戦場で起きる疾患の証拠は未だ不透明
military.comに
よれば、科学諮問パネルは咳嗽や喘鳴のような慢性の呼吸系症状が1990〜91年の湾岸戦争での軍務とイラクとアフガニスタ
ンのような9/11後の戦闘環境に関連するいくつかの証拠をみつけました。
しかし、金曜日に「科学・エンジニアリング・医学ナショナル・アカデミー(the National
Academies of Sciences, Engineering and
Medicine)」が公表した研究は、中東とアフガニスタンへの戦闘派遣と多くの深刻な肺疾患とのリンクを結論づける十分な証拠やデータはないことを見出しました。結論
は体調不良が米軍が廃棄物処理のために使った野外の焼却穴や海外勤務の間に吸い込んだ塵や廃棄物によって生じたと信じる大勢
の隊員を失望させそうです。
復員軍人援護局(VA)は2018年にナショナル・アカデミーに、そうした派遣が米軍隊員の中の呼吸器疾患の
一因かどうかを判断するために、既存の科学的、医学的研究を見直するよう要請しました。
ロチェスター大学医療センター(the University of Rochester Medical
Center)の医学・環境医学教授、マーク・ウテル医師(Dr. Mark
Utell)が率いる11人の委員会は、派遣と肺、食道、口腔、鼻腔の癌と共に、副鼻腔炎、睡眠時無呼吸、狭窄性細気管支炎と慢性閉塞性肺疾患のような非癌性の呼吸器疾患
を含む20以上の症例との関連性を最終的に証明できませんでした。
委員たちは、結論はリンクがないことを意味せず、単に関連性を導く研究やデータはないということだといいまし
た。
「我々が聞いた証言と結果への明らかな影響から、委員会は多岐にわたるフラストレーションの感覚を味わいまし
た。たとえば、戦域における喘息について、データはその根拠とならず、それは委員会における我々の作業のフラストレーション
を感じる局面でした」と委員会のメンバー、ワシントン大学公衆衛生学部の環境・職業衛生学(the University
of Washington School of Public Health)名誉教授のスベレ・ヴェダル博士(Dr.
Svere Vedal)はいいました。
委員会は第1次湾岸戦争に従軍した退役軍人と2001年9月11日後の軍事作戦に従事した者たちの派遣と、慢
性の咳、息切れと喘鳴の間に関連があるという「限定的、示唆的な証拠」は特定できました。
「限定的、示唆的な証拠」の特性は、そうした症状を持つ多数の湾岸戦争の退役軍人がVAから傷害補償金を受け取るのを簡単
にするかもしれませんが、VAは決定を受け入れ、ペルシャ湾と9/11後の海外勤務に関連すると推定される疾病のリストに症
状を追加しなければならないでしょう。
VAの病院は歴史的にオレンジ剤等の暴露と同じに指定する病気をリスアップとしていますが、2016年以降、軍務に関連す
る「限定的、示唆的な証拠」があるとナショナル・アカデミーが勧告する病気はリストしていません。
湾岸戦争を皮切りに、1990年以降、3700万人以上の隊員が調査対象地域に派遣されています。これらの作
戦の間に兵士たちは油井、焼却穴からの煙、排気ガスと産業廃棄物のような活動で生じる空中を漂う危険、戦闘と嵐の間に巻き上
がる空中を漂う塵にさらされました。
イラクとアフガニスタンで隊員たちは、ごみ、プラスチック、バッテリーとその他の廃棄物を含めて、焼却穴で燃やされたもの
によって、様々な危険物質にさらされ、一部の者は彼らの医師が環境暴露のためと考える呼吸器の疾病、珍しいガンと神経系の病
気になったと報告されます。
報告によると、委員たちは1990年以降、この地域での気中浮遊暴露の研究は不十分で、研究は関連性を確認す
るのに必要な科学的厳密さを欠いていたことを見出しました。
たとえば、彼らは再評価した多くの研究は、派遣された退役軍人すべてが同じ暴露をしたと仮定し、同じ暴露をし
なかった位置と時にまたがって配属された事実を無視したと指摘しました。
彼らは研究が喫煙を把握せず、彼らが調べた死亡率の研究は死因を特定しないことがよくあり、どれだけの退役軍
人が呼吸系の疾病で死んだかを明らかにするのを不可能にしたことも見出しました。
「我々は危険な暴露があったことをしりますが、誰が実際に暴露されたか、どこで何に暴露されたか、そしてどれだけの時間に
どれだけの濃度で、どれだけの頻度で暴露が起きたかについて限られた情報しかありませんでした」とウテルス教授はいいまし
た。「それに照らして、委員会は降参して、『もっと多くをなす必要がある』というのではなく、なすべきいくばくかの事柄を勧
告しました。我々は前向きな勧告をしました」。
委員会は暴露されたかもしれない退役軍人について、暴露の効果と感受性についてより情報を提供するために、バ
イオマーカーを使った具体的な研究を勧告しました。
最新技術が過去30年間の策作戦の間に撮影された衛星データを分析のために使われるかもしれず、国防総省は暴露と健康状態
を監視するためにウェアラブル装置を隊員に装備させることで、戦場の汚染物質の理解を深めるかもしれないと、委員は指摘しま
した。
さらに、彼らはVAが2011年以降に行われなかった、退役軍人のこの集団の中の死亡率の分析を行うことも勧告しました。
VAは暴露効果の完全な理解を得るために、時間をかけて研究と追跡して、部分母集団を特定し続けるべきだと、委員は示唆しま
した。
大気中の汚染に影響された退役軍人の人生を向上させるために、今年、多数の法案が議会に提出されました。火曜日、コメディ
アンのジョン・スチュワート(Jon Stewart)と活動家のジョン・フィアル(John
Feal)は、この問題に注意をひき、新しい法律を導入するために、クリステンセン・ギリーブランド上院議員(民主党、ニューヨーク州選出・Sen.
Kirsten Gillibrand)、ラウル・ルイズ(民主党、カリフォルニア州選出・Rep. Raul
Ruiz)と退役軍人たちに加わることになっています。
9/11の犠牲者の家族のために補償基金に資金を出すよう議会に迫るスチュワート議員は、この問題は「国家としての我々の
戦争のやり方の話だ」といいました。
「我々は常に戦争をする金を持っています。我々は常に、私たちに代わってそうした戦争を行うために、無私無欲
に満ち、愛国心に満ちる人々に起きたことに対処するために金を持つ必要があります」と、スチュワート議員は今年はじめにいい
ました。
この件も過去に何度も繰り返して紹介していますが、今回もまた新たな展開はなく、明確な証拠がないという言葉が繰り返され
ただけです。以前にも治療を求める人に対して、明確な証拠がないという回答が出されたことを紹介しました。その人は証拠が出
る前に自分が死ぬのではないかと恐れていましたが、いま、その人は生存しているのでしょうか。
政府は公傷については政府が治療するといいますが、ときに、制度の隙間に落ちる人がいます。原因が戦場由来と判断できない
病気があるのです。湾岸戦争以降、そういう病気が多く発生して、多数の人びとの健康を害しています。
こうした問題は日常的な仕事においても起こります。まして、戦争のように生死を賭けるときには、なおさら多く起こります。
アメリカで起きることは日本でも起きると考えなければならず、我々も対岸の火事として見るべきではありません。
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