州軍将校がWH前の群衆排除に異議を主張

2020.7.30



 military.comに よれば、ワシントン特別区の州軍少佐は、催涙ガスとペッパー・ボールの使用を伴った6月1日の米国立公園警察の排除作戦は理 不尽な激化であり、過度の武力行使だったと火曜日に議会で証言することが決まっています。

 下院資源委員会に出された証言の中のラファイエット・スクエア(Lafayette Square)の平和的な抗議者たちに対する攻撃についてのアダム・デマルコ少佐(Maj. Adam DeMarco)の説明は、街の午後7時の外出禁止令のずっと前にホワイトハウス付近の区域から規則を守らない抗議者の群衆を排除するために武力を使う必要があったと主張 したホワイトハウス当局と矛盾します。

 ワシントン・ポスト紙は最初にデマルコ少佐が証言を準備していると報じました。

 前夜の5月31日、ジョージ・フロイド(George Floyd)の死に抗議するデモ参加者の群衆は、ラファイエット・スクエアの中で暴徒と化し、彼らがホワイトハウス近くのバリケードを押しのけると脅して、州軍隊員と警察 に飛翔物を投げつけました。

 特別区州軍と特別区当局の間で連絡将校を務めるためにその晩に現場にいたデマルコ少佐によれば、抗議は6月1日にも続きま したが、セント・ジョンズ・聖公会教会(St. John's Episcopal Church)でのドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)の演説に先立ち、国立公園警察が地域から彼らを攻撃的に排除しはじめたとき、群衆は平和的でした。

 「私の所見では、これらのデモ参加者…我々の同胞のアメリカ国民は…平和的に憲法修正条項第1条を表現していました」とデ マルコ少佐は声明でいいました。「それにも関わらず、彼らは理不尽な激化と過度な武力行使を受けました」。

 デマルコ少佐の説明は、6月7日にCBSニュースのインタビューでウィリアム・バー司法長官(Attorney General William Barr)が説明した状況と矛盾します。

 「国立公園警察は、彼らが非常に騒がしく、規則を守らない群衆だと考えたものに直面しました」と、彼はインタビューの間に いいました。「さらに、警察に飛翔体が投げつけられました」。

 バー長官は「私はそこにいました。彼らは投げました。私は彼らが投げるのを見ました」。

 午後6時に現場に到着した直後、デマルコ少佐は、彼らが東のバーモント・アベニュー、西のコネチカット・アベニューの間で H通りを排除して警備境界を拡大し、それからH通りからI通りの警備教会を拡大するために、バーモント・アベニュー、16番 通りとコネチカット・アベニューを北へ向けて移動するために、州兵は国立公園警察の支援をすることになっていると説明を受け ました。

 州軍は排除活動に積極的に関わるべきでなかったとデマルコ少佐はいいました。

 「国立公園警察の警察官のベストに催涙ガスの缶が取り付けられているのに気がついていて、前夜にデモ参加者に対して催涙ガ スが使われたのを知っていたので、私は国立公園警察の連絡官に、催涙ガスが使われたかどうかを尋ねました」と、彼は声明でい いました。「国立公園警察の連絡官は私に、催涙ガスは使われていないだろうといいました」。

 数分後、デマルコ少佐はバー長官と統合参謀本部議長、マーク・ミレー大将(Gen. Mark Milley)がホワイトハウスの方向からラファイエット・スクエアを横切って歩くのを見ました。

 バー長官はすぐに、デモ参加者の前の国立公園警察と特別区州軍の列の前に歩き、それからアンドリュー・ジャクソン大統領像 (President Andrew Jackson)に向かいました。そこで彼は国立公園警察の警察官と協議するように見えた、とデマルコ少佐はいいました。

