ロシア人傭兵がシリアで地雷を敷設

2020.7.17


 military.comに よれば、ロシア人の傭兵がリビアで、アメリカが認めるトリポリ(Tripoli)の国民合意政府に対して闘争している軍隊の 反政府軍指導者を支援して、地雷と即製爆弾(IED)を設置していると、米アフリカ軍が水曜日にいいました。

 米諜報機関は、ロシアに拠点がある「ワグナー・グループ(Wagner Group)」に雇われた戦闘員が、「地雷と即製爆弾をトリポリ市内と周辺に設置して、ハリファ・ハフタル(Khalifa Haftar)といわゆるとリビア国民軍(Libyan National Army)の拠点であるシルテ市(Sirte)に向けて東へ拡張している明白な証拠を持ちます。

 「写真による証拠の検証は、6月中旬以降にシルテ市に至るまでトリポリ市郊外周辺に無差別にブービートラップと地雷が設置 されたことを示します」とAFRICOMはいいました。「これらの兵器はワグナー・グループによりリビアへ導入されたと評価 されます」。

 モスクワは繰り返してリビアの戦闘へいかなる介入も否定しますが、AFRICOMの声明はワグナー・グループがロシア政府 により後援され、金が払われていることを明確にしました。AFRICOMは傭兵たちが「ロシア人を雇い、国家が後援するワグ ナー・グループのために働いていると説明しました。

 「ロシア政府が後援するワグナー・グループは、地雷とIEDを敷設してリビア人の安全と治安の完全な度外視を示していま す」とAFRICOMの作戦部長、ブラッドフォード・ゲーリング海兵少将(Marine Maj. Gen. Bradford Gering)はいいました。「ロシアは彼らを止める力を持ちますが、する気がないだけです」。

 AFRICOMの声明は5月にAFRICOM指揮官、スティーブン・タウンゼンド陸軍大将(Army Gen. Stephen Townsend)が、ロシアがリビアに米国籍を持つ元リビア陸軍大将、ハフタルの軍隊をテコ入れする努力として
、高機能のMiG-29ファルクラム戦闘機14機を送っていると告発したのに引き続きました。

 「ロシアは明らかにリビアにおいて自国に有利に局面を変えようとしています」とタウンゼンド大将は5月26日の、紛争の両 側に米国の同盟国を巻き込んでいるこの国で代理戦争となっているものについての声明でいいました。

 ハフタルの軍隊はリビア東部の大半を支配しますが、トリポリを国際的に認められる国民合意政府から奪う長らく停滞した試み が連続して失敗しています。

 ハフタルはエジプトとアラブ首長国連邦の支援を受けていますが、NATO同盟国のトルコはファイズ・アル・サラージ首相 (Prime Minister Fayez al-Sarraj)の国民合意政府(GNA)を支援する上で空軍と海軍の資産の派遣を増やしています。

 水曜日のAFRICOM声明で、AFRICOM情報部長、ヘイディ・バーグ(少将)は「我々の情報はロシアとワグナー・グ ループによる継続的で助けにならない関与を反映します。映像と情報の評価はロシアがどうリビア問題に介入を続けているかを示 します」といいました。


 対人地雷はいうまでもなく、大量に敷設され、そのまま放置されることから、人間への被害が大きく、使用を禁止する国際条約 「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」、いわゆる「オタワ条約」 があります。アメリカはまだ署名していませんが、将来的には使用をやめる方針です。ロシアは署名していないので、この条約を 守る義務はありません。

 条約はできたものの、その実効性には疑問が出ています。地雷の問題は、今後も議論され、解決策を探っていきべきことです。

 ワグナー・グループはウラジミール・プーチン大統領と親しいヤブ ジェニー・プリゴツィンが関与する軍事請負会社で、前にもその武装警備員が拷問をする映像が流れたことがあります。(関連記事はこ ちら

 この地雷の問題がロシア政府に無関係なはずはなく、自国の武器を売りまくりたいロシアの野心の表れです。ロシアには、こう いうものに頼らないと自国経済を維持できないのでしょう。冷戦中に共産圏などに売り歩いた武器の販路を維持したいというロシ アの意向は、シリア内戦への関与となりました。アメリカが武装勢力に自分たちの小銃を提供したりしたのが、ロシアの危機感を 高めたのかもしれません。小銃のような基本的な武器が置き換われば、他の武器にも波及しかねません。

 そんなわけで、最近はロシアは入り込めそうな国には積極的に関与して、アメリカの足を引っ張っています。

 それが世界平和といった目的のためではなく、自国の武器を売りたいという、国益のための行為です。ロシアのような大国がこ の調子では、世界の安定など望めません。一刻も早く、ロシア国民は穏健な政治指導者を政権につけて、国策を変える必要があり ます。その理想は実現するには難しそうですが。

 西欧が民間軍事会社という妙なものを作ってしまったため、ロシアも真似をして、世界の紛争地にさらに問題を広げています。 民間軍事会社は、国家ではない企業が戦争に関与することで、戦争にグレーゾーンを広げただけです。有益な活動をすることもあ りますが、その大半は存在を否定されるべき内容となっています。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.