首都に展開した州軍が撤退へ
military.comに
よれば、陸軍当局がワシントン特別区での抗議を統制するために現役兵による支援の要請が「ギリギリのところまで来た」といっ
た数日後、もはや彼らの支援は不要で、多くの州軍兵士の分遣隊は地区から撤退しています。
先週、11州の州兵たちはホワイトハウス周辺を暴力に変えた5月31日の抵抗のあと、特別区の州軍と法執行機関を支援する
ためにこの地区に殺到しました。全土で怒れる群衆は、ミネアポリス警察により拘束されたあとで死亡した非武装の黒人、ジョー
ジ・フロイド(George Floyd)の死に引き続いて街角を占めました。
ライアン・マッカーシー陸軍長官(Secretary of the Army Ryan
McCarthy)は、土曜日の45,000人近くが参加した平和的なデモのあとで声明を出しました。
「過去48時間にわたり、各機関と州軍は傾向に注目し、性質が非常に平和的になったと判断し、まず、特別区の州軍を支援す
る州外の州兵の撤退の計画を、それから特別区の州軍全体を最終的に引っ込める道筋をどうつけるかの計画を練り始めました」と
マッカーシー長官は電話会見で国防担当記者にいいました。
この発表は、トランプ大統領(President
Trump)が日曜日に、兵士を帰還させるとツイートした数時間後にありました。
「私は州軍にワシントン特別区から撤退するプロセスを始めるよう命令を出したところだ。現在、街は完全に統制下にある」と
トランプはいいました。「彼らは帰還するが、必要になればすぐに戻れる。昨晩は抗議は予想したよりもずっと少なかった!」。
ミシシッピ州、フロリダ州、ユタ州、インディアナ州の州軍が最初に帰州し、日曜日の午後5時に出発する」とマッカーシー長
官はいいました。
計画は「これらのすべての部隊は明日午後5時までにすべて出発する」というものだ、とマッカーシー長官はいいました。
5月8日に始まって、ミズーリ州、サウスカロライナ州、オハイオ州、アイダホ州とテネシー州の州軍も帰州するとマッカー
シー長官はいい、彼は州外の部隊すべてが72時間以内に帰還するのを望むとつけ加えました。
メリーランド州とニュージャージー州の州兵は昨日出発を始めたとマッカーシー長官はいいました。特別区の州軍は日曜日は連
邦と首都警察の支援を続けます。
合計で約5,240人の州兵が特別区に集まり、約1,500人の州兵が道路障害物を設置し、ホワイトハウスの敷地に侵入す
るのを防ぎ、市内の主要な記念碑を保護したと、特別区の州軍指揮官、ウィリアム・ウォーカー少将(Maj. Gen.
William Walker)はいいました。
5月31日夜の抗議がすぐに制御不能になって、暴力的な抗議者が略奪し、記念碑を壊し、バリケードを襲撃したあとに部隊の
増強は行われました。
「日曜日の夜、治安部隊がほとんど圧倒され、建物が破壊され、傷つけられ、放火され、人々は(ホワイトハウスの)フェンス
を越えようとしました」とマッカーシー長官はいいました。
兵士5人がデモ参加者が投げた瓦礫が頭にあたって頭部を負傷したと、マッカーシー長官はいいました。襲撃は兵士1人が重症
になる結果を招いた、と彼はつけ加えました。
特別区の州兵は米パーク警察(the U.S. Park
Police)とシークレットサービスの後ろに配置されたと、ウォーカー少将はいいました。
「我々は法執行機関ではありません。我々は保護し、守るのです」とウォーカー少将はいいました。「その晩、陸軍兵士と空軍
兵士は国を守っていました。我々は首都を守り、防衛の最終ラインでした……数回、彼らはラインと州兵を突破しましたが……ラ
インを維持し、人々がホワイトハウスの敷地内へ前進させませんでした。
月曜日、国防総省はフォート・ブラッグ(Fort Bragg)とノースカロライナ(North
Carolina)の第82空挺師団第2大隊、第504パラシュート歩兵連隊、ニューヨーク州フォート・ドラム(Fort
Drum)の第91憲兵大隊の約1,600人の現役兵に市内へ移動する必要があった場合のためにこの地域へ派遣を命じまし
た。
「我々は周辺地域から州兵を出動させることで、素早く市内にたくさんの支援を配置できるかは分かりませんでした」とマッ
カーシー長官はいいました。
さらに特別区に拠点を置く、「オールドガード(The Old
Guard)として知られる第3歩兵連隊の兵士800人も待機状態に置かれました。
現役部隊すべては、抗議が非暴力を続けるので帰隊させていると、マッカーシー長官はいいました。
「我々は現役兵をそこへ持っていくギリギリのところまで来ましたが、行いませんでした」とマッカーシー長官はいいました。
「我々は行いたくなかったので、彼らは(街の)はずれにいました。一度エスカレートすれば、極めて、極めて困難になると分
