日本沖で起きた米軍機衝突事故が再調査
military.comに
よれば、稀なことに、米海兵隊は6人を殺した日本沖合での悲劇的な空中衝突の調査で多くの問題を認め、関連する飛行隊を指揮
する高官2人が新たに譴責される結果となりました。
Military.comが独占的に入手した報告によれば、数十人の専門家チームはF/A-18D「ホーネット」とKC-
130J「ハーキュリーズ」が関与した人命を損なった2018年12月6日深夜の燃料補給事故調査報告の再評価を行い、彼ら
が「異なっていて誤った説明」につながったという「多くの誤り」を見い出しました。
ホーネットのパイロットとC-130の海兵隊員5人を殺した事故の初期所見は、衝突を起こした飛行士はその夜に夜間飛行に
不適任で、薬物使用が事故を招いたとしました。
海兵隊は現在、これらの所見は間違っていたといいます。
新しく再調査を行うために配属された、海兵隊で最も長く勤務する飛行士のロバート・ヘデルンド中将(Lt. Gen.
Robert
Hedelund)は、最初の調査はその焦点が公正でなく、調査範囲が完全でなく、調査結果は不正確だったと書いています。
「そのため、我々は米国民、死者たちの家族と航空機を飛ばす若い男女との信頼を失いました」とヘデルンド中将は書きまし
た。
飛行隊の数名の隊員が事故の結果として解任された昨年、司令官補のゲーリー・トーマス(Gary
Thomas)は調査を命じました。当局者は当時、調査はその他の指揮官に対する懲戒処分の可能性を調べるといいました。
少将と大佐の高官2人が現在、衝突につながった欠陥の再調査の中で、公式に譴責処分を受けています。最初の調査の後で不当
に批判された飛行安全担当将校は現在、いかなる不正行為もなかったとされています。
1985年に海軍飛行士に任命され、現在は海兵隊総軍を指揮するヘデルンド中将は、海兵隊は大衆の信頼を取り戻すためにい
ますぐ行動しなければならないといいました。
「私はこの報告が訓練を向上させるための明快な呼びかけであり、私達の開発努力を導かせる影響力の強い書類となり得ると堅
く信じます」と彼は書いています。
警告
調査委員会に詳しい海兵隊の上級航空専門家3人は、2018年の衝突の初期調査を読んだときに、何かがおかしいのは間違い
なかったといいました。調査結果がまだ公にされていないため、彼らは匿名を希望しました。
調査は、第242海兵隊全天候戦闘攻撃中隊のF/A-18D「ホーネット」のパイロット、ジャマル・レジラード大尉
(Capt. Jahmar
Resilard)は、その夜、飛行に不適任だったと結論しました。その報告に署名した将官2人、引き続いたメデイアの見出しはレジラード大尉は不適任で経験不足だったと
レッテル張りをしました。
「彼はその任務をするために絶対的な資格がありました」と、航空専門家の一人はいいました。「夜間飛行するには、日中に過
去14日間飛ぶ必要がありますが、彼はやりました。夜間に補給をするためには、日中に熟達していなければなりませんが、彼は
そうでした。彼には(暗視ゴーグル)の資格が必要でしたが、彼は持っていました。さらに、彼は飛行中に彼に指示を出すインス
トラクターが必要でしたが、彼にはいました」。
「彼はすべての資格を満たしていました」。
調査官と彼の報告を承認した将軍も、微量の睡眠薬アンビエンと市販の抗ヒスタミン剤が夜間の衝突で役割を果たしたと示唆し
ました。
それは不正確で人を誤らせるような調査結果だったと、再調査委員会はいいました。
「アンビエン使用が2018年の事故を起こしたり、寄与したとの結論には根拠がないと、新しい153ページの調査は述べま
す。
問題は、結論が指揮層にどう理解されるかを懸念したために、すべての事実を調査しなかった調査官にあったと、委員会の調査
は結論しました。調査官は元の報告の中で、ホーネット中隊の準備不足について、上級指揮官が見逃した前兆に焦点を置くより