 作戦用の迷彩服を着たミレー大将は、デマルコ少佐に向かって歩き、州軍の任務と現状を尋ねた、と少佐はいいました。

 「ミレー大将はデモ参加者の人数の見積もりを尋ね、私は2,000人と見積もりました」と、デマルコ少佐は声明でいいまし た。「ミレー大将は私に、州軍の隊員は冷静を保つよういい、我々はデモ参加者の憲法修正条項第1条の権利を尊重するためにこ こにいると続けました。

 ミレー大将は、マーク・エスパー国防長官(Defense Secretary Mark Esper)と共に、国立公園警察の排除活動の前にトランプ大統領と共に写真の中に登場したことで批判されています。

 デマルコ少佐によれば、午後6時20分頃、国立公園警察はデモ参加者に解散するよう命じる3つの警告のひとつめを出しまし た。

 「外出禁止は40分後の午後7時になるまで有効にならないので、私はそれほど早くに発表があるとは予想しませんでした」 と、彼はいいました。

 警告はデモ参加者から約50ヤード(約46m)のジャクソン像の近くのメガフォンを使って伝えられたと、デマルコ少佐は声 明でいいました。「デモ参加者から約20ヤード(約18m)の私が立っていた場所から、発表はかろうじて聞き取れ、私はデモ 参加者が解散の警告に気がついた兆しを見ませんでした。

 午後6時30分頃、彼らが排除活動をはじめると、対暴動部隊(civil disturbance unit)と騎馬警官が率いる国立公園警察はシークレットサービスとその他の法執行機関の要員に加わった、とデマルコ少佐はいいました。

 「私は抗議者を解散させるために使われる爆発を耳にして、煙を見ました」と彼は声明でいいました。「国立公園警察の連絡官 は私に、爆発は煙幕であり、催涙ガスはデモ参加者に使われていないといいました」。

 「しかし、私は目と鼻に痛みを感じ、ウェストポイント校とその後の陸軍の訓練で、過去に催涙ガスにさらされた経験に基づく と、その痛みはCSガス、つまり催涙ガスと一致する効果と認めました」。

 デマルコ少佐は「その夜の後刻、私は近くの通りで使用済みの催涙ガスの缶を見つけました」とつけ加えました。

 デマルコ少佐によれば、州軍隊員にデモ参加者に対するその他の武力行使において、押し進んだり、交戦した者はいませんでし た。

 「見通しがよい私の場所から、対暴動部隊が彼らに向けて突撃すると、私はデモ参加者が追い散らされたり、逃げるのを見まし た。対暴動部隊の隊員が盾を武器として攻撃的に使うと、私は人びとが地面に倒れるのに気がつきました」と、彼は声明でいいま した。
 
 「私がH通りを西へ向けて押し進む対暴動部隊の背後に歩いていくと、デモ参加者が後退し続けるとき、州軍隊員の背後にいる 特定できない法執行機関の要員が、解散させるために、後に私がペッパーボールと知った、ペイントボールに似た武器を群衆の中 に向けて使うのにも気がつきました」。

 デマルコ少佐によれば、排除活動がはじまって約10分後、国立公園警察は州軍隊員に、新しく確立した北側の境界で国立公園 警察を増強し、交代するためにバーモント・アベニュー、16番通り、コネチカット・アベニューで北へ押し進む国立公園警察の 排除部隊の背後に移動するよう命じました。

 午後7時05分頃、デマルコ少佐は、彼がトランプ大統領がH通りへ、聖ジョンズ教会に近いラファイエット・スクエアから、 護衛を伴って歩いてくるのを見たといいました。

 「大統領の到着は、彼が我々の区域に入ると説明を受けていなかったので、まったく驚きでした」と、デマルコ少佐は声明でい いました。「新しい警備障害物に関しては、その設置は排除活動と事前に表明された目的であり、組み立てるための資材は午後9 時頃までに現場に到着せず、その晩の後刻まで完成しませんでした。

