「TacOps」の概要



 「TacOps」は、近代の陸上戦等のシミュレーションゲームです。第2次世界大戦以降の大半の戦闘を再現できます。

 多くのウォーゲームと同じく、「TacOps」はターンごとにプレイされます。1ターンには、命令フェーズと戦闘・移動フェーズがあります。しかし、ボートゲームの場合と違い、プレイヤーが交互に移動と攻撃を繰り返すのではなく、両プレイヤーは同時に戦闘・移動フェーズで行う命令を出します。そして、戦闘・移動フェーズに命令フェーズで決めた命令が同時に実行されます。戦闘・移動フェーズの間、プレイヤーは見ているだけで、命令を変更することはできません。当然、当てが外れたり、間違った命令で友軍が損害を受けることもあります。1ターンは実際の時間で1分間を表すので、プレイヤーは常に、これから先1分間の命令を出し続けることになります。このスタイルは、コンピュータゲームならではの機能を利用した、完全なブラインドゲームといえ、実戦により近い環境をプレイヤーに体験させます。

 「TacOps」には、多くのボードゲームにある六角形状の升目「ヘックス」はありません。1ピクセルが10mを表し、メートル単位で位置が計算されるので、非常に緻密な戦闘状況が再現されます。しかも、軍で使う座標のまま位置が表現されているので、非常に現実に近い感覚が持てます。距離の感覚をつかみやすくするために、1km感覚でグリッドを表示させることもできます。地形は移動や戦闘に影響を与えます。多くのユニットは道路上を高速で移動でき、森などの障害物に隠れていると、その防御効果を受けられます。視界を遮る地形は、その先にいる敵ユニットを見えなくします。地形は二次元的に表現され、イラストのように表示されます。(下図)


 マップの中には、現実の地形図をスキャンして作られているものもあります(下図)。マップを自作するツールも製品に添付されています。

 部隊は駒のような「ユニット」とよばれる単位で表現されます。ユニットは通常、1個班または分隊、あるいはチームを表します。人数は2〜18名などさまざまです。車両なら2台、ヘリコプターは4機など、さまざまなサイズのユニットが同じスタイルのユニットで表現されています。ユニットにはその能力を示す詳細なデータが含まれており、いつでも表示して見ることができます。(下図)

 部隊を移動させるには、行き先をマップ上でマウスクリックして指定します。道なりにユニットを動かしたい場合、カーブごとにマウスクリックすれば最大20カ所の進路変更を設定できます。その他の命令は部隊命令ウィンドウ(下図)で指示し、実行させたい命令のボタンをクリックしたり、コントロールを設定して決めます。

 命令には攻撃命令もありますが、命令を出さなくても、ユニットは自分の判断で視認できる敵ユニットを攻撃しようとします。命令は取り消すことができますが、取り消さないとユニットは常に実行しようとします。つまり、軍隊の規律の通り「命令は正式に取り消されるまで有効」なのです。そのため、誤った命令を出して放置しておくと、気がついたらユニットがとんでもない状態になっていることもあります。命令を簡単に出すために、他の部隊と同じ命令を指定することができる機能があり、部隊を一緒に行動させたい時に非常に便利です。

 コンピュータゲームの利点により、ボードゲームでは面倒な判定が苦もなくチェックされ、自分でも確認できます。たとえば、友軍から見えない敵ユニットは自動的にマップ上から消えます。照準線が通っているか、つまりマップ上のある位置から他の位置にいるユニットを視認できるかの判定は自動的に判断してくれますし、いつでも自分で確認できるので、「見えないはず」と思ってユニットを移動させたら攻撃を受けた、ということが減ります。このため、実際と同じように偵察部隊を出す必要があります。ヘリコプターを飛ばす方法もありますが、やりすぎて撃墜されることも少なくありません。照準線には限度もあり、シナリオごとに視界が最大でどれだけ通るのか、赤外線照準器を装備した部隊の視認可能距離。また、部隊ごとにどの距離まで接近すると敵に発見される可能性が生じるかを定めた数値を持っています。

 間接射撃は現実的に表現されています。榴弾砲は直接目標を視認するのではなく、他の部隊から目標の情報をもらい、計算によって砲撃を行います。そのため、事前に「調整射撃」とよばれる準備射撃を行います。発煙弾などを一発撃ち込んで、着弾地点を視認できる部隊に落下地点を確認してもらい、ずれている場合は修正すべき距離と方位を連絡してもらいます。これを繰り返して十分に落下地点が目標に接近したら、砲兵隊すべての砲に実弾を装填し、「効力射」とよばれる一斉射撃を行います。「TacOps」ではこのプロセスをかなり正確に表現しています。調整射撃の精度は5段階で評価され、回数を重ねると精度があがっていきます。ところが、その砲撃を視認している部隊が壊滅するなどしていなくなると、射撃を観測する者がいなくなるので、精度は徐々に落ち、ずれた場所に落下するようになるのです。下図は155mm榴弾砲と81mm迫撃砲の照準点をマップ上にマークしたところです。マーカーの上の記号は現在の砲撃の状態を示しており、一目で状況が分かるようになっています。


 「TacOps」の参考書としては松村劭元陸将補が書いた「戦術と指揮」がお勧めです。作戦が上手く行かない時、この本に書いてあることを参考にするとよいでしょう。
 

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