も、彼が全体的にプロらしくない環境につながったと主張した、事故とは関係のない指揮系統の中の不倫事件、中隊の中のアル
コール使用とその他の問題を強調しました。
「(調査官は)職業上の義務よりも個人的な願望を優先しました」と委員会は書きました。
調査委員会は、高官たちが見逃した中隊の準備レベルに関する危険な前兆を指摘しました。
第1海兵航空団の元指揮官、トーマス・ウェイドレィ少将(Maj. Gen. Thomas
Weidley)は、監督上の処分を受けました。第12海兵航空群の元指揮官、マーク・パルマー大佐(Col. Mark
Palmer)も同じくです。
「(調査委員会の)結論の評価により、第1海兵航空団の指揮将官と第12海兵航空群の指揮官について適切なレベルの監督処
分が実施されました」と海兵隊報道官、ジョー・バターフィールド大尉(Capt. Joe
Butterfield)は国防総省でいいました。
海兵隊はこれらの監督処分がどんなものかを、プライバシーの懸念をあげて、さらなる詳細を提供しませんでした。2人はコメ
ントの要請に応えませんでした。海兵隊の人事プロセスに詳しい当局者は、譴責処分はどちらの将校も再び昇進することを妨げる
可能性が高いといいました。
過去に、第242海兵隊全天候戦闘攻撃中隊でただ一人の隊員が事故の結果として処罰されていました。指揮官、副官、作戦士
官と航空安全士官は全員が指揮を外されましたが、調査委員会は後に航空安全士官には非がないと結論しました。バターフィール
ド大尉は、結果的に適切な監督処分がとられたといいました。
しかし、より上の司令部では、第242海兵隊戦闘攻撃中隊の準備の課題となると、第1海兵航空団にとって作戦のテンポは影
を投げかけたり、出口のないゾーンを生じさせた、と調査委員会は書いています。
「第242海兵隊戦闘攻撃中隊の低度の準備を容認することは、何年間も一般的な慣習となっており、第1海兵航空団に(夜間
補給訓練に)参加させる上で、第242海兵隊戦闘攻撃中隊のリスクを軽減するための努力をさせなくしました」。
次の指揮系統である第12海兵航空群も「ずっと程度が大きく、ずっと予想しない結果を招く」リスクを認識しなかったと、新
しい調査は述べます。
「第12海兵航空群は中隊が準備をする上で直面した障壁を実質的に理解したり支持をせず、第242海兵隊戦闘攻撃中隊の低
い航空機の稼働率と過去90日間の短い飛行時間が(訓練を)安全に実施する中隊の能力に及ぼす複合的な影響を完全に理解しま
せんでした。
どのパイロットにとっても困難なこと
調査委員会の報告の新たな調査結果は、事故の夜にレジラード大尉が直面したいくつかの課題を強調します。
第242海兵全天候戦闘攻撃中隊の2機のF/A-18Dは、第152
海兵空中給油輸送中隊のKC-130J「ハーキュリーズ」と、数名の海兵隊の航空専門家が隊の最も困難な現場という補給演習のためにリンクを確立しました。
任務遂行率である作戦のテンポは高いままでした。飛行士は演習から演習へと移動することが多く、日中から夜間の任務に切り
替えるときに常に推奨された量の休息をとれませんでした。
レジラード大尉と彼の武器士官、オースティン・スミス大尉(Capt. Austin
Smith)は、プロフェン12(Profane
12)というコールサインのホーネットで2機で飛んでいました。彼らは給油の最中、右側の2番目のホーネット、プロフェン11とともに、給油機の左側にいました。
スーモ41(Sumo 41)というコールサインのC-130は、ケビン・ハーマン中佐(Lt. Col. Kevin
Herrmann)、ジェームス・ブロフィー少佐(Maj. James
Brophy)、マキシモ・アレキサンダー・フローレス2等軍曹(Staff Sgt. Maximo Alexander