 声明によれば、デマルコ少佐は州軍に入隊する前に、第1騎兵師団と第1装甲師団で現役を務め、イラクでの戦闘派遣を含めて 3年間の海外派遣があります。

 「戦闘地域での勤務をして、脅威の環境の評価の仕方を理解していたので、抗議者から脅威を感じたり、彼らが暴力的だと評価 することはありませんでした」と、デマルコ少佐は声明でいいました。「加えて、対暴動作戦に特有の武力の均衡原則と段階的対 応の基本戦略を考慮して、排除活動においてデモ参加者に対する武力行使は、不必要な武力行使の激化だったというのが私の所見 でした」。

 デマルコ少佐は、軍将校として、合衆国憲法を支持し、守ることを宣誓したから6月1日の出来事について議会で証言したとい いました。

 「それはアメリカ国民によって軍隊に安全に置かれた信頼の基本です」とデマルコ少佐はいいました。「そして、それが6月1 日にラファイエット・スクエアで私が見たものについて、何かをいい、何かを行わせるのです」。


 非常に興味深い証言であり、6月1日の暴力的な群集排除の現場で何があったかがよく分かります。

 分かりやすいように、地図を作ったので御覧ください。トランプ大統領が教会で演説するためだけに群集を排除したことがよく 分かります。大統領を安全に教会に来させるために、教会の周辺をブロックごと封鎖したということです。
図は右ク リックで拡大できます。

 集会を開く権利は合衆国憲法修正条項第1条で認められた権利であり、米軍もそれを守る方針だったことは、記事に書かれてい るミレー大将の発言でも分かります。ミレー大将は後日、この場にいたことを陳謝しています。

 外出禁止令は午後7時に有効となりますが、トランプ大統領は、おそらくは夜のニュースの放映に合わせたかったのでしょう が、7時頃に教会に行きたかったのです。そのために、まだ集会が認められる時間帯にデモ参加者を排除しました。これは明らか に、憲法に違反する行為です。今後、この件でトランプ政権は追求されます。

 それにしても、州軍の少佐がこういう証言をすることはアメリカならではです。他に国では、軍隊は政治になびきやすく、それ は日本でも同じです。自衛官が政府に不利になるような発言をすれば、周囲から睨まれてしまいます。ここでは、合衆国憲法と米 軍の関係がよい意味で発揮されたといえます。

 反面、日本の軍人は過去から、勝手な発言が許されると考えています。右翼的な組織を結成して、気に入らない政治家の暗殺を 試みたり、勝手に国外で謀略をめぐらしたりします。自分たちがそう思うのなら、行動してよいというのが日本の軍人の発想で す。「我思う故に我あり」。

 こういう行為の背後には、自分たちは国家の最後の防衛線であるという使命感があります。本人たちは真剣ですが、これが国民 に多くの害をなすことは歴史が証明しています。

 アメリカは憲法を制定したときに、そういう軍隊の性質に気がついて、政治と軍隊を分離して、軍人の政治的行為を制限し、そ れに反する者は有罪とする軍法を設けました。トランプ政権において、それが乱れて来ていて、軍人たちからは、軍隊の中立が守 れないと危機感を持たれています。

 戦後に創設された自衛隊では、こういう問題が起こらないとはいえません。すでに栗栖弘臣統合幕僚長の超法規的発言などが起 きています。栗栖氏は旧軍出身でしたから、戦後派の自衛官なら大丈夫かというと、そうではありません。米軍に比べると恐ろし く緩い規律のために、自衛官は自分たちは国民と同じ表現の自由を持つと信じ、好き勝手に政治批判、特に野党批判に熱心です。 まさに、井の中の蛙大海を知らず。

 自衛隊だけではありません。警察や検察も与党にべったりです。総理大臣の演説に野次を飛ばしただけで警察官に囲まれる状況 は、民主主義国の名に値しないことです。

 近隣諸国からの脅威が叫ばれる時代には、こういう傾向はまさに狂気と化して、国民に襲いかかります。

 

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.