かっていたので、国防総省はそれを望みませんでした」。
そのかわりに、他州へ何度も電話をかけたあと、州兵たちは車両に飛び乗り、我々を支援するために首都へ来てくれて、我々は
それにとても感謝しています」。
軍指導者たちはいくつかこのことは計画通りに行かなかったと認めます。
国防総省と州軍は月曜日夜、陸軍のヘリコプターがデモ参加者の上を危険なまでに低く飛んだとの報告に関係する事件を調査し
ています。
マッカーシー長官は、彼がヘリコプターを市内のデモ活動を「観測し報告する」ために使うことを承認したといいましたが、事
件が調査中の間なのでそれ以上は述べませんでした。
「15~16件の事実調査が進行中で、今週早くにはより多くを知ることになるでしょう」とマッカーシー長官はいいました。
ウォーカー少将は「群衆を追い散らすため」にヘリコプターを低空飛行させる命令はなかったとつけ加えました。
マッカーシー長官は、軍隊の対応は今週の下院軍事委員会で彼と他の陸軍指揮官が証言するときにさらに議論されるだろうとい
いました。
「我々がアメリカ国民とコミュニケーションを図るためにもっと努力しなければならないのな明らかです」とマッカーシー長官
はいいました。
「月曜日と火曜日の間、『第82空挺団がここにいるのを見た』との多数のテキストメッセージと電話がありました。確かに、
右肩には戦闘記章をつけ、現役を務めて移籍してきた州兵がたくさんいますから、この種の事件の霧の中では混乱を起こし得ま
す。私はただ忍耐を求めます。そして、何が起きたのか説明する機会をください」。
動員された兵数について、私も少し混乱していましたが、この記事で整理できそうです。
動員された州兵は約5,240人で、市内でバリケード設置や警護にあたったのはその中の約1,500人。現役兵は周辺地域
から来たのが約1,600人、川向うの駐屯地内にいる第3歩兵連隊が兵士800人。合計7,640人で、週末のデモ参加者は
45,000人ですから、群衆の方が6倍多いことになります。しかも、現役部隊は特別区の中へは入らないようにしていまし
た。第3歩兵連隊とホワイトハウスの位置関係は図を見てください。行こうと思えば行ける位置にありますが、それを自制してい
るところに米軍の意思を感じます。
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図は右クリックで拡大できます。 |
ところで、第3歩兵連隊がホワイトハウス方面へ向かうには3つの橋が経路になります。もし、でも参加者たちが部隊の移動を
阻止しようとして、これら3つの橋やその他の道路で座り込みを始めたら、部隊は出鼻をくじかれ、大きく迂回して目的地へ向か
うことになります。強行突破をすれば、天安門事件みたいになりますし、米軍はそのような事態を避けることを念頭に置いていま
す。他の現役部隊も同様の阻止を受ける可能性もあります。そんなことも軍指導部は考えていたはずです。
トランプの「彼らは帰還するが、必要になればすぐに戻れる」という言葉にはゾッとします。よほど国民を恐れているとしか思
えません。友人たちの間でも「物知らず」として知られる大統領は本気で軍隊でデモ隊を鎮圧させようとしました。こういう大統
領はこれまでにいませんでした。ミレー統合参謀本部議長がトランプの命令を強く拒絶して、激論になったとの報道もあります。
ホワイトハウスに侵入されかかったとはいえ、そんな人は数万人のデモ隊のごく一部です。市内にいたのは州兵が最大
1,500人ですから、彼らが分散配置されても抑えられる程度の暴徒しかいなかったのです。
残念ながら、現役兵が郊外のどの辺にいたのかが、いまのところ分かりません。なので、米軍の対応の全貌を評価することはで
きません。
マッカーシー陸軍長官がいうように、現役兵が現場に出ているといったデマは、こういう事件では流れるものです。まさに、こ
ういうデマが予想されることも、強硬な手段を避けるべきだという教訓になります。
ヘリコプターの低空飛行の件ですが、報道写真を見ると、ヘリコプターは赤十字の標章をつけており、これはジュネーブ条約が
定める規範に抵触します。それもあるので軍は調査を行っているのでしょう。隊員の処分もあり得る事態です。これは軍事委員会
でも問題にされるでしょう。
CNNをみると、ミネアポリス市では市警察の解体まで議論が出ているとのこと。元統合参謀本部議長で、ブッシュ政権で閣僚
も務めたコリン・パウエルまでがジョン・バイデンに投票すると宣言していました。
とにかく、最大の危機は去りました。このあとは、具体的に人種差別にどう対処するのかを検討していく段階に入ります。自治
体、州議会、連邦議会で様々な議論がなされます。
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