Flores)、伍長のウィリアム・ロス(William Ross)とダニエル・バーカー(Daniel
Baker)を乗せていました。
調査によれば、3機すべての航空機はライトを消して飛んでいましたが、給油のあと、プロフェン11は外部のライトを明るい
「オバート(overt)」の設定にしました。
「これらの環境がプロフェン12の状態をほの暗く光る給油機ではなく明るく光るプロフェン11の航空機に焦点を合わせるよ
う強いました」と報告は述べます。
両方のホーネットにとって、手順では給油後に給油機の右へ移動するのですが、レジラード大尉は左へ行く基準にない動きを指
示されました。ホーネット2機の間に給油機を挟んだ状態で、レジラード大尉は別のホーネットの方へ給油機を横切り、右のもう
1機のホーネットへ合流しました。
彼は左へ押し戻され、C-130にぶつかりました。レジラード大尉の武器士官が緊急脱出を行い、彼ら2人を自由落下させま
した。彼らは10,000フィート以上から海へパラシュート降下しました。
給油機は出火して、墜落しました。海兵隊員5人が死亡しました。
レジラード大尉の武器士官は衝突から約5時間後に日本の捜索救助隊員によって発見されました。レジラード大尉は約10時間
後に水中で発見されましたが、日本の艦船とヘリコプター両方とも彼を安全に引き揚げるのに苦労しました。
パイロットは衝突と脱出の間に複数の怪我を負い、その組み合わせが生存を困難にしたと調査委員会は結論しました。彼の心臓
は水中にある間に止まったと分かりました。
調査委員会の専門家たちは、レジラード大尉はプロフェン11に対してとりわけ焦点を合わせるようになったためにC-130
の姿を見失ったと結論しました。レジラード大尉の暗視ゴーグルは強く光る別のホーネットの近くを飛ぶ間に不鮮明になり、暗闇
のなかでC-130を見るのをむずかしくしたと報告は述べます。
「状況の特定の組み合わせは、年少者はもちろん、熟達していないパイロットも、あらゆるパイロットにとって乗り切るのが極
めて困難になることは指摘しなくてはならない」と調査委員会は書いています。
我々は海兵隊員に義務がある
2018年の衝突事故の海兵隊の調査は隊のトップの高官から支持されました。
「私は、(海兵隊指揮官デビッド・バーガー大将(Gen. David
Berger))が『これを調べてこい』といったのは、我々は海兵隊員に責任があるからだと堅く信じます」と調査に詳しい飛行士の一人はいいました。「我々は家族に責任が
あります。我々は家族に国に公明正大であり、正しく決着をつける責任があります。そして、我々は徹底的に調査をします」。
専門家たちは、事故そのものから始めるのではなく、命を奪った衝突の原因となった問題を概略的なものから調べました。過去
に死亡事故で亡くなったパイロットが不正に非難されたままにした不正確な調査結果に固執した海兵隊にとってユニークな動きで
した。
たとえば2016年に、国防総省のトップは、2000年の悲劇的な試験中のMV-22「オスプレイ」の墜落で不正に非難さ
れたテストパイロット2人を最終的に罪を免除しました。パイロットのジョン・ブロー中佐(Lt. Col. John
Brow)とブロックス・ガーバー少佐(Maj. Brooks
Gruber)の家族は、ノースカロライナ州の共和党議員、故ウォルター・ジョーンズ下院議員(Rep. Walter
Jones)の支援を受けて、汚名をそそぐために何年も闘いました。
この調査はレジラード大尉の資格と衝突におけるアンビエンの役割についての結論を正すだけでなく、当局者が海兵隊員の安全
を保つために必要だという大量の変化につながりそうです。
「海兵隊員は最も大事な資源であり、これらの乗員6人の喪失は海兵隊全体で精神的なダメージとなり続けます」と海兵隊のナ
ンバー2の将軍、トーマス少将は指示書簡の中で書きました。「目標ある行動が将来のリスクを軽減する上で長き道を行くのは、
