露によるタリバンへの報奨金は真実か?

2020.7.14



 military.comに よれば、ロシア軍情報部(GRU)の部隊がアフガニスタンで米軍と同盟する軍の隊員を攻撃し、殺すためにタリバンに報奨金を 支払ったという話が発展し続けています。その過程で、それはますます信じがたくなってきています。

 第一に、過去に匿名の情報源が言ったことを確認する匿名の情報源が次々とあります。私は他の匿名の情報源が言ったことを確 認する匿名の情報源が実際に何かを証明すると確信がもてません。これらの情報源は情報部や軍の隊員とタリバンの元メンバーを 含み、すべてが氏名不詳です。ロシアの報奨金の話が拡散されたのならば、世界のどこにも、この計画を直接知る一人の人物がこ のことを記録に残そうとしないことは驚きです。

 物語はニューヨークタイムズ紙が作戦の中心人物とされ、「下っ端の麻薬密輸人」とするアフガン人、ラマトゥラ・アジジ (Rahmatullah Azizi)の登場で、さらに一層複雑になっています。アジジについて我々は、大金を持ち、高級車に乗り、警護をつけて移動したのに、目に見える支援の手段を持たないよう に見えために当局の注意をひきつけたと聞かされています。

 私は、この事実はほとんどの国で疑惑を生じると考えます。しかし、アフガニスタンでは、それはアフガン政府と軍の高官を含 めて、カブールの人口の4分の1の特徴なのです。

 アジジは、タイムズ紙によると、彼が「現金を集めた」ロシアに頻繁に行ったようです。彼はそれから、報奨金を獲得したジ ハーディストに現金を与えるために、イスラム世界の非公式の金の転送ネットワーク、ハワラ・システム(Hawala)を使い ました。

 なぜアジジは現金を得るためにロシアへ移動しなければならなかったのでしょう?。GRUの彼の雇い主は、金を受け取るため に彼に領収書に署名させる必要があったのでしょうか?。彼はどこへ行ったのでしょうか?。おそらくは、彼はモスクワに行った のでしょう。彼はグリゾドゥボワ通り(Grizodubova)のGRU本部で現金を受け取って、カブールへとんぼ返りした のでしょうか?。あるいは、彼は宿泊して、プーシキン(Pushkin)での夕食に引き続いてボリショイ劇場 (Bolshoi)で観劇したのでしょうか?。クレムリンでお茶する時間はあったのでしょうか?。

 クレムリンは何年間もタリバンに現金を与えています。成功していない下っ端の麻薬密輸人がそのために現金を動かす必要はあ りませんでした。金はなんにせよハワラ・ネットワークに流れていたので、パキスタンや中央南アジアのどこかでは、そうそうし た方がずっと単純で人目につかないでしょう。

 もちろん、アジジはこれのすべてをやり遂げられますが、彼はどこにもいません。タイムズ紙の情報源によると、彼はロシアへ 逃げ戻ったと考えられます。アジジ氏、この記事を君が読んでいるなら、それは賢い決断ではなかっただろう。君はいまや公式に 「宙ぶらりん」です。GRUの宙ぶらりんのいつもの解決策は、後頭部への銃弾です。

 アフガニスタンで17人の米兵が戦闘で殺されました。それは報奨金がこれらの死亡すべてに支払われていたとしても、どれか が支払われたという証拠がないとしても、報奨金の総額は数百万ドルにもなります。

 タリバンは様々な犯罪活動から数十億ドルの収益を生みます。彼らはパキスタンの情報部、ISIから1~2億ドルの財政支援 を得ていたと、長らく考えられています。

 ロシアは少なくとも2014年からタリバンを積極的に支援しています。ロシアがタリバンを支援する価値について、特に提供 した財政支援の量について、意見の一致はありません。ロシアはタリバンの特殊部隊とされる千人規模の部隊、タリバンの赤の部 隊(Red Unit)へ武器と装備品を支給しました。表面上、このグループはアフガニスタンのイスラム国と戦うことに焦点をおいていると考えられていますが、アフガン軍、米軍、 NATO軍に対しても用いられています。ロシアは北部同盟の残兵にも支援を提供しています。これらのタジク族グループは表面 上、アフガン政府の一部ですが、ロシアの支援で、彼らは選択肢を広げています。

 西欧の情報機関のロシアの財政支援の推定は、数千万ドルから数億ドルまでと非常に広範です。この支援をどう評価するかには 意見の一致がないため、推定における大きな差があります。いくつかの事例では、財政支援は実際の現金輸送の形でとられます。 別の事例では、タリバンへの第三者の武器供給者への助成金や市場価格より安く支給するロシア軍の装備品です。イランもタリバ ンを支援していると考えられます。

