜250人だと報告されたと報じました。

 もうひとりの高官は、兵士10人がほとんどの環境で国内の法執行能力において用いられることを禁止する民警団法 (Posse Comitatus)の問題を避けて、軍の抗議への対応を制限することに重大な関心があると指摘しました。

 「我々はこれが州兵の対応を、どの軍隊もそれに備えて配置しなければならない程度にすることを切に願います」と高官はいい ました。

 特別区の州軍指揮官、ウィリアム・ウォーカー少将(Maj. Gen. William Walker)はコロンビア特別区に動員されたすべての軍隊を任されていると当局者はいい、州知事との会話の中で、統合参謀本部議長マーク・ミレー陸軍大将(Army Gen. Mark Milley)が責任者だといったドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)が月曜日に出したコメントと明らかな矛盾をいいました。ウォーカー少将がライアン・マッカーシー陸軍長官(Army Secretary Ryan McCarthy)に答えていると火曜日の電話でいいました。

 月曜日の抗議で州兵は誰も負傷していないと、レンギェル大将はいいました。

 特別区で、一部は法執行機関を支援するために予備の武器とライフル銃で武装しているものの、州軍の隊員は催涙ガスとゴム弾 のような非致死性武器を携帯していると当局者はいいました。

 「昨晩、地区のあらゆる場所に州兵1,200人がいましたが、法執行機関には遠く及びません」と別の当局者はいいました。 「我々は支援をしていました……大抵は同数で法執行機関と共同で配備されました」。

 全土で約42,000人の州兵が新型コロナウイルス対応に関連する任務のために動員されたままです。別の18,000人以 上は現在、全土の街で配置されて、抗議で法執行機関を支援するために動員されていると当局者はいい、残りの者たちはより伝統 的な任務を支援しています。いくつかの州では、州の優先順位と要請に対する必要性を熟考して決定し、特別区へ兵士を送る要請 を拒否しました。これらの州にはニューヨーク州とデラウエア州などが含まれます。

 現在の任務は、ハリケーン対応のために50,000人が動員され、別の100,000人がイラクとアフガニスタンに派遣さ れた、2005年のハリケーン・カトリーナ(Hurricane Katrina)以来、最大の州軍動員と同等です。しかし、100,000人の州兵が現在作戦に従事していても、すべての任務を実行する余裕があると、当局者はいいまし た。

 「通常の国内が予想する活動において、誰もがこれらの事柄を取り扱うのに十分だと、すべての州がそう報告します」と当局者 がいいました。「我々は明らかに積極的な派遣の責任を支援しています。簡単にいえば否です。我々は不足していません。我々は 誰も家に戻すことを考えていません」。

 昨日、ミレー議長の役割がはっきりしていないと書きましたが、まったくその通りだったようです。ウォーカー少将が 実際の責任者で、これは米軍の指揮系統からすると、本当だと思われます。この程度の騒動で統合参謀本部議長に責任をもたせる ことは普通はありません。

 また、トランプはビジネスマン時代に、自分の言い分を通すために何でも利用していました。たとえば、事故で亡くなった部下 が取引相手にいっていたことを、本人がいないのを利用して捻じ曲げ、自分に有利に変えてしまうといったやり方です。しかし、 統合参謀本部議長が責任者だといえば、デモ隊がビビると考えるのは、あまりにも浅はかです。

 一方で、軍人たちは武力行使を避けたいと考えています。それが米軍の伝統です。連邦軍が国内で出動するのは、州軍か連邦軍 が反乱を起こした場合くらいしか考えられません。市民による騒乱は法執行機関が対応するのが普通です。

 日本での報道を見ると、この辺がまったく触れられていません。市民と軍が衝突の寸前みたいな記事ばかりです。

 参考までに民警団法の条文を示しておきます。時間があればさらに詳しい説明も紹介したいと思います。

合衆国法律集(United States Code: USC)第18編第1385条
「特別に憲法や法律が承認した場合と環境の下を除き、故意に陸軍や空軍の一部たりとも民警団としてやその他の法律 を執行するために用いた者は、本条の下で罰金か2年以上の懲役を科す」。
 

 


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