我々の誠実な希望です。この事故で亡くなった海兵隊員6人は、仲間の海兵隊員と国家に奉仕する中で、究極の犠牲となりまし
た」。
彼らが忘れられることはない
海兵隊はすでにレジラード大尉の位置を知るのをむずかしくした無線とビーコンの問題を修正したといいます。海兵隊員は現
在、パイロットがトラブルに陥ったら自動的にストロボライトを動かずパッシブ信号装置を使って飛行します。
海兵隊はどのパイロットをどの戦域に送るかも評価しています。アジア太平洋戦域は、新人パイロットにとって最もタフな環境
で、軍は最初の任期のパイロットを地域にどう配置するかを評価すると報告は述べます。
さらに、レジラード大尉、ハーマン中佐、ブロフィー少佐、フローレス軍曹、ロス伍長、バーカー伍長を殺した夜間活動におけ
る適切な睡眠パターンは懸念されるままなので、トーマス少将は彼らは海軍省に睡眠管理の研究を要請し、必要に応じて航空活動
の方針を調整するといいました。
睡眠不足もアジア太平洋地域での2つの海軍艦の致命的な衝突で要素となりました。
加えて海兵隊は、日本の外で活動する海兵隊の航空機搭乗員の捜索救難活動を日本当局が担当するという数年越しの古い決定を
調べているところです。調査委員会は捜索救難の対応は2018年12月6日の朝と今日で違いはないと警告します。
彼らはどうパートナーシップが機能しているかを評価するための短期・長期の目標を設定し、ギャップを埋めるために、日本の
捜索救難の資産の再配置や請負業者を雇うといった新たなプロシジャーが敷かれるべきかを決定するでしょう。
報告は海兵隊は能力を奪われた搭乗員のためによりよい位置認識装置を配備するために、海軍航空システム・コマンドと活動を
続けるといいます。
「これらの装置は自動的に起動し、捜索救難の乗員に簡単に識別できて、高い信頼性があります」と報告はのべます。「さら
に、これらの装置は『戦闘』と『訓練』の役割の間で簡単に操作できます」。
航空専門家の一人は、海兵隊は戦闘状況で敵に発見されるのをおそれて位置ビーコンを起動しないことがよくあるといいまし
た。しかし、訓練の環境では、使われるべきだと、彼はつけ加えました。
航空専門家3人は、勧告のいくつかは彼らが希望するよりも時間がかかることを認めましたが、海兵隊は2018年の衝突に続
いて、航空の安全を向上させることに真剣だといいました。
「この種の出来事が決して再び起きないようにするために海兵隊が可能な限りのことをしていることについて、司令官補が書簡
の中で書いたことが思い出されます」と一人はいいました。「それは保証なのか?。もちろん違います。しかし、我々はもちろ
ん、できる限りのことをやっています」。
この記事に書かれている報告の内容だけでは、真偽はなんともいえません。給油機の左後方にいた戦闘機が左へ動く指示を受け
たのに、なぜ給油機に衝突したのかがはっきりしないからです。給油機と戦闘機は、給油中であっても、かなりの間隔をあけて飛
ぶもので、少々のことでは衝突しないように思えます。右側の戦闘機がライトをつけたのは給油後ですから、ライトの影響があっ
たのは短時間でしょう。スロットルを絞って、給油機との間隔をとれば問題なかったように思えるのですが、これは報告を全部読
まないとわからないのかもしれません。
しかし、私が一番驚いたのは、記事の内容よりも、掲載されていたレジラード大尉の写真です。彼はアフリカ系アメリカ人で
す。先に、米空軍ではアフリカ系アメリカ人が差別的な待遇を受けていて、処罰されることが多い問題を紹介しました。最初の報
告の調査官に、人種差別意識がなかったのかが、どうしても気になります。
今回の発表はたまたま「ブラック・ライブズ・マター」運動とタイミングが合ったわけですが、これも米軍の問題の一つかと考
えさせられます。
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