 明らかなのは、タリバンの活動の範囲を考えると、数百万ドルの報奨金はタリバンの財政に実態のある影響を与えません。私は タリバンが連結財務諸表を作るかどうかは知りません。もしやるのなら、面白い読み物になるでしょう。しかし、手につかむ膨大 な金に照らせば、これらの報奨金は大きな違いにはなりません。会計士はその金額を四捨五入の間違いと呼ぶでしょう。

 この物語が発展するにつれて、主役に微妙ながらも重要なシフトが起きています。最初、報奨金を受け取っていたのはタリバン でした。いまは、多くの報道記事によれば、タリバンに直接ではなく、「タリバンと共にあるもののタリバンの統制を受けないグ ループと指揮官」です。

 匿名で引用されたタリバン指揮官によると、「金、ロシア、イラン、パキスタンと、作戦のために彼らを雇うその他の国々のた めに何でもする人々がいます」。

 これらのジハーディストたちが「時々、協力するがタリバンの一部ではない」グループならば、そもそも報奨金の目的はなんで すか?。ロシアが達成しようとする目的はなんですか?。

 この特質は主張をよりもっともらしくするものの、どのジハーディストや提携グループが米軍と同盟軍兵士を殺害し、報奨金を 得たことで直接の責任があるのかを特定するのを複雑にすることも意味します。

 アフガニスタンで活動するたくさんのジハーディスト組織があります。タリバンは最大でほとんどの米軍と同盟軍との戦闘の原 因となっています。それに加えて、イスラム国、アルカイダ、ハッカニ・ネットワークと、西アフガニスタンでイラン革命防衛隊 に関連し、大半がシーア派のファテミヨン(Fatemiyoun)があります。さらに小さいグループが多数あります。ニュー ヨーク・タイムズ紙によれば、さらに、犯罪ネットワーク、闇業者とテロの訓練の専門家たちも、しばしば同じ時にいくつかのグ ループで、自由契約で動きます。

 しかし、明らかなことは、この話が色々な匿名の情報源からの「新事実」と追加の「確証」で毎日暴露されることで慎重に演出 されていることです。明らかでないことは、「演出者」がロシアか、トランプ政権に対して腹に一物ある米諜報員か(確かに事欠 かない)、他の誰かなのかということです。

 一方、トランプ政権はロシアに甘いという非難があって、二大政党の怒りのレベルは上がり続けていますが、しかし、この説明 はありそうにないように見えます。

 ジャーナリズムは情報分析には似ていません。どちらの事例でも、新しい情報分析が示されたときに質されるべき最初の質問 は、なぜこのニュースがいま開示されたかと、この開示で誰が得をするのかです。その方針がより賢明に後に続いていたら、ロシ アが米兵の戦死に報奨金を払ったという主張をとりまく多くの混乱は避けられて、ニュースは何事もなかったでしょう。

 ロシアの報奨金の話が真実か、慎重に紡ぎ出された存在する事実の焼き直しか、あるいは完全なインチキであるかは時が語るで しょう。国際的報道機関に向けたこの物語を統括する舞台裏に誰がいるとしても、見事な仕事をしたものです。


 日本ではあまり報じられていないし、私も海外の報道をチェックしていませんでしたが、この記事からは、報奨金の話は真実で はないようです。

 ハワラ・システムは、極めて単純な送金システムで、依頼人は代理人に金を払い、パスワードに相当するものをもらいます。大 抵は、コーランの何ページの何番目の文字といったものです。金をもらう人にも、このパスワードを送り、その人は現地の代理人 にパスワードを示して本人である証明をして金をもらいます。あとは代理人同士で決済を行います。信頼に基づいた送金システム といえます。

 報奨金を支払うには、タリバンが戦闘で米兵を殺した証明が必要です。米軍の戦死広報は正式な発表ですが、誰が殺したかまで は正確には書きません。こうした手柄は膨らませやすいもので、タリバンがより多くの報奨金をもらおうとすればインチキも可能 です。そんなことにロシアが乗るとは思えません。

 不思議なのは、次々と情報が出ていることです。偶然、そういう状況ができるとは考えにくい。何者かが糸を引いているように もみえます。

 あまり海外の報道を見ていないので、それらもチェックしないと結論らしいものはいえそうにありません。出遅れてはいます が、記事を読んでみようかと思います。
 
